35~羽を休めて~・おまけスキット

~ブオルの時間旅行~


ランシッド『俺の知らないところでまたブオルがひとりで時空転移を……』

ブオル「今回は迷いこんだっていうか、誰かに引きずりこまれたみたいな感じでしたけどね」

ランシッド『誰かって、誰に?』

ブオル「えーと……誰でしょう?」

オグマ「……」

ランシッド『まあいいや。今回は体に異常はない?』

ブオル「ええ、前回みたいな弱体化はしていませんよ。体が慣れたんですかね?」

ランシッド『慣れるほどホイホイどっかに飛んじゃ困るんだけどね』

ブオル「あはは、それもそっすね」

ランシッド『まったく、呑気なんだから……』



~急がば休め?~


ブオル「世界の存亡がかかった旅だから気を抜くな……グラッセの言い分にも、もちろん一理あるんだがな」

オグマ「張り詰めてばかりでは、いつか切れてしまいます。逆ももちろんいけませんが」

ブオル「適度に、緩急が大事ってことだな。お前さんの時もそうだったんだろう?」

オグマ「ええ。旅の最中に楽しそうなものを見つけてはよく手を引かれました」

ブオル「ははは。引率の先生も大変だな」

オグマ「温泉に入ったり、遊戯場へ行ったり、謎の島を見つけては好奇心で入ったり料理大会に出たり舞台で急遽芝居をやる羽目になったり闘技場で……」

ブオル「ま、待て、なんか思った以上にエンジョイしてないか?」

オグマ「……なんてこともあったかもしれませんね」

ブオル「なんだろう、冗談に聞こえないぞ……」

オグマ「本当に賑やかで、楽しくて……忘れられない旅でした」

ブオル「そっか」



~いざ、王都へ!~


ガレ「ついに王都でござるか!」

カカオ「ついにって、ああそうか。ガレ達が加わってからは戻ってなかったな」

アングレーズ「子供の頃に連れられて来た以来だったかしら。楽しみだわ」

モカ「王都ってなんか物珍しいようなもんあったっけ?」

メリーゼ「大きなお城に騎士団寮、城下町には美味しいスイーツのお店もありますよ」

グラッセ「あとたまに出没する妖怪みたいな爺さんも名物か?」

カカオ「モラセスじいちゃんに言いつけるぞ、グラッセのおっさん」

グラッセ「俺は一言も誰のこととは言っていないぞ?」

カカオ「……あっ、ずりぃ!」

グラッセ「ふふん」

オグマ「やめなさい、グラッセ」

ガレ「何にせよ、わくわくするでござるな」

アングレーズ「うふふ、そうねぇ」



~おるすばんお邪魔虫~


ランシッド『……』

ブオル「おや、ランシッド様?」

ランシッド『ちょっと目を離した隙にメリーゼがカカオの奴と買い出しに行っちゃったんだけど』

オグマ「ああ、そういえばさっき……」

ブオル「チビすけが今回の買い出し当番は二人だよって背中押してさっさと行かせてたなあ」

ランシッド『くそっ、やられた……!』

オグマ「やられた?」

ブオル「二人のことをやたらとくっつけたがるんだよな、チビすけは」

ランシッド『俺は認めてないからね!』

オグマ「ああ、それでそういうことに」

ランシッド『たかが買い出しと侮ったら危険だよ! 賑やかな商店を外れた薄暗い路地裏になんか入ったら、雰囲気に流されて壁ドーンしたり、あんなことやこんなこと……!』

オグマ「カカオが、メリーゼと?」

ブオル「……ないな」

オグマ「ですね」

ランシッド『…………ごめん、自分で言っておいてなんだけど、さすがにないねこれ』



~お買い物デート?~


カカオ「港町で買い物すんのも楽しいな」

メリーゼ「そうですね。グランマニエにはない、いろいろな品物が並んでいます」

カカオ「アクセサリーとかも、ちょっと雰囲気違うよなあ。ああいう装飾がこの辺の主流なのか……」

メリーゼ「勉強熱心ですね、カカオ君」

カカオ「そりゃあ、今は旅して戦ってるけどいつかは職人の修行に戻るからな。よくよく考えたら世界中回るなんてなかなかない機会だし」

メリーゼ「職人のことで頭がいっぱい、と」

カカオ「お前だって闘技場では同じようなもんだったろ」

メリーゼ「うふふ、そうでしたね」



モカ「……色気のない会話だなあ。雰囲気は悪くないのにさ」

アングレーズ「モカちゃん、それはなあに?」

モカ「最近作った集音装置“ヌスミギくん”だよ」

パンキッド「ヌスミギくん……」

アングレーズ「盗み聞く、ね」

パンキッド「それでこれだけ離れてもあいつらの会話が聴こえてるのか……すごいけど、趣味が悪いねぇ」

モカ「しゃらーっぷ! にしても、そこそこいい雰囲気なんだからそこいらの路地裏に連れ込んで壁ドーンしてあれやこれやとかあればいいのに、カカオ兄ってば……」

パンキッド「ならないならない。カカオもメリーゼもそういうヤツじゃないよ」

アングレーズ「あら、短い間にパンちゃんもすっかり理解しちゃって」

パンキッド「わかりやすいよね、あのふたり」

モカ「ぐぬぬ、それでもボクは可能性を諦めないよ!」

アングレーズ「進展しないのもそれはそれで微笑ましいから、あたしは楽しく見守ってるわ♪」

パンキッド「あんたら、暇だねえ……」



~謎の仮面闘士~


ガレ「サラマンドルに現れた謎の仮面闘士……」

クローテ「妙に心当たりがあるんだが、ま、まさかな……」

ガレ「気になるでござるか?」

クローテ「……いや、かまっている暇がない。できれば関わりたくないな」

ガレ「そういえば闘技場には二十年前にもグランマニエを名乗る仮面の男が現れたらしいでござるな。何か関係があるのでござろうか?」

クローテ「ああ……ありまくりだろうな」

ガレ「マスク・ド・グランマニエにその二世……ふーむ」

クローテ「それぞれの正体が私の知る人物なら、正確には“二世”ではないと思うんだが……」

ガレ「こ、細かいでござるな」

クローテ「気になるんだ、そういうところが」

ガレ「うーむ、クローテどのもなかなかに難儀でござるなあ」

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