片輪者一代
滝山一揆
第1話 誕生
昭和45年7月22日、真夏の暑い日に、江東病院の一室で一人の当時としてはややでかい子供が生まれました。体重3800グラムのその男の子は生まれてオギャーとは言いませんでした。何度か看護師が無理矢理ぶっ叩いてそれでようやく呼吸が出来てオギャーと第一声をあげたのです。
無事に子供が泣いてほっとしたのもつかの間、母は愕然としました。
この子供の左手首には真っ黒でまるで通り雨の時の雨雲のような形状をした黒い痣がべったりとついていました。そして肘のあたりに大きな丸いほくろもついていました。
生まれ落ちた子供は男前の父、アイドルのような顔立ちをした母とはまるで違い、まるで猿のようでした。猿ならまだ目がくりっとしているからかわいいですが、この子供は目が細く、非常に人相が悪く、父にも母にも全く似ていません。
江東病院は産婦人科専門の病院ではなく、総合病院です。
たまたまそこに産婦人科があり、そして家から近所だったから、陣痛が始まって、苦しみだした母を慌てて父が下の階の同年代のご夫婦に頼み車を貸してもらって連れて行ったのです。
入院して直ぐに出産し、同じ日に大体同じ時間に10人が産まれています。
取り違えがあってもおかしくないでしょう。
実際に取り違えが後でわかってという事件もあったようです。
まあ、私の場合は左手首の痣という強烈なマークがついていますから、看護師が間違えた名札をつけない限り、間違える要素はありません。
実はこの左手首の痣、これこそが母の子である事の証明なのです。
それは母の父方の末妹の左手首に真四角の黒い痣がついていたのです。
これでもう完全に私は両親の子である事が証明されたようなものでした。
ところが生まれ落ちた子供の私は両親のようによく出来るいい子で育ったわけではなく、あんたなんかうまなきゃよかったと流石に両親も言いたくてもいわなかったですが、それくらいに最悪な少年時代を過ごしていくごく潰し野郎に育ってしまったのです。
どうして私が犬畜生にも劣る下種野郎な人間になったかというのは、これからおいおいに説明していきます。
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