61~見送る者たち~・おまけスキット

~ブオルが見た未来~


ブオル「いやほんと、いいものを見せてもらったなあ」

クローテ「未来、ですか?」

ブオル「ああ。子孫の様子とか平和な光景とかいろいろあるけど……モラセス様とスタードな」

クローテ「モラセス様とスタードお祖父様?」

ブオル「あのふたり、スタードが主従の一線を引いててちょっとぎこちないところがあったんだよ。それが今じゃ、ああだもん」

クローテ「壁も何も感じられませんね」

ブオル「モラセス様はスタードのこと、弟みたいに思ってたから……今のふたりは本当に仲の良い兄弟みたいで、モラセス様も嬉しいだろうなって」

クローテ「兄弟……」

ブオル「ただ、あそこまで遠慮がなくなってるとは思わなかったけど……何があったんだ、あいつら」

クローテ「ふふ、そうですね」

ブオル「……おじさんちょっと泣きそう」

クローテ「ハンカチならありますよ」

ブオル「大丈夫、自分のがある……ぐすっ」



~精霊の住処~


パンキッド「しっかし、王都の城の真下が精霊王サマの住処ねえ」

トランシュ「大精霊のいる場所と聞くと、氷の大精霊のアラザン霊峰や火のケットル火山みたいな極端な環境を思い浮かべがちだよね」

アングレーズ「あとはパスティヤージュみたいに祀られているところもあるわ」

万物の王『調和を司る無属性にして精霊を束ねるこの俺には世界の中心であるここがまさしくそうなのだ』

モカ「だからって、こんな地下深くにしなくても……」

万物の王『極寒の雪山や火山よりマシだろう』

ランシッド『それにしてもここは変わらないね。ちょっと道が整備されてるくらいかな?』

モカ「えっ、これで!?」

ランシッド『だいぶマシだよ。俺何回か転んだもん』

万物の王『そうそう。それでダクワーズの手を煩わせて最終的には抱き上げた方が早いと……』

ランシッド『わーっ待って待って待って!』

メリーゼ「お父様がお母様に抱き上げられた……?」

ブオル「想い出の……場所なんですね……」

ランシッド『なまあったかい目やめて!』



~特別製の結界~


アングレーズ「英雄王と精霊王、ふたりの王様が張る結界……なんだかすごいわねぇ」

万物の王『ふふん、ありがたかろう!』

トランシュ「それだけじゃないよ。結界の魔術道具は世界的な名工であるガトーさんが作ったんだから」

パンキッド「ガトー、ってカカオの……」

メリーゼ「ええ。おじいさまですね」

カカオ「じいちゃん、いつの間にこんな……」

ランシッド『前々から頼んでいたんだよ。いつかテラの本拠地に乗り込むなら、安全の確保は必要だからね』

トランシュ「このゲートはテラの本拠地への入口でもあるけど、君たちが元の世界に帰るための出口でもある。君のおじいさまの作ったものが、君たちの帰る道を守るんだよ、カカオ」

カカオ「じいちゃんが、オレたちの道を……」

ランシッド『なにせ世界最高の職人だからね。頼むなら彼しかいないと思ったのさ』

ガレ「やっぱりすごいでござるな、カカオどののおじいさまは!」

カカオ「へ、へへっ」



~トレーニングに最適?~


モカ「長い長い螺旋階段……なんでこんなにあるのー!?」

アングレーズ「確かにちょっと疲れちゃったわねぇ。ゴーレムに運んでもらおうにも狭いし」

クローテ「階段が崩壊しかねないからやめてくれないか」

パンキッド「これ毎日昇り降りしたら結構体力つきそうだね」

シーフォン「入るのに王家の鍵が必要なのがネックだけど、そこは僕がいるから」

パンキッド「ああそっか、王子サマだもんね」

モカ「なんで楽しそうかもみたいな顔してんの、パン姐?」

ランシッド『シーフォンも脳筋寄りの子孫か……』

トランシュ「ふむふむ、なるほど」

シーフォン「あっでもメリーゼならいつでも入れるよう手配しておくよ!」

メリーゼ「むむ、基礎体力も重要ですね……」

カカオ「そんなホイホイ王家の秘密の場所を開けんなよ」

シーフォン「じゃあメリーゼには君がいいトレーニングの場所を紹介するんだね」

カカオ「お、おう? じゃあアトミゼ山脈の山道とかどうだ? 足腰鍛えられそうじゃねーか?」

メリーゼ「あっ、素敵ですね!」

モカ「なんなのこのどこもかしこも脳筋な会話は!」

ガレ「しあわせそうで何よりでござるなあ」



~見送る者たち:モラセス~


モラセス「……行ってしまったな」

スタード「フレスも騎士団の任務に戻りました。我々は見送るおじいちゃんですね」

モラセス「老け込むのはまだ早いだろう。生涯現役のつもりだぞ、俺は」

スタード「貴方が言うと本気に聞こえますね」

モラセス「半分、な」

スタード「半分でも多いですよ。今おいくつだと思っておいでですか?」

モラセス「俺はこの世界を好き勝手荒らす奴をこの手でぶん殴りたかった」

スタード「でしょうね。ですが、それは彼らがやってくれますよ」

モラセス「理解はしている」

スタード「なら、おとなしく待ちましょう? 今の我々にできるのは、若者たちの帰る場所になることです」

モラセス「むう」

スタード「膨れない!」

モラセス「わかったわかった」



~見送る者たち:デュー~


デュー「見送る側ってのは、どうも落ち着かねーな」

水辺の乙女『二十年前とは逆ですからね』

デュー「あちこち指示出してやりとりして人員回して……まさかオレがそんな事するなんてなー」

水辺の乙女『あら、そうですか?』

デュー「今でもやっぱ、直接殴り込む方が性に合ってるよ」

水辺の乙女『まあまあ、そこは若者に譲りましょう』

デュー「……そうだな。ここまで来たら、この物語はあいつらの手で……な」

水辺の乙女『記録には残らない物語の主役たち……』

デュー「願わくばその締めくくりには、ハッピーエンドの文字を……なんてな?」

水辺の乙女『願うより掴み取るもの、でしょう?』

デュー「はは、違いねぇな」

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