第3話 ナンパと女子社員
「業績悪化、売り上げ減少、資金繰り失敗、プロジェクト失敗、その責任をとり、私は社長を辞任しました」
やはり倒産か……しかし社長辞任ってどういうことだろう?
「今猿コンサルティングにうちは買収されました。
しかし友好的買収であり、我社を立て直すと言い、資金援助していただきました。大株主の今猿社長の息子さんが明日から社長です。
何名か経営陣に今猿コンサルティングから派遣されます。
我社が倒産すると噂がありましたが倒産いたしません。新しく生まれ変わるのです」
倒産しない……?
権蔵が言った通りになった?
特殊な力は本物?
マジか……?
「約束通り
権蔵が得意げに言った。
「男に二言はない。」
僕はもうあとには引けなかった。
僕は昼休みにスマホでいろいろ検索してみた。
合コン、友達の紹介、ナンパ、
他の出会い方は、SNS、職場、学校……。
僕は会社帰りに大通りに来ていた。
ここは一番人が集まる場所だから権蔵も何か思い出すだろう。
そして僕は生まれて初めて
「権蔵、何か思い出したか?」
ヒソヒソと権蔵に話しかける。
「うーむ。何も思い出せんな……あそこの角にいるおなごはわしのタイプじゃな♡」
今風のミニスカートのお洒落なお姉さん系の女性を見ながら権蔵が言う。
本当に初恋の人を探してるのか?
おしゃれで、すごい美人だ。
タイプなら権蔵の初恋の人の生まれ変わりかもしれないし…♡
とりあえず、声をかけてみよう!
「あ、あ、あの、あの、おひとりですか? 」
僕はたどたどしく言ってしまった。
「たどたどしいし、めっちゃ噛んでるし不審者みたいだぞ!」
権蔵が怒って言う。
今、僕は自己嫌悪に陥ってて、気にしてるんだから言うなよ!
「友達を待ってるんです。その間暇だからよかったらお茶でもどうですか? 」
お洒落で美人な女性が可愛い笑顔で言った。
「ウソだろ?! 」
権蔵が呆然としてる。
よっしゃあー!向こうからお茶に誘ってくれた♡
僕は舞い上がっていた。
「ぜひお茶しましょう! 」
僕は
「うーむ。順調過ぎないか?それにこのおなごは生まれ変わりではないと思うが……」
権蔵は
「上手くいく時は上手くいくんだって。話してみたら生まれ変わりかもしれないだろ」
僕は完全に浮かれてた。
そこの喫茶店に入り、窓側の席に座り、ナンパしたお洒落で美人な女性とお茶をした。そしてたわいない世間話をした。このお洒落で美人な女性は
突然中井さんが、窓に向けて手を振った。
「あっ友達が来たわ」
そこに来た友達は強そうな
そしてナンパした女性はたくさんの
「この壷100万円するんだけど今なら半額の50万円で買わない? 」
セールスかい!僕はがっくり落ち込んだ。
「生まれ変わりではないぞ。だからやめておけって言ったのに」
権蔵が僕に追い打ちをかける。
やっぱりそんなおいしい話はないよな……
隣の厳つい男性がめっちゃ
1時間の問答の末、僕はどうみても100円ぐらいの壷を50万円で買わされそうになった。
「助けて~権蔵」
僕は半泣きで権蔵に助けを求めた。
「仕方ないのう。ふんぬ! 」
権蔵が店の照明を見つめ、なにか唱えると照明の電球が割れた。そして店内は真っ暗になった。
「今じゃ!逃げるぞ!」
権蔵がそう言うと僕はお茶代を置いて、スマホの画面の電気を見ながら、店内から逃げた。
~翌日~
「よし、会社の女の子から調べてみよう」
僕はヘラヘラとそう言った。
「昨日のことは忘れたのか?どうやって調べるのだ」
権蔵がそう言うと僕は深々とお辞儀して言う。
「その説はありがとうございます」
そして、僕は得意げに返答した。
「12年間の会社生活で未婚の女子社員は把握している。受付の桜井さん20歳、松本さん23歳、経理の山岡さん36歳、田中さん40歳、営業の藤森さん37歳バツイチ、秘書の桃井さん27歳、ウチの課の桐谷さん30歳と梅田さん28歳だ」
権蔵が驚いている。僕の情報が完璧すぎたかな。
「よく女性と会話せずにそこまで情報集めたのう」
権蔵は呆れ気味に言う。驚く所はそこかい!!
「桐谷さんと梅田さんから聞いたんだ」
僕はボソッと呟く。
「ならば桐谷と梅田やらに話を聞いてみよう」
権蔵がまたニヤリと言った。
「今ちょうど給湯室にいると思うから行ってみよう」
桐谷さんと梅田さんとは、ろくに話したことないけど大丈夫かな?
給湯室に行くと桐谷さんと梅田さんは、楽しそうに話をしていた。
桐谷さんがバックを見せながら自慢する。
「誕生日にブランドのバック、彼氏に貰ったの~♡」
梅田さんがテンションをあげて話す。
「すごーい。そういえば受付の桜井さん俳優と付き合ってるだって!」
桐谷さんがさらにテンションを上げる。
「マジで?テレビ出てる人? 」
梅田さんは溜息をつきながら話す。
「ドラマに出てたんだって。この会社で彼氏なしは田中さんと私だけかあ」
桐谷さんが廊下を見ながら話す。
「今度の社長は若くて独身らしいよ。しかもイケメン♡きゃあー今廊下通るわよ」
廊下を前社長と役員そして知らない人達(たぶん今猿コンサルティングから派遣された人達)に囲まれながら、社長らしき人が真ん中にいた。
社長らしき人は茶髪で顔が整っている。
たくさんの人に囲まれているのに顔が分かるぐらい背が高い。おそらく180センチはあるだろう。
俗に言うイケメンだ!しかも年は僕より若いかもしれない。ふと社長らしき人はこちらを見て微笑んだ。なぜか僕までドキリとした。
「今社長と目があったわ~!私のこと絶対見たよね?きゃああ。本当にイケメンね♡頑張る!」
なぜか梅田さんが張り切る。
僕も目が合った気がしたけど……
「全然桐谷さんと梅田さんに話しかけれない……」
僕は給湯室の壁に隠れていた。今度の社長はちらっと見えたが……
「あの2人は、生まれ変わりっぽいか?」
ヒソヒソと桐谷さん達に聞こえないように僕は権蔵に話しかける。
「話しかけてないやないか!でも一つ感じたことがある。
権蔵は呆れながら言った。
ということは田中さん40歳か梅田さん28歳のどちらかの可能性しかない……
結局誰にも話しかけれないままお昼休みになった…僕は食堂の端の席に座った。
「おぬしは、ほんにヘタレやな!こんなんでわしの初恋の人を見つけられるんか?」
権蔵が怒っているようだ。
「うぅ。めんぼくない……」
そう言って会社の食堂で持ってきたお弁当の包みと蓋を開ける。
「ふんぬ!」
権蔵が弁当を睨みつけ何か念じると、お弁当が床にひっくり返った。
「あー! 何するんだよ! 」
僕は思わず、大声で叫んでしまった。
食堂にいる人が一斉にこちらを見た。
「すみません……大丈夫です……」
僕は愛想笑いをしながら周りの人に会釈する。
そして、ポケットに入れていたお守りを握りしめ権蔵への怒りをぶつけた。
「ぎゃああああああああ!!いきなりひどいじゃないか!」
権蔵は半泣きになっている。
「それはこっちのセリフだよ。しかも僕まで頭が痛いし」
僕も頭がズキズキと痛い。しかし、食べ物の恨みは晴らしたかった。
「わしが住んでいた寺子屋はお弁当を落としたやつはおなごからオカズを分けてもらっていたぞ。田中と梅田にもらってこい! 」
権蔵は無茶振りをしてきた。学校と会社は違うんだよ!
「わしも弁当食ってみたい」
権蔵が意味不明のことを言ってきた。
「どうやって、食うんだよ? 」
僕が
お守りを指さすなんてバチが当たるぞ。
「そのお守りを弁当の前に置いてくれればいいのじゃ」
置くだけで食べれる便利なお守りだな。
とりあえず、落としたお弁当を片付けようとしたら、ちょうど田中さんと男性社員が手伝ってくれた。
「チャンスじゃ」
権蔵がコソッと言う。
僕はなんて言おう?
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