36~王都の再会~・1
王都に聳える白き山、マーブラム城に久々の帰還を果たしたカカオ達は、そこで思わぬ人物の出迎えを受けた。
「よう、カカオ」
「なっ……ガトーじいちゃん!?」
フォンダンシティの工房にいるはずのカカオの祖父、名工ガトーが驚く孫の肩を叩く。
「オグマにグラッセも揃ってるな。元気そうじゃねえか」
「ガ、ガトー殿、どうして王都に?」
おずおずと尋ねるオグマはガトーにとっては息子も同然に可愛がっている存在だ。
そんなオグマに、父は白い歯を見せ、
「おう、ちょうどいい所にちょうどいい奴が訪ねて来たから王都までの護衛を頼んだ!」
鮮やかな翠の三白眼を細め、ニカッと笑った。
「いらないって言ってるのに、しっかりがっつり依頼料渡されて……俺、もう今月働かなくて良くなっちゃいましたよ」
ガトーの後ろから現れた男が、頭を掻きながら苦笑いをする。
心なしかパサついた短いホーリーグリーンの髪。四十代に入ったあたりの年頃で顎髭を生やし、ややつり上がったクロムイエローの目元には皺が刻まれているが表情からは柔和な雰囲気が見てとれる男。
ここに多くいる騎士団の人間のようなかっちりした服装ではなく軽装にところどころ汚れや破れが目立つ外套を羽織っており、傭兵か旅人なのだろうと思われる。
「リュナンおじさん!」
「やあ、元気そうだねカカオ青年。また背ぇのびた?」
リュナンと呼ばれた男はにこやかに笑いかけると、カカオの髪をわしゃわしゃと掻き回す。
グラッセがぽつりと「なんでリュナンはおじさんで俺はおっさんなんだ……」などと呟くが、まあそれはさておき。
「精霊サマ、このおっさん誰?」
『彼はリュナン・ヘイゼル。オグマ達と同じく英雄のひとりさ』
メリーゼの肩でぴょこぴょこ跳ねる毛玉に尋ねれば、返ってきたのはそんな答えで。
「うっそ、あれで!?」
驚くパンキッドに、リュナンはわざとらしく咳払いを聞かせた。
「えー、おほん。お嬢ちゃん、あれでとは何だい?」
「英雄と言われても納得できないからだろう。まずオーラがない。強いて言うなら溢れる一般人オーラが」
「グラッセには聞いてませんー! なんですか一般人オーラって!」
まるで子供のようなやりとりを繰り広げるおじさん二人だったが、オグマに妙に穏やかな声音でそれぞれの名を呼ばれればぎくりとしてそれは止まった。
「なんだこのおっさん達……」
「仲良しさんだなあ」
ブオルがそう呟くと「仲良しじゃない!」という声が同時に返ってきた。
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