52~想い、背負って~・おまけスキット

~一丁あがり!~


モカ「やったあ! 一丁あがりー!」

ミレニア「ふむ、さすがに灰も残っとらんのう」

豪腕の焔『当たり前だ! この俺様の炎で焼き尽くしたんだからなぁ!』

モカ「火に火の魔術を重ねた複合術だから、火力も純粋に倍増だね」

ミレニア「ふむ。複合術というと術者同士が互いにない属性を補い合う術もあるが、わしはこういうシンプルにつよーいのがわかりやすくて好きじゃな!」

豪腕の焔『さすが俺様が見込んだ契約者……いや、相棒だぜ』

モカ「大精霊にここまで言わせるんだから、ママってすごいよねえ」

豪腕の焔『ミレニアもミレニアの仲間達も、な。精霊はみんな、感情の向け方は違うがあいつらを慕ってる』

モカ「焔っちの場合は?」

豪腕の焔『意気投合、だな!』

ミレニア「焔はともだち、ダチトモじゃ!」

モカ「なるほど、似た者仲間かぁ……」



~パンキッドの特技~


シーフォン「人気のない開けた場所に案内しろ、なんて言うから何かと思ったら……確実に誘き寄せる算段があったんだね」

パンキッド「普通の魔物以外に通用するかは、ちょっと賭けだったけどね」

シーフォン「なに、通用しなければ別の手を考えるだけさ」

パンキッド「……シーフォン」

シーフォン「なんだい?」

パンキッド「その……驚かせちまったというか、なんつーか……」

シーフォン「ああ、ちょっと驚いたかな。凄く大きな声が出るんだね」

パンキッド「えっ、そこ?」

シーフォン「僕と君の両親は友人同士だと知っているだろう? 君の父上の特技なら聞いていたよ」

パンキッド「あっ、そっか」

シーフォン「身構えるなんて、君らしくもない。町を守った戦士は堂々としていたまえ」

パンキッド「シーフォン……ありがとな」

シーフォン「こちらこそだ」



~城下町の王子様~


パンキッド「迷いなくするすると進んでいって……本当に城下町の地理を知り尽くしてるんだね」

シーフォン「ああそうさ。城の者に見つからないように目的地に行くにはどんな細道や裏道も把握しておく必要があった」

パンキッド「だいぶ褒められた動機じゃないけど……ちなみに、目的地って?」

シーフォン「その時々でさまざまさ。例えば幼少の頃はこの空き地だったり、美味しいカフェがオープンしたと聞けば並びに行ったり……普通に城下町をぐるりと散歩したいだけの時もあった。城内は僕には窮屈だからね」

パンキッド「ふーん」

シーフォン「モラセスひいおじいさまともよく遊びに行くよ。ひいおじいさまは城の抜け道をいくつも知っていてね」

パンキッド「ぬ、抜け道って……確か先代の王様だよね、その人?」

シーフォン「まあ父上もたまに抜け出すしね。城下町の女性の黄色い声援を浴びながらカフェで一服したり」

パンキッド「アンタの家系どうなってんの!?」



~ストレートに弱い?~


シーフォン「ふーむ……」

パンキッド「な、なんだい、じろじろ見て」

シーフォン「いや、君の恥じらう顔というのがどうにも新鮮でね。闘技場の覇者というから、賞賛の言葉は聞き慣れてるものだとばかり」

パンキッド「…………だよ」

シーフォン「ん?」

パンキッド「アンタは真っ直ぐ見過ぎ! じっとこっち見てきて、恥ずかしいったらないよ!」

シーフォン「相手の目を見るのは基本だろう?」

パンキッド「闘技場じゃ面と向かってじゃなくて頭上の観客席からバラバラ声が降ってくるもんだし、なんつーか……そういうの、慣れてないっつーか……」

シーフォン「へぇ」

パンキッド「な、なに」

シーフォン「良い事を聞いたな、と」

パンキッド「……変なことしたら張っ倒すよ」

シーフォン「しないよ。ただ、覚えておくだけさ」

パンキッド「わっ、忘れろー!」

シーフォン「ははは、それは無理な話だね!」



~少女の大切なもの~


ガレ「ふう」

アングレーズ「ガレ君、お疲れ様。だいたい片付いたようね」

ガレ「あっ、アングレーズどの。あの少女は……」

アングレーズ「ちゃんと家族のもとへ戻れたわ。それでガレ君、彼女のお人形は見つけられた?」

ガレ「にゃはは……そういえば特徴を聞きそびれたな、と思ったところでござる」

アングレーズ「そんなことだろうと思ったわ。頭の後ろに大きな赤いリボンをつけた、女の子のお人形よ」

ガレ「おお、かたじけない!」

アングレーズ「ちゃんと見つけて、帰してあげたいわね」

ガレ「家族に貰った大切なもの……きっと、思い出がたくさん詰まっているのでござろう」

アングレーズ「ひとりぼっちでどこかに忘れられたまま、なんて寂しいものね」

ガレ「必ず見つけるでござるよ」

アングレーズ「ええ」



~託し、託され~


アングレーズ「みんな、大丈夫かしらね……」

ガレ「今回はそれぞれの役割があって別れたのでござろう? 信じるしかないでござるよ」

アングレーズ「それぞれの役割、ね……広範囲の術が得意なモカちゃん、あたしはゴーレムで住民を守るのが役目でガレ君は索敵や周囲の状況把握能力……」

ガレ「王都の地理に明るいシーフォンどのに……パンキッドどのがついて行ったのは何やら考えがあってのことでござろう。先程遠くでパンキッドどのの声が聴こえ、魔物の気配が一斉に動き申した」

アングレーズ「あら、そうなの?」

ガレ「まあ、大丈夫でござろう。王都の空気も、来た時よりピリピリしておらぬゆえ」

アングレーズ「……問題は、おじさま達の方ね」

ガレ「カカオどの、メリーゼどの、クローテどの……それに、ブオルどの」

アングレーズ「きっと大丈夫……と、信じたいわ」

ガレ「信じて、それがし達も役割を果たすでござる」

アングレーズ「そうね……今は王都を守ることに集中しましょう」

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