42話 見本
「ねぇマスター、この植物触っても良いと思う?」
「それを聞いてくる時点で触らない方が良いのは確定だな」
「えぇ、でもこの透明のつぶつぶとかがいっぱいある奴触ってみたい」
俺たちはガナタルを去り、魔王城にもっとも近い街に向けて旅をしていた。
今日は2日目だ。なので7月28日だ。
「ちょっと待ってろ、今スマホで調べるから」
この世界はどうやら地球に似てる生物が多い。目の前にある植物もテレビで見たことある植物だ。なんか虫とかを食べる植物的なあれだ。
エルウルフとかも地中から出てきたり魔法使ったりは流石にないが、良く見ればただのLサイズの狼だ。
「え!この世界でスマホ使えるの?!」
「昨日、持ってたの思い出してなぁ。充電が残り20パーセントぐらいしかないけど使えるぞ」
街に向かう道中の草原、この広大な草原の中にある一本道を辿っていた。
「ねぇ浩介、スマホって何?」
「この世界でいう高性能アーティファクトってところかな」
「へぇ……ちょっと使わせてよ!」
「これはちょっと扱いが難しいから……」
「えぇ!いいじゃ〜ん!!」
「いや、ちょ!」
スマホはカバンの中にずーっと入れてたのを昨日、荷物の整理中に思い出した。異世界なんてところに来たらスマホどころじゃないからな。
それでスマホをどう有効活用できるか考えていたところだが。
「ほいっ!っと……!」
「あぁ!」
リンに取られてしまった。壊されたりとかしたら困るのに。
「ちょっとだけ借りるねぇ……ねぇねぇ、マシロちゃん。どうやって使うの?」
使い方が分かるはずもなく、すぐにマシロに教えてもらおうとするリン。
「えーっとね、ちょっと貸してー」
マシロがスマホを受け取ると、
「「「あ……」」」
スマホが凍ってしまった。俺らの表情も一瞬止まってしまった。
「ぅぉぉおおおい!!マシロォォ!!何してんだぁぁ!!」
「だ、大丈夫大丈夫!こうやって指を鳴らせば!」
「そっか!その手があった……!」
マシロが指をパチンと鳴らすと氷が瞬時に無くなっていった。
マシロはまだ完全に制御できたわけではないみたいだ。どうやら、マシロのマナが強すぎるようだ。
「よし、これで大丈夫…………あれ、つかない」
「だろうな!」
これで電源がついたら奇跡だ。
「おいおいおいおい!どうしてくれるんだよぉ!スマホ!高いんだぞぉ!」
「ぐぉめえんぬぅさぁいぃいぃいぃ!」
俺がマシロの肩を揺らしながら、責めた。すると、マシロが手に持っていたスマホを落としたかと思ったら、
「ガブリッ!」
さっきの調べようとしてた植物がそんな擬音語なのかわからない音を立てながら、俺のスマホをむしゃむしゃと食べるとゲェェとげっぷした。
俺はその光景を目にした瞬間、怒りと殺意が湧き上がり、その植物に一閃を与え、真っ二つにした。
「さっきの、食虫植物みたいな奴なんだね……」
マシロは今となってはどうでもいいことを呟き、俺たちは旅を再開した。
お母さんにどう言い訳しようかということと、マシロにどんな罰を与えようかということを考えながら。
〜〜〜
その後、俺はスマホを失い、ナイーブになりつつも歩きながらマナの属性変化の修行を続けていた。
1つ分かったことがマナがごっそり持ってかれるということだ。恐らく無駄にマナを消費しているからだろう。
「うーん……」
「どうしたの、浩介?」
「どうしたら、マナを上手く使えるようになれるかなって……リンはどうやって魔法を使えるようになった?」
「私は、友達と競いながらやってて、その子に勝とう勝とうって無我夢中にやってたら出来るようになったからなぁ……」
「なるほど、競い合うかぁ」
「もう4、5年ぐらい前かな?そういえば、その子もよくわかんない力を使ってたんだよね……」
そう言ったリンは懐かしそうな顔をしていた。きっと良い友達でライバルだったのだろう。
「でも、誰かに教わったんだろ?」
「うん!私が初級魔法の練習をしてた時、通りすがりの魔法使いに会ってね。その人に教わったんだ!そういえば、その人と一緒にいた子が私のライバルなんだけどね」
「へぇ」
なるほど、教わるか。
……そうか!
「ノノ!出てきてくれ!」
「は、はい!ご主人様!」
ノノを呼び出すと、相変わらず強張ったように出てきた。ちなみにマシロは眠いと言って刀の中に戻っている。ほんと自由だなあいつ。
「ノノ!火遁の使い方を教えてくれ!」
俺は手を合わせお願いする。
そう、この手があった!意外と近くに見本となる人がいて助かった!
「は、はい!……えっと、それじゃあ」
すると、少し高い木の目の前に立つとそこで酒を飲み始めた。
ノノはよく酒を飲んでからマナを使う。が飲まなくても使えるらしいが飲んだ方が威力が上がるとのことだ。
俺的には飲まないで欲しいところではあるが、酒呑童子なので仕方ない。
「それじゃあぁ……いきますねぇ……!」
べろんべろんに酔いながらも手のひらは確実に木を捉えていて、
「火遁 炎衝波!!」
ノノの手のひらから出された火の波動は木を砕きながらも燃やし、その先数100mの地面をも抉っていた。
予想してたけどさぁ。
「少しぃ、……やりすぎちゃったぁ……」
そのまま仰向けになって倒れてしまった。
俺は悟った。自分で、独学でやった方が良いと。あとノノは酔わせない方が良いと。
どうせ、アマも張り切って大惨事になるって決まってる。まぁ、張り切ってくれるのは嬉しいんだけどさ。
「ノノ、戻っていいぞ。ありがとな」
「は、はいぃ……」
ノノを抱えながらそう指示し、刀の中に戻してやった。
「ノノちゃんも凄いんだね……」
「あ、あぁ」
ビィィィイン!!
久しぶりに俺の危険察知能力が反応した。
それはノノがマナを使った痕の方向から何かが飛んでくるかのように……
「危ない!」
瞬間、リンが俺の目の前に立ち飛んできた何かを剣で弾いた。
「誰だぁ??俺の昼寝の邪魔した奴ぁ……?」
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