第16話 ツチノコとへいげん 中編

「姫ぇぇぇぇ!!!お久し振り御座いますうう!!」


「く、クロサイ!?な、何故ここに!?」


クロサイに抱き着かれたシロサイは目を丸くしながら訊ねる。


「かばん殿たちに連れてきてもらってので御座います!」


「え、かばんさま方に?」


シロサイがクロサイがやってきたジャパリバスの方へ目を向ける。


「ど、どうもシロサイさん。ヤマアラシさんも、お久し振りです」


「かばんさま。お久し振りですわ」


「どうもですぅ。また会えてうれしいです」


シロサイとヤマアラシがそれぞれ挨拶をする。


「なに!?かばんだと!!?」


シロサイとヤマアラシの声にヘラジカが真っ先に反応し駆けつける。


「久しぶりじゃないかお前たち!!元気にしてたか?」


「ええ、まあおかげさまで」


「お前がヘラジカ…ねえ」


ツチノコがヘラジカを見てため息をつく。


「ん?なんだツチノコ。私がなんか変か?」


「お前というか私が変なんだがな。お前らにとって」


「うん?どういうことです?」


「教えてやるよ。アフリカタテガミヤマアラシのヤマさんよ」


「や、ヤマさん?」


混乱しているヤマアラシことヤマさんとヘラジカ軍のみんなにツチノコが身の上の事情を説明する。


「うーん。なるほどね…」


「変な身の上でござるね」


「いうなカメレオン」


「それで、その時代の私ってどんなのだったの?」


オオアルマジロが興味深そうに聞いてくる。


「ん?お前か…えーと」


「私も気になるぞ!教えてくれ!」


「わたくしも!」


「拙者も!」


「私もですぅ!」


「あ、じゃあわたしも…」


ヘラジカ軍のみんなから質問攻めにあうツチノコ。


「ちょ、ちょい待て。落ち着けお前ら!」


「興味深い話を聞いたねえ」


「ですね。大将」


そこへ新たな声が降りかかってきた。見るとヘラジカの陣営からライオン、オーロックス、アラビアオリックス、ニホンツキノワグマがやってきていた。


「面白い話をしてるじゃないか。おれ達も混ぜてもらうぜ」


「げ、増えたよ…」


「ツチノコ、人気者だね」


「そうだね。羨ましいね」


「らしくないですね」


「お前ら他人事みたいにしやがって…!」


実際他人事だが。


「それで、早く教えてよー!」


「わかったから待てお前ら!一人ずつな!えーっと、まずはオルマーからだ」


「オルマーってだれ?」


「お前だよオオアルマジロ」


「え、そうなの!?」


「私の時代ではそういう愛称だった。そんでセンって呼ばれてたオオセンザンコウと組んで何でも屋の『ダブルスフィア』ってのをやってたぜ」


「ダブルスフィア!?かっこいいね!!」


オルマーが過去の自分に心酔してるうちに次へ行くツチノコ。


「次はヘラジカだ。お前は角を武器として使ってるけものたちのグループである『けも勇槍騎士団』のリーダーをしていた」


「ほう、過去の私もリーダーだったのだな!さすが私だ!」


「性格は今とは正反対な控えめだが、それでもみんなから慕われる森の王そのものだったぜ」


「さすが私だ!!」


さらに大声で叫ぶ。


「その煩さは全然違うけどな…。次はシロサイだ。お前はセルリアンの女王事件の時にトワ…あー園長についていき尽力したメンバーの一人だな」


「女王事件…?」


「あー長くなるから省略するが、私の時代に起きた大きな事件だと思ってくれればいい。クロサイとは今と同じように主従関係になってたぜ」


「私とシロサイ姫の関係は時空を超えるッ!」


「暑苦しいですわ…」


「あーもうその感じがまんま過去の二人だ」


「じゃあ次は拙者を!」


カメレオンが食い気味に聞いてくる。


「おおう、お前か…。お前はそうだな…。忍者っぽくしようと努力してたな。語尾に『ござる』って無理につけたり、一人称を無理に『拙者』にしたりな」


「なるほどでござる。ならば今の拙者は過去からしたら理想の拙者なのでござるな」


「そういうわけさ。次はヤマさんだ」


「はいい」


ヤマさんが緊張している様子で佇まいを正す。


「お前は…特にないんだよな。今とあんま変わんねえ」


「え?」


ヤマさんが眉を吊り下げる。


「でもま、あえてゆうなら極度の恥ずかしがり屋で、なにかあるとすぐにツンツンさせてた」


「今とあんまかわんないですぅ!!」


「だから言っただろ?えー、次はハシビロコウか」


「うん。よろしく」


ハシビロコウが控えめに言う。


「お前は特に変わってるんだよな。今みたいな控えめじゃなくて軍人気質だったぞ」


「え、じゃあ気になってじっと見ちゃうって癖は?」


「それもそのままだ。また、鬼のジャパ警ってやつでデカ長ってのもやってた」


「警察…。私が…?というかけいさつって?」


「…セルリアンハンター的なやつさ」


「私がセルリアンハンター!?過去の私こわい…」


ハシビロコウが自分の肩に手を置いて震える。


「さて、次はライオンたちだ」


「うん。じゃわたしからね」


ライオンが待ってましたと言わんばかりに名乗りを上げる。


「お前も変わんねえよ。はい次」


しかしツチノコはぶっきらぼうに言い放つ。


「ってちょっと!少しはなんか言ってよ!」


「うーん、お前はとにかくごろごろしつつしめる場所はしめるって感じだ。ほれ、変わらんだろ?」


「…」


そういわれるとまったく反論できなくなってしまうライオン。


「はい次、オーロックス。お前も変わらんわ」


だんだんと疲れてきたツチノコはどんどんぞんざいになっていく。


「おいこら!疲れたからって軽く流すな!」


「お前はただの能筋な筋肉バカだよ。変わってねえだろ今も」


「…」


ライオンと同じく黙り込んでしまうオーロックス。


「あ、じゃあ私もそんなにかわらない感じ?」


ツキノワグマが控えめに聞く。


「ああ、お前も変わらん。ほい次、ラビラビ」


ツキノワの言葉をばっさり切り裂いてラビラビことアラビアオリックスへと行く。


「私はどうなんだ?というかラビラビって私のことか?」


「その通りだ。そんなラビラビはそこにいるルルと一緒に行動してたんだ」


「ルルと?」


ラビラビはそういいつつ少し離れたところにいるルルを見やる。


「ぼくとラビラビが?」


「あ、でもそう言われえるとなんか一緒にいたような感覚がする」


「だろうな。なんせお前らは数少ない記憶が失っただけのやつらだからな」

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