いちばんめ、にばんめ、さんばんめ
わたしは、使える順番に彼女たちを分類した。
それはパーソナリティとかわたしの好き嫌いの問題ではない、けっして。そんな嗜好的レベルの話ではなくって、わたしは純粋に単純に、彼女たちを優劣で順番づけしたってだけのこと。まあ――とはいえわたしからすればそんなのはそれこそ、むかしの寓話の言葉を借りれば、どんぐりの背比べ、ってことなんだけど、それでも……そこにわずかでも差があるならば、やっぱり、……やってほしい仕事、っていうのはね、違ってくるのだから。
国立学府の三年生になってから。つまりあのお茶会から、だいたい三ヶ月ほどのあいだ。
わたしは彼女たちのほんとうのところを見極めるために、表面上はずっといっしょに対等みたいな顔をして研究を続けた。そしてその笑顔の裏でもちろん、彼女たちのなしている仕事の有益性や社会貢献性、レベルというものを、推し量り続けていたのだ。
どんぐりの背比べ、とはいえ。
案の定というか、なんというか。そのなかでもっとも優秀性においてマシだったのは、葉隠雪乃だった。
わたしとは比べものにならないとはいえ、正確に、丁寧に仕事をしようとする。たいして特徴的でもないけれど、そつのない仕事をする。確実にこなそうとする。その結果、あんまりデータにぶれがない――わたしを百倍くらい希釈した下位互換ってこんな感じかしら、っていう印象だった。
次点は、ちょっと意外なことに黒鋼里子。
わたし、この子にかんしてはけっきょくのところ自分を特別視しているだけで、出身地である研究所でだって暗記力なんていうほんとうはコンピューターだって軽々こなせる機械的な能力だけで取り立てられていただけなんじゃないか、って思ってたんだけど、意外や意外というのかしらね、黑鋼里子はその突出した暗記力のほかの総合力もたしかにそこそこのところをいっていた。
黑鋼里子にかんしては、高校の教育が功を奏したんだと思う――だって自分でも言っていた、自分は暗記力しかないから、学校の勉強についていくにはほかの力を鍛える必要もあったんだ、って。その成果はたしかに出ているように思えたわ。もちろん、その総合力っていうのは地味よ。おもしろくもない。それ単体では、なんにもできない。でももともと暗記力しかないみたいな機械の下位互換だったのだと考えれば、たしかにそれはある程度の努力の成果として得たものなんだろうなとは、わかったの――まあそれでもこの程度ね、っていうのは、正直なところかわいそうに思えたけれども。
そして、いちばんの役立たずちゃんは、甘ったれの守那美鈴だった。
この子、意外なことにいちばんマシな能力は独創性だったのだけれども。でもそのほかの能力が、国立学府水準で考えてみれば全体的に程度が低すぎて。つまりそんなレベルにおいて独創性なんて発揮されたところで、それはちっちゃな子どもの単なる気まぐれとほとんどおんなじ、どっちかっていうと決定的に逆効果、って言わざるをえなかったのよ。
つまりして彼女の取ってくるデータというのは、もうほんとうに、ほんとうにほんとうに役立たず。
守那美鈴自身とおんなじねって、わたしなんども思った――本人的にはなにかやってやったって思うオリジナリティがそこにあるんだろうけれど、そんなもの以前のお話なのよ、そんなものを混ぜ込む以前に、あなた、やるべきことがあるでしょう――せめてほかの人間がそうできる程度には、おんなじ水準で、データを取ってくるってことよ。
だから、わたしのなかでの立ち位置は。
用意していたポジションというのは、みっつあったのだけれど。
いちばんめのポジションには、葉隠雪乃。にばんめのポジションには、黑鋼里子。さんばんめのポジションには、守那美鈴。――そういうことで、決定した。
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