第12話 ツチノコとさばく 後編

「ではボクの家に着いたわけですが、早速検証を始めましょうか」


スナネコの家に入った一堂。バス内でやってたツチノコの検証を改めてやるようだ。


「これまでの検証では、スナネコさんがツチノコさんに触れたら、というかつねったらスイッチしましたね」


かばんが纏める。


「じゃあわたしがツチノコに触ったらどうなるのかな!」


サーバルが元気よく答える。


「じゃあ早速検証してみようか」


ルルがサーバルへツチノコを向かわせ、座らせる。


「よーし、触るよー」


「まあいいが、つねるなよ?」


ツチノコが少しビクつきながらサーバルを見据える。そしてサーバルの手がツチノコの頬に触れる。


「…どう?なんかなった?」


「いや、別に…」


「ツチノコ、一人称は?」


「私」


ルルが聞き、ツチノコがキッパリと答えて、一堂は少し落胆する。


「じゃあつねってみたらスイッチするんじゃない?」


ルルのキラーパスにツチノコは思いっきり苦い顔をする。


「つねられるのはもう勘弁なのだが…」


「検証のため仕方ないよ!ほら!サーバル!」


言いながらルルはツチノコを羽交い締めにする。


「おいコラー!やめろ!放せ!!」


ツチノコは抵抗するが、ルルは懸命に抑える。


「ほらサーバル早く!!!」


ルルが絶叫し、思わずサーバルはツチノコの頬に手を触れる。そして思いっきり引っ張る。


「いででででで!やめろお前ら!!」


ツチノコは絶叫しながら思いっきり暴れルルを引き剥がし、サーバルの腕を掴み、巴投げをかます。


「うぎゃー!!」


と声を上げながらスナネコの家の端へ飛んでいく。が、何とか壁に受け身を取る。


「ちょっと!いきなり投げないでよ!」


「お前らこそいきなり何すんだよ!」


ツチノコが涙目になりながら抗議する。


「ちょっとちょっと!サーバルちゃんもルルさんも!そうやって検証するのはダメだよ!」


流石にかばんも二人を咎める。


「確かにちょっと強引だったかも。ごめんねツチノコ」


サーバルが耳を垂れ下がらせながら申し訳なさそうに謝る。


「ぼくからもごめんね?」


サーバルに続き、ルルも頭を下げる。


「ま、まあ、分かってくれればいいんだよ」


「んで、その様子だと戻ったわけでは無いっぽいですね」


「んあ?まあ、一人称は私だしな」


「となると、つねるっていうのはスイッチ条件ってわけじゃないっぽいですね」


スナネコが冷静に検証結果を元に分析する。


「じゃあぼくとかばんが触ればとりあえずの検証は終了だね」


「つねるのは?」


「それはいらん!!」


ツチノコが一喝する。


「じゃ、ぼくから触るね」


ルルがツチノコに静かに近寄り、頬に軽く触れる。


「どう?なんか変わった?」


「いや、特に何も…。一人称は私だしな」


少し落胆した一同。


「じゃあ次はぼくが触ってみますね」


次はかばんが前に出る。


「じゃあ失礼します」


と言いながらかばんは静かにツチノコの肩に手をおく。


「どうですか?」


「…うおっ!!な、なんだお前ら!!」


ツチノコが素頓狂な声を上げ、みんなから距離をとる。


「あ、戻ってない!?」


「ええ、この様子はいつものツチノコですね」


「ぼくが触るのもスイッチ条件なんですね」


各々が思い思いに言う。が、


「…あ、なんでこんな離れてんだ?」


「あれ戻ったっぽい?」


ルルが反射的につぶやく。秒で戻ってしまった。


「戻ったってことは、私、スイッチしてたのか」


「自覚とかは無いんですか?」


「いや一切ない。急に時間が飛んだような感じだ」


ツチノコが自分の体を見渡しながら言う。


「検証を纏めると、ぼくとスナネコさんが触るとスイッチする。そして、そうやってスイッチしてもすぐ戻ってしまう。ということですね」


「なるほどな。結構面白いかもな」


「じゃあ、そろそろ出発するよ」


ラッキービーストがみんなの話が終わったことを見計らって出発の声をかける。


「じゃあ行きましょうか」


と、一同がバスに乗り込む。が、


「今回はボクも着いていきますよ」


スナネコが立ち上がり、バスに乗り込んでくる。


「お、お前も来るのか。これは面白くなりそうだな」


「もっと賑やかになるね!」


ルルも歓喜の声を上げる。


「じゃあ、出発するよ」


かばんの腕についたラッキービーストが声を上げる。そしてバスは静かにバイパスを通っていく。次の目的地はこはんだ。



以下アラフェネ


「初めて乗ったけど、ジャガーの渡し船はとても乗り心地がいいのだ」


ジャングルの河に揺られながらジャガーの船が進む。


「確かに楽しいかも…」


「でしょー!ジャガーって凄いんだよ!」


アラフェネと一緒に乗ってたニホンカワウソが控えめに呟き、コツメカワウソがハイテンションに叫ぶ。


「よしてよ照れちゃうなあ〜」


その言葉を聞いて、ジャガーも満更でもない様子だ。


「そんなに乗り心地が良いものなのか?」


一行に降り掛かった低い声。ブラックジャガーだ。


「姉さんか。乗ってみる?」


「おう。ちょっと興味がある」


木の上にいたブラックジャガーは木から飛び降り、ジャガーの船に着地した。


「ちょっと!そんな飛び乗らないでくれ!」


「ほう、これは中々…」


ブラックジャガーはジャガーの言葉を聞き流し、船からの景色を眺める。


「ったく、ごめんねみんな」


「やー、別に気にしてないよー」


「それよりも、お前らはツチノコ達がどこに行ったか知らないか!?」


アライさんが4人に訴えかけるように言う。


「ツチノコ達か。どうしたんだっけ」


「オレは知らん」


ジャガーとブラックジャガーが報告する。報告になってないけど。


「ツチノコさん達なら、カフェに行くって言ってたよ」


「おお、ニホンカワウソ覚えてたんだ!凄いね!」


「いや覚えてたというか聞こえてたというか…」


「どっちでもいいのだ!次の目標はジャパリカフェなのだ!」


アライさんが総まとめをする。


「だからジャガー!こうざんへ進むのだ!」


「はいよー。あたしに任せてー!」


一行はジャパリカフェのこうざんへ進んでいった。

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