52話 師匠の強さ
「へ……?」
間抜けた声が魔王の口から出る。何が起きたのか速すぎて目で追えなかったが、分かったことは一瞬にして魔王の両腕を綺麗に切断したことだ。
「ガァァアア!!」
「いくら魔王でも腕切り落とされるのは痛いだろうな」
「再生するけど……な!!」
ブチュブチュと嫌な音を立てながら、腕が一気に再生する。
「そんなことは言われなくても分かっている」
すると、次に魔王の胴体に一閃を喰らわせる。が、それを魔力が込められた前腕で喰い止める。
「そうこなくてはな」
「貴様、誰だか知らんが随分上から目線だな。我は魔王だぞ?」
「だから何だ?闘う者同士に上も下もありはしない」
「生意気な…… !」
それからは目で追えないぐらいの凄まじい闘いが続く。剣と腕が交わる音、壁や地面を蹴る音が響く。
「す、すげぇ…… !」
「呆けてるな、……ちょっと慣れてきたから私の過去を明かすとするか」
「師匠の過去……」
師匠は闘いながらも自分の過去を明かしていく。
「私がまだ7歳の時、この世界に来て修行をしていた」
「この世界に?」
「あぁ、そして山奥の家で修行をしている時に迷ったのか、武者修行なのか知らんが出会ったのがリンだ」
「! ……だから、リンと友達だった……」
「まぁな、そこでリンを招き入れて一緒に修行をしていたんだ。リンと私の力は互角。それ故にお互いを高め合いながら身になる修行ができた」
「…………」
「そして、私が元の世界に戻る時に私達は誓いを立てた。私は「誰よりも強くなる」、と。けどリンは「誰かを守るために力をつける」と誓いを立てた。
「……リン」
「その時私は気づかされた。明らかに私の方が運動神経が良いはずなのに、どうして競い合うことができたのか。「誰かを守る」という気持ちが私の気持ちより強かったからだと、リンに出会って友達になって気づいた」
師匠は目で追えないようなスピードで動きながらも、淡々と自分の過去を語っていた。
「くそが……!」
「……」
「ガァア!」
魔王は喋りながら闘いをしている師匠が挑発しているかのように感じ、がむしゃらに食らいつくが剣の間合いに入るとすぐに手首や足を切り落とされる。
「ハァハァハァ……」
「さすがに、何度も再生したら体力は奪われるよな……」
「ハァハァ……死ねぇ!!」
魔王は素早く指先を師匠に向け、シャープレイを連続で撃ち放つ。しかし、師匠はその全てのレーザーを刀で弾く、弾く、弾く。
「何故当たらんのだぁあ!!」
全て攻撃が弾かれた魔王は成す術無しになったのか、シャープレイを高密度かつ巨大に生成する。
「喰らえぇ!!」
「はぁ……技が通用しないと思ったらすぐ巨大にする……悪魔と一緒の考えでつまらないな」
高密度かつ巨大なレーザーが今までのとは比にならないスピードで撃ち放たれる。
しかし、そんな技であろうと師匠は顔色1つ変えず、マナを流し込んだ刀でレーザーの芯をとらえ、そのまま地面と平行に素早く突き刺す。
すると、レーザーは半分に分かれ、それぞれ壁をも貫通し飛弾する。魔王は師匠が突き刺した刀から勢いよく飛び出したマナを喰らい、右腕が消滅していた。
やはり師匠の力は異常だという事に改めて気づいた。
「さすがに、もう再生する力は残ってないだろう」
「ぐっ……。き、貴様、一体……」
「そういえば言っていなかったな。私は異世界から来た忍者だ。そして、お前の師匠の孫だ」
「飛龍の……孫だと」
魔王は右肩を抑えながら呆然としていた。闘っていた相手が実は自分の師匠の孫だと聞かされたら呆然とするのも無理もない。
「おい、浩介」
「は、はい」
「まだ覚醒状態か?」
「い、一応」
まだ俺の額には角が生えていた。俺はまだリンが死んだという事に納得がいっていないのだろう。
「よし、そのままで良い。今からあいつを
「しょ、消滅?!」
「あぁ、お前この前の悪魔戦の時、拳にマナを集中させてただろ?あれを悪魔にぶつけてやるだけで良い、私はあいつの足止めをする」
「で、でも師匠がやれば……」
「これは覚醒状態の奴じゃないとできない技だ」
「?!、でも悪魔を倒すと自然に消滅するじゃん!」
「あれは悪魔だからだ。でもあいつは違う世界の生物だ。私達のマナなどはただの力にしかならない」
「……」
「やってくれるか?」
「……任せとけ!」
「よく言った!」
正直、怖い。かなり怖い!でも、俺がやらなかったら誰がやる!リンの分も一緒に喰らわせてやる!
「黙って聞いていれば俺を消滅だと?!図に乗るな!黒魔法、ヘルフレイム!」
魔王は左の手のひらから黒い炎を師匠に向けて放つ。
「死に損ないには、これで十分だ」
師匠は刀を納め、手をチョップ型にし、炎が来た瞬間に素早く振り下ろし、炎を断ち切った。
「ライデンフロスト。所詮炎だ。湿らせた手で搔き消える」
「んな、馬鹿な……!」
師匠はヘルフレイムが放出された瞬間に、マナの属性変化で手を湿らせ、断ち切った。
テレビで似たようなことをやってる人はいたが、その人はほんの一瞬しかやっていなかった。が、師匠の場合、明らかに炎の放出量が違いすぎる。
うん、これからは師匠には逆らわないようにとしようと思った。
師匠は鞘に収まっている刀に手を添える。そして、
「光魔法、デイブレイク!」
師匠は詠唱すると、音速を超えるんじゃないかと思えるぐらいのスピードで刀を抜き、ただ胴体に一閃、真横に喰らわせると斬り口が白く輝き、爆発を起こした。
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