雨の話

微睡

第1話


「今日も雨かぁ」


ついそうぼやいてしまう。

これで、多分4日連続の雨。


仕事に行かないと行く時間が間もなく来るというのに動く気力が起きない。


これも全部雨のせい。


朝はだるいし、夜は暗くなるし、寒いし。


昔は雨が好きだった。小雨ぐらいなら外に出てぐるぐると回りたくなるぐらい好きだった。


どしゃ降り、まぁ、たまにはいいんじゃないかな、と外を駆けては友達に怒られた日を思い出した。


まぁ、とりとめもない事を考えていると携帯がなる。


あぁ、デッドラインがやってきた。

仕事に行かないと




帰るにも帰れず、残業代が出るわけでもなく遅くまで会社にいたりした。


そんな仕事を終え、雨がぽたぽたと降る中を歩く。


やがて、最寄りの駅に向かう駅に辿り着く。


電車へと乗り込む際に電車と駅の屋根の隙間からの雫が頭に当たり、気持ち悪い。


やがて、最寄りの駅に電車が到着し、駅から出る。


さほど大きい駅ではないが改札前に迎えを待つ人達が集まっている。


ふと、駅の出口の端、濡れない椅子の場所に女性を見かけた。


よく朝の電車で見かける人だな、と思う。


何か疲れたかのように雨雲を見つめている。


ぼーっと、傘を手に持ちながら。


その姿を暫し眺めて、ふと思う。


あぁ、とりあえず帰ろう、と。


雨も少し落ち着き出しており、小雨のようになっている。


傘をさすほどではないが濡れるのも嫌なのでやはりさす。


「めんどうな」


あぁ、面倒な、めんどくさい。


家に帰ることさえめんどうに感じてくる。


やはり、雨の日は憂鬱な気分になる。




やがて、家に向かう道中にあるコンビニに入る。


傘をしまう。


ここでコンビニの傘立てにさしてもいいが盗まれるのもしゃくなので、傘を持って店内へ。


中に入ると店員から嫌そうな目で見られる。


そりゃあ、まぁ濡れた傘で入られるのはやっぱり嫌なもんだろうとは思うが、仕方ない。


入り口近くの本棚を見ていると若い学生らしき集団が入ってくる。


少し目を向けて思うのは実に楽しそうだなぁということだけ、雨であっても友達といるということは楽しいんだろうなぁと勝手ながら思う。


あぁ、高校時代の友達に電話をかけてみようか。


そう思うとふと、人恋しいんだなと思う。


そして、あぁあの女性に声を掛けてみようかなと思う。


お茶とお酒を1本ずつ多めに手に持ちレジへと向かう。


これで、あの女性がいればいいのだけれども、居なかったら居なかったらでその事を電話してみよう、そう思うと少し楽しくなってくる。


あぁ、どういって声をかけよう、そんなことを思いながら店の外に出る。


変わらず、くもり雲のまま雨は止んでいた。


空を見上げてふとこぼす、


「物語だったら、ここは月夜なんだろうな」と


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雨の話 微睡 @dosooh

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る