35話 異世界美人
爆風で吹き飛ばされた俺は、マシロのいる場所に戻されしまった。
「いでっ?!」
「何やってんの、マスター?」
こいつぅぅう?!人が吹っ飛ばされて来たってのに
「何やってんの」じゃねーよ!
爆風によって生まれた土埃が止むと、そこには人影があった。
よく見ると、鎧を着ており、長い金髪を後ろでまとめている。手元には両刃の剣があり、腰にはその剣を納める鞘が備えてあった。
辺りをキョロキョロ見渡し、俺と目が合うとこちらの方にスタスタと歩いてきた。
「なんか、こっちに来てない?マスター?」
「むやみに動くな。殺されるぞ……?」
「それはないでしょ」
「いや、でも剣納めてなくね?」
「…………」
「なんか言えよ!」
ってツッこんでる場合じゃねぇ!
そいつはいつの間にか俺の前に立って俺の顔をじっと見ていた。
こいつ……よく見ると、女の子じゃね……?
まつ毛が長く、綺麗で透き通るような水色の目で、金髪には艶があり、そしてしっかり胸があった。
うん、胸があった。
これはいわゆる異世界美人っていう奴だな。
目がキリッとしてるところが少し師匠に似ている。
すると、爆風によって尻もちをついてそのまま動かずにいた俺にその娘はスッと手を差し伸べた。
「大丈夫?もの凄い吹っ飛んでいったけど……?」
「え、あ、うん……」
俺は彼女の手を取り、引っ張り上げられる。
「ぅおっ!」
意外にも力が強くて驚き、変な声が出てしまった。
ていうか、異世界語みたいのが無くて良かった。言葉が通じなかったらこの先が思いやられるしな。
「それより、凄いねキミ!あんな高くジャンプしたり、空中でのあの動き!……あ、ごめんね、私の名前はリン!よろしくね!」
そう言うと、リンは握手を求めてきた。
フレンドリーなんだな。ちょっと意外だな。
俺はその手を取り、自己紹介をした。
「俺は高島浩介、浩介でいいよ。よろしく!」
「うん!よろしく、浩介!」
お互い握手を交わすと、リンは頭を傾げて俺の隣にいるマシロを見ていた。……てか見えるのかよ?!
「あの、そこにいる美人さんは……?」
「え?!私のこと見えるの?!」
「もちろん!」
「マスター!凄いよ、この人!マナ使えるわけじゃないのに私見えるなんて! 」
マシロは俺の両肩を掴み、「ワハァ!」とはしゃいぎだした。
痛い痛い!意外と痛い!骨が軋むからっ!
「……ま、ますたぁ?」
「あ……えーっと……」
マシロは視線をそろぉりと斜め下にズラしていく。
嘘つくの下手かよ……。
「それに浩介が着てる服とかその武器……そしてあの動き。見た事ないよ……」
「……これは最初から説明した方が良さそうだな……」
俺はマシロとアイコンタクトをして、話すべきだと判断し改めてリンの方に顔を向ける。
「あのな、実は俺たち……」
俺はこの異世界に来るまでのことをリンに話した。
〜〜〜
「なるほど…………わからないっ!」
「えぇぇ!」
「だって、急にそんな壮大な事言われても理解できるわけないし、ていうか私バカだし!」
「それ自分で言ったら駄目じゃん!」
「現実を見てるんだよ」
「現実逃避しないだけマシか……」
俺はリンに異世界に来た理由や、マナの存在などを大まかに話した。しかし、リンは頭を傾げ、頭の上に?マークを浮かべていた。
まぁ、そりゃそうだ。普通ならなんだそりゃってなる。俺は日常的にそっち側の人間じゃなかったからすぐに納得してしまったが。
「それにしても、そっちの世界には魔法じゃなくてマナっていうものがあるんだね」
「まぁ、本質的には魔法もマナも大したこと差はないと思う……多分」
あの師匠がマナを使ってるところはそんなに見ないしなぁ。俺なんてエンチャントかマナ放出ぐらいしかしてない。もっと忍者みたいに遁術を使いたいなぁ。
「じゃあ、この世界での私たちの生活とかも教えた方が良いかもね」
「あぁ、そうかもな。……そうだ、あそこに見える大きい街に行きながらにしない?」
「ちょうど良いや!私のギルドもあそこにあるからさ!」
「「ギルドッ?!」」
俺はマシロと声を被らせながらその単語に驚く。
「うん!私、冒険者なんだ!」
「「冒険者ッ!!」」
今度は驚きではなく感激していた。
そう!これだよ!異世界はこうでなくっちゃ!冒険者が次々にギルドの掲示板に貼り出されるクエストをこなしていき、生計を立てていく……!まさしく異世界ライフ!
普段は普通ライフに憧れてはいるが、異世界に来たらギルドに入って冒険者になりたい!これはラノベを読んでる人ならなってしまう一種の症状のようなものだ。
悪魔で個人の意見ですけども。
「ていうか、マシロもそういうの知ってるんだな」
「だって、刀の中で寝てるだけなんて暇じゃない?だからラノベとか漫画とかよく読むよ?」
「俺の刀ん中、一体どうなってんだ?」
刀はお前らの部屋かよ。これからはもうちょい外に出しといてやるか。
「それじゃ、いこう!」
「おう!」
「おーう!」
俺たちはリンのギルドがある街に向かって歩きだした。
〜〜〜
「私たちの世界では魔法を使って生活をしてるんだ。それぞれ魔法には火、水、土、風、光、闇と6属性あるんだ」
「光と闇……か」
なんかカッケェな!絶対強いじゃん、その2属性!
「火、水、土、風は大体想像できると思うから良いとして、光は主に治癒や一時的な身体強化とかができるんだ。さっき私がエルウルフに使った魔法も光なんだ」
「そういえば、『セイクリッド・ブラスト』……だっけ?そんな言葉が聞こえてきたような……」
「そう、あの技は攻撃した獣などを最弱化にして、
そいつを使い魔として扱える技なんだ。でも、人間には効果はないけどね」
「おぉ……!」
魔法もマナみたいに何でもありだな……!まぁ、ベクトルが少し違うような気がするけど。
リンがマシロの事が見えてるあたり、根幹的なとこは同じなのかもしれない。
「この技、最近覚えたんだ!それでどいつに試してみようかなって思った時にちょうどエルウルフがいたから使ったんだけど……あの時はほんとごめんね?」
「いや、全然平気だよ!こう見えて、鍛えてるからね!」
「それなら良かった」
リンは、はにかみながらそう言ってホッとしていた。
うん、流石異世界美人。笑顔もまた素敵だ……!だが俺は動揺などしない。動揺したらどこにでもいるただの童貞だ。平常心だ、平常心。隣に可愛い娘がいて、自分を心配してくれていようとも平常心だ。……うん。
ちなみにマシロは途中で歩き疲れて刀の中に戻っていってしまった。その時にリンは「おぉ!」と驚いていた。
やっぱり、知らない魔法とか見ると興奮するんだな。
〜〜〜
それから俺たちはお互いの世界について質問し合い、話していた。
例えば、俺たちの世界では車という乗り物を発明していて……とか。
その話をしても、リンは?マークを浮かべながら「へー」とか「すごーい」と棒読みで反応していた。
自分から聞いといてそりゃないだろ?!
俺がリンから聞いたのは魔法についてだ。どうやら魔法には、初級、中級、上級、神と位があるらしい。
『神』って絶対、一撃必殺の技なんだろうなぁ……。
どうやら『神』クラスの魔法を使いこなせるのはこの世で一人、『魔王』だけらしい。
うん、俺の試験終わったかもしれない。いやもう無理でしょ?!
そんなこんなしてるうちに、
「おぉ……!ここが……!」
「うん!ようこそ!ここが私のギルドがある街、『ガナタル』だよ!」
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