21.5話 上忍月例会議
6月30日 深夜11時。滋賀県、琵琶湖中心にて。
「第………何回目じゃったかの?、上忍月例会議を始める!」
そんな、風格が威厳の塊なのに中身が威厳の欠片もない人物の声が響く。
「あの、おじいちゃん、なんで琵琶湖でいつもやるの?」
「なんでって、そりゃカッコいいからじゃろ?」
「そんな理由だったんだ!」
「そういえば、孫よ。師匠として上手くやってるのか?」
「もちろん!浩介、面倒くさいとか言うけどなんだかんだで真面目にやってくれるんだよ!」
「おぉ!そうかそうか!そりゃ良かったのう!」
「うん!」
今日も師匠はおじいちゃんに甘えていた。プライベートモードというやつだ。
え…?誰目線かって?ナレーション目線です。まぁ第三者の目線です。そこそこのイケボが言葉巧みに状況を伝えていきますよ!
「おいおい、ここには俺らがいることも忘れてねぇよな?霧隠家さんらよぉ?」
すぐそこにいたもう1人の厳つい顔した上忍が2人に突っかかる。
「「なんだ、いたんだ」」
「てめぇら、やんのか?!あぁん?」
「まぁまぁ、落ち着いて服部くん」
そこにお淑やかな女性の上忍が厳つい上忍を止めに入る。
「もうこいつら離さないと会議進まねぇぜ?猿飛の姉貴ぃ?」
「姉貴はやめてっていつも言ってるじゃない、服部くん!」
「えぇ、良いじゃないですかぁ」
「なんか恥ずかしいんだもん……」
とそこにもう1人の少女の上忍が猿飛の服の袖を引っ張る。
「どうしたの?風間ちゃん?」
「……眠い」
「そっか、じゃあ私の膝を枕にして寝ていいわよ?」
「やったぁ〜……すーっ、すーっ」
「「はやっ!」」
ここで1人1人軽く紹介していこう!
まず、厳つい顔したこの男の上忍。服部亮太(はっとり りょうや)、17歳。高校2年生だ。服部家の末裔だ。東北地方を悪魔退治してる。とにかく厳つい。ちなみに上忍は12歳から就いているという中々のベテラン上忍なのだ。流石、服部家の末裔だ。
次に、お淑やかでまさに清楚の鑑な上忍。猿飛沙也香(さるとび さやか)。19歳、大学一年生。こちらは猿飛家の末裔だ。関東地方を担当している。一人暮らしでバイトと並行している中々の社畜さんだ。
「それは言わないで!」
す、すみません……。
……さて、次に、今寝ている少女は、風間香澄(かざま かすみ)。11歳、小学5年生だ。こちらは風間家の末裔だ。関西地方(山口県まで)を担当している。最年少での上忍であり、その実力は計り知れない。
「……うぅん」
「ぅお!!」
ザボーーーーンッ!!
ここは琵琶湖の中心。常にマナを出していなければ湖に沈んでしまう。そのせいだろう。寝返りの力で腕が湖の水面にぶつけると、マナの波動がその方向に広がっていく。
「いやそれにしたって、これは異常だろ?!」
「この力のおかげで上忍になれたんだろうけど…」
「怖ぇ…」
あの、ちょくちょく私がナレってる最中に割り込んでくるのやめてもらいます…?
「別に良いじゃねぇか。ケチくせぇな」
「そうね、ちょっとケチよね」
え、猿飛さんまで……?
……そして、この方!外は威厳に包まれているけど、中身は孫の事で頭がいっぱい。頭領(ボス)の霧隠翔龍(きりがくれ とびたつ)。しかし、この方。こう見えて、歴代のボスより強いと噂されている。御歳60ということもあり、今は九州地方の悪魔退治を一人で行っている。
「こう見えては余計じゃろ」
あんたまでやるか…。
そして、最後にボスの孫の霧隠葵(きりがくれ あおい)。まぁ、ここは皆知ってますよね。ボスと葵さんは霧隠の末裔である。去年ある任務を一人でこなし、上忍になったそうだ。まだ上忍になりたてということで、神奈川県を任せられている。ちなみに今は高島浩介という少年の師匠やっている。しかし、どういうわけかその弟子に名前を言ってないのだ。
「………」
なんか、ごめんなさい……。すげぇ、顔で睨まれたからこれ以上は何も言わないようにしよう。なんか事情があるのだろう。うん。
ていうか、私ナレーションなんですけどね!顔無いんですけどね!
「それでは、真面目に始めるとしようか」
ボスがそういうと、葵さんも真剣な表情になる。これが師匠モードか。
「じゃあ、まず、それぞれの近況を聞こうかのぉ。まず服部から」
「うっす!こちらはいつも通り、悪魔がちょこちょこっと出るだけで大したことはねぇぜ!」
「よし、次、猿飛」
「はい私の担当のところは問題ありません。悪魔らはもちろん大量に出ますが、いつもどおりです」
「うむ。次、風間」
「…異常……なし…」
「……寝ながらとは器用じゃの…。まぁ平気なんじゃろう。そして、孫よ。どうだ?」
「はい、順調に強くなっています。もうじきマナの修行の方も終わります。……ですが」
「悪魔……か」
「……はい」
ボスは何か知っているかのように頷く。
葵さんはそのまま話を進める。
「浩介は、長い間悪魔に取り憑かれていたためその浩介の器が悪魔の好む環境となっています。なので悪魔が浩介に寄ってきてしまいます。登下校で合計100ちょっとは超えています。」
「ふむ……。恐らくじゃが、他の地方であまり異常がないのはその弟子に悪魔らが寄っていってしまうからじゃろうな……」
「えぇ、もはや十中八九そうでしょう」
葵さんはどうやら確信しているようです。
登下校の際に弟子が見えないところで悪魔と激闘してるらしいです。
え…?なんで知ってるのって?それはナレーションだからですよ!決してストーカーではありません!
それなら、とボスは空中にマナの輪をだしその間に右腕を突っ込む。
流石ボス!ボスはマナを使って空間を操ることができるのです!
ある空間に物を収納できるらしい。
もはや、チート能力だ。
「うるさいぞ」
「ぐへっ!?」
顔もない自分がまさか顔面ビンタを喰らうとは……!
空間って言ってもそれはなしでしょ?!
「ほら、孫よ」
「これは、『刀』……?」
「この3つの刀はお主が持っとる刀と同じように式神が組み込まれておる。ある技師に頼んでわざわざ3つ作ってもらった」
「これを弟子に渡せば良いんですか?」
「あぁ、そうすれば多少は自分の力で悪魔を倒せるようになるだろう。まぁ、もしかしたら1つになるかもじゃが……」
「それはどうゆう…?」
「良いんじゃ!とりあえず、その3つの内から1つ選ばさせろ。オーラを見ればわかると思うが、それぞれ青が『凍』、赤が『焔』、緑が『樹』だ」
「ありがとうございます」
「良いのじゃよ、我が孫のためだ!」
「……はい!」
ボスと葵さんがやりとりしていると、
「おいおいおい、ボスさんよぉ?それは贔屓ってやつじゃないんすかぁ?」
と、服部さんが首を突っ込む。
「安心せい。余った2つの内1つやるから。ていうかお主刀持っとるだろ?」
「新しいのに惹かれるのが漢ってもんなんだよ!」
「余ったらやるから」
「っしゃやあ!」
「「「ガキだ……」」」
寝ている風間以外が口にするぐらいガキくさかった。
---
会議終了後。
ボス以外がすでに解散をして既に3分が経つ。
未だ、ボスは琵琶湖の中心で正座をし、目を閉じて集中していた。
やがて、目を開け立ち上がる。
「さて…新島 紗由理……か。これから、大変になるぞ。孫よ……そして、まだ見ぬ孫の弟子よ…」
そう呟くと、ボスはサッと湖の上から姿を消した。
……あれ、俺一人……?
…じゃあ、私も退散しますかね!
また近いうちに会うことになるでしょう。
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