21~狙われたのは~・4

 再び戻って、時空転移から帰ってきたカカオ達はカレンズ村の復活を確かめるとクローテとガレを待たせているオアシスへと向かい出発した。


『結局、情報は聞き出せなかった……いや、たぶん聞き出そうとすること自体が無駄なんだろうな』

「薄々思ってたけど、あいつらって攻撃力は高いし素早いけどちょっと打たれ弱いよな。なんていうか……そう、」


 使い捨ての駒。


 そんな呼び名に行き着いてしまったカカオは嫌悪に顔をしかめた。

 同情するつもりはないが、だからってそのやり方を受け入れられるものでもない。


「その能力で目的を果たせればそれでよし、失敗するならそのまま消えて手懸かりを残させない……ホントに送り出してそれでおしまいなんだね」

「愛がないのねぇ。言葉まで話せて意思もあるじゃない」


 モカの言葉に、アングレーズは地面から先程のちびゴーレムを一体作り出して両手で掬い上げると、小さな頭に軽く口づけをして再び土に帰す。


「カカオ君もアングレーズさんも、愛情たっぷりですもんね」

「あ? ああ、そっか。ぬいぐるみとかなら作るもんな、オレも」


 メリーゼはカカオに「ぬいぐるみだけじゃない」と続けた。


「アクセサリーも、お料理も、何だって……カカオ君の作るものには愛情がいっぱいこもってるの、伝わってくる。だから好き」

「そっ、か……ありがとな」


 含みのない、素直な笑顔を向けられれば、カカオは照れ臭さに視線を踊らせ、指先で頬を掻く。

 そんな二人を「青春だなあ」と見守るブオルと『なにデレデレしてんのさ』と歯ぎしりするランシッド。


「あ、もうすぐ着くよ」

「おっと、二人とも待ってるだろうな」


 モカが指し示した先に見える緑は、砂漠の休憩ポイント。

 オアシスを視界に認めた旅人は誰もが安堵に表情をやわらげるのだが……


――ドォォンッ!――


 直後にあがった爆発と煙に、一行は何が起きたか理解できず硬直した。

 結界で魔物が寄って来ないあの場所で、戦闘行為など……まして、今あそこには仲間達がいる。


「なん、で……」

「クロ兄、ガレっちも、あそこにいるんだよね……?」


 そう、とっくにオアシスに着いて、カカオ達を待っているはずなのだ。

 そんなオアシスで起きている異常事態に、モカの声が震える。


『空間の歪み……なんだ、一体何が……』

「二人があぶねえ、急ぐぞ!」

「はい!」


 弾かれるように駆け出したカカオとメリーゼ、それに他の仲間達も続く。


(あの時よぎった胸騒ぎは、気のせいなんかじゃなかった……!?)


 アングレーズの胸をざわつかせる不安は、今度ははっきりとしたものになっていた。


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