第5話 ツチノコとじゃんぐる 前編

「ねえツチノコ!さばんなちほーからじゃんぐるちほーまで来たけどせっかくだしここに居るみんなでジャパリパーク探検しない?」


じゃんぐるちほーにやってきた一行。サーバルのそんな提案から物語が始まる。


「うん。ぼくそれ賛成!かばんのこと、もっともっと知りたいしね」


それに賛同するのはルルことトムソンガゼル。


「ツチノコさんはどうします?」


かばんちゃんがツチノコに話しかける。


「ふむ、悪くないな…。このジャパリパークがどんな場所か気になるしな」


「じゃあ決まりだねー!楽しみだなー!」


サーバルがハイテンションで叫ぶ。


「なんでコイツはこんな元気なんだよ」


ツチノコが呆れ気味に呟くが、


「まあまあ、それがサーバルの良さなんだから」


と、ルルがフォローを入れる。と、そこに


「あ、あの方は…」


「あれ?サーバル?とツチノコにルル?珍しいね?そしてあなたがかばん?」


何故か必ず疑問形で話すちょっとおかしなフレンズであるオセロットだ。


「あ、はい。かばんです」


「オセロットは、ネコ科では珍しく泳ぎがとっても得意なんだ。その点はジャガーと似てるね。また、同じオセロット属であるマーゲイと瓜二つでマーゲイは『ツリーオセロット』って言われてるほどなんだ」


ラッキーさんの解説が入る。


「オセロット!この前は寝てたけど今日は起きてるんだね!」


「だってオセロットだもの?」


「やっぱりこの子は何言ってんのかよく分かんないなあ」


ルルが少し笑いながら言った。


「オセロットはぜんっぜん変わってないんだな。ちょっと声が違うくらいか」


「あなた何言ってるの?」


「お前にだけは言われたくない!」


しかし、ツチノコの事情を知らない子から見るとツチノコは発言はなんのことか全然分からん。


「ああ、ツチノコさんは…」


かばん説明中…


「ふーん?面白いね?」


「いや聞かれてもよ」


そういう喋り方だから仕方ない。


「サーバル達はどこまで行くの?」


「わたしたちが旅したルートそのままでジャパリパークの探検するんだ!」


「今度はぼくも一緒にね」


ルルが付け足す。


「そうなの?じゃあ気を付けてね?」


「はい。ありがとうございますオセロットさん」


オセロットと別れた。


「次は誰に会えるかな?」


「ぼくはマレーバクさんとお話してみたいな」


「話したことないの?」


ルルが素朴な疑問をぶつける。


「はい。前あった時は遠くでじゃぱりまん食べてる姿を見かけただけでしたから」


「あのー、私に何か用なの?」


「うわっ!い、居たんですか!」


「私のこの模様は意外と見つかりにくいのよ」


「シマウマと同じだねー」


彼女は黒と白の体色が特徴的な、マレーバクだ。


「マレーバクはゾウのような長い鼻と白黒模様の体が特徴の草食動物だよ。あんまりイメージには無いけど、水辺によく居るんだ」


「会いたかったんですよマレーバクさん!」


かばんちゃんが目を輝かせながらマレーバクに詰め寄る。


「え、な、何で?なにか裏があるの?」


「無いよ!」


何故かサーバルが応える。


「あなたには聞いてないよ」


「あっごめんね」


「別に裏なんて無いです。純粋に仲良くしたいだけですよ」


かばんちゃんが説得するが、


「うーん、でもどうして私なんかと?」


マレーバクの疑心暗鬼さは変わらない。


「な、なんでって言われても…」


かばんちゃんが戸惑いながら言葉を紡ごうとしたら、


「マレーバクはとにかく疑心暗鬼なんだ。こんな様子なのは性格なんだから許してやってくれ」


「そ、そうですか」


ツチノコがかばんちゃんを諭した。


「それにマレーバクも。かばんに裏なんてない。信じてやれ」


「う、うん」


マレーバクも首を縦に振る。


「え、えっと、かばんの活躍はジャガー達から聞いてるわ。あなたを疑っちゃってごめんね。こんな私だけど、仲良くしてくれる?」


「勿論です!これからよろしくお願いしますね。マレーバクさん!」


「こ、こちらこそ」


マレーバクとかばんちゃんが握手をする。


「仲良くなれて良かったね。かばんちゃん!」


「うん!」


「私、疑心暗鬼なのは直らないかもだけど、あなたは信じても良いかも知れない」


「うん!じゃあまたねマレーバク!」


「うん!また!」


マレーバクと別れた。


「次は誰に会えるかな?ぼくもワクワクするよ!」


ルルが飛び跳ねながらテンション高めに話す。


「次は誰に会ったんだっけ?かばんちゃん」


「えっと、フォッサさんだっけ?」


三人の会話を聞いてたツチノコが言う。


「噂をすれば」


「何とやらってヤツだねー。久しぶり!かばん」


「フォッサさん!」


長くて大きい尻尾が特徴的なフォッサだ。


「フォッサは、とある場所で生態系の頂点に立つけものだよ。身軽で木登りが得意で、その場所では百獣の王とも言われてたんだ」


「いやー、かばん。セルリアン戦では大活躍だったらしいじゃない?私も助太刀にいきたかったなあ」


「そういえばフォッサはどうして来なかったの?」


サーバルが訊く。


「いやー、ボスがジャガーとカワウソにしか声掛けなかったから私らは全然知らなかったんだよ」


「なるほど。ラッキーさんはどれもむの…いややめときましょう」


何かを言いかけたかばんちゃんだったが思い留まった。


「お、お前、ホントにフォッサなのか…?」


超衝撃を受けた様子のツチノコが狼狽えながらフォッサに声をかける。


「ん?君は?」


「私はツチノコだ。私の知ってるフォッサと違いすぎて若干ゃどころじゃなく戸惑ってる」


「ツチノコ?いや知ってるも何も、私とキミは初対面だと思うけど…。どこかで遭った?」


「ツチノコさん、フォッサさんはツチノコさんの状況知らないので今この状況でお話しても混乱させるだけですよ」


「あ、ああそうか」


ツチノコが言うと、かばんちゃんがフォッサに事情を説明した。


「へ、へえ、よく分からないが、そんな事もあるんだね」


フォッサは若干ゃ混乱しつつ、状況が飲み込めたようだ。


「それで、キミの知ってる私ってどんな子なの?」


「そうだな。一言で言えば強者マニアだな」


「「「「強者マニア???」」」」


かばんちゃん、サーバル、ルル、フォッサの声が綺麗にハモる。


「ああ、『自分はお飾りな王だ、井の中の蛙だ』って何度も言いながら、自分の実力が外でも通用するように本物の王になる為に色んなけものに勝負を挑むような奴だ」


「「かっっっこいい!!!!!」」


ルルとサーバルが目を輝かせながら叫ぶ。


「でもあまりにもしつこいからあるけものからは住処に進入禁止にされてたがな」


ツチノコが軽く笑いながら呟く。


「え、だ、誰!?」


フォッサがツチノコに詰め寄る。


「えーっと、確かそこに居るキングコブラだったかな」


「キングコブラ!?ってか居たの!?」


「ああ、大勢集まって何をしてるのかと思ってな」


フォッサが驚いて後ろを振り返る。そこに居たのはヘビの王の中の王、キングコブラだ。


「キングコブラは象をも咬み殺す世界最大のヘビだよ。毒性はそこまで強いわけじゃ無いけど、一度に注入される毒の量が他のヘビの比較にならない程の多さだよ」


「ええ!?すっごーい!!」


サーバルがラッキーさんの解説に素直に感心する。


「その象も居るがな」


「こんにちわ〜」


キングコブラの後ろからインドゾウが顔を出した。


「インドゾウはアジアゾウ類の代表種だよ。同じフレンズ化が確認されたゾウはアフリカゾウも居るけど、そのアフリカゾウよりは小さいんだ。それでも動物全体から見ても大きい部類に入るよ」


「ね、ねえキングコブラ。私、一世代前だとあなたに結構嫌われてたみたいなんだけど…」


フォッサが少し言い難いようにキングコブラに声をかける。


「それが何だ?」


「えっ?」


しかしキングコブラは全く気にした素振りを見せずに言った。


「前世代の話を何処から聞いたのか知らんが、今の私にそれを言って何になると言うんだ。まさかお前は私をそれだけで友達を辞めるような薄情者とでも思っていたのか?」


「う…」


「民…。いや友の話をしっかり聞き、相談事でもあればどんなに時間を割いてでも解決してやるのが私の理想だ。フォッサ。今の私達は仲良くしような」


「うん!!」


フォッサが満面の笑みで応える。


「でもまあ、別に仲悪かった訳じゃ無いんだけどな」


ツチノコが呟く。


「む、お前はツチノコか。何故ジャングルに居るんだ?」


「ジャパリパークを探検中だ。ルルとサーバルとかばんと共にな」


「そうか。それは楽しそうでいいな」


「んで、お前はどうなんだ?まだ誰かに命令されたら断れないのか?答えろ」


「ああ、命令されるとつい…な。というか何でお前が知ってる?話したことあったか?」


「私はお前の事は前世まで知ってるからな」


「どういうことだよ」


キングコブラが眉をひそめる。


「かばん。任せた」


「はい!」


かばんちゃん説明中


「ふーん、なるほどな」


「大変だね〜」


かばんちゃんの話を聞いてたインドゾウもツチノコに声をかける。


「じゃあツチノコ達の旅がいい物になるよう、私が踊ってあげるわ〜」


インドゾウが言う。


「お前は踊りたいだけだろ」


「あらー、ばれた~?」


キングコブラの鋭いツッコミが入る。


「じゃあぼくらはもう行くよ」


ルルが別れを告げる。


「ああ、また会ったらもっと話そうな」


「私の踊りも見せてあげるわ〜」


「頑張ってきなよー!」


キングコブラ、インドゾウ、フォッサが応える。



「さて、次は誰だろうな」


「確か…。あ、居ました!」


かばんちゃんが声を上げる。


「ん?あ、お前らか。久しぶりだね」


そう応えるのは角の双剣のような武器が特徴的なアクシスジカだ。


「アクシスジカはチタールという名前を持ってるんだ。これはとある地方だと『斑点がある』という意味で、その名の通り身体中の斑点が特徴的なけものだよ」


「久しぶりアクシスジカ!また土食べてるのー?」


「うん。良い感じに塩味が効いてるし、体にもいいし最高だよ」


アクシスジカが武器に着いてる土を口に運びながら言う。


「お前らも食う?特にルル」


「え、ぼく!!?」


ルルが心底ビックリしたように叫ぶ。


「大丈夫。美味しいよ」


「いやそうじゃなくて…」


「ルル」


「なに?」


ツチノコがルルの肩に手を置き、こういった。


「まあ、頑張れよ」


「えー…」


言いながらルルはアクシスジカの元へ行き、土を分けてもらった。


「そういえば、ツチノコさん、アクシスジカさんはそんなに変わってないんですか?」


「いや、私が生きてた時代にはアクシスジカの子は居なかったな。新種だ」


「へえ、そうなんだ!」


サーバルが元気に答える。


「うわーん!土は舐めたくないよー!」


ルルは手にアクシスジカからもらった土を持ちながら涙目で言った。


「大丈夫だよ。健康にもいいし」


「そういう問題じゃなくてー!!」


「健康によく、美味しいからと言っても、土を食べるのは流石に…」


かばんちゃんも少し引きながら言う。


「大丈夫だルル。トムソンガゼルは土食うから」


「適当なこと言わないでー!!」


ルルが><←こんな目になりながら抗議する。


「ねールル食べないのー?じゃあわたしがたべるよ」


「えっ」


ルルへサーバルの助け舟が来た。


「食べてみたかったんだよねー」


サーバルはルルが持ってる土をひったくるとなんの躊躇いもなく口に運んだ。


「えっ」


「ひっ」


思わずかばんちゃんとルルが声を漏らす。


「うーん。食感はじゃりじゃりしてるけど、確かに塩味で美味しいね。癖になるかも!」


「でしょでしょ?おかわりはまだまだあるよ!」


「わーい!」


こうしてサーバルは土愛好会の一員になったとさ。めでたしめでたし。


「終わらせないでー!!」


「誰に言ってんだ?」


メタ発言するルルにツッコミを入れるツチノコ。


「ねえ、かばんちゃんも食べよー!美味しいよこれ!」


「えっ」


サーバルの提案に顔を引きつらせるかばんちゃん。


「で、でも…」


「大丈夫大丈夫。味はわたしが保証するよ」


「健康面に関しては私が保証する」


アクシスジカも声をかける。


「…分かりました。ぼくも覚悟を決めます!」


「えっ!?」


ルルが驚きの声を上げる。


「かばんが覚悟を決めるのなら私もやってやる」


「えっ!!?」


ツチノコもかばんちゃんに乗っかるように来た。


「おお、ツチノコも!嬉しいよ!」


アクシスジカは目を輝かせながら言った。


「ツチノコは名前からしてこれ行けると思うしねー」


「いやこの『ツチ』は『土』じゃなくて『槌』って意味なんだがな」


「じゃあはい。ツチノコ、かばん」


アクシスジカが土を二人に分ける。


(ぼくは、サーバルちゃんを信じる!)


(ルルが乗ってきたらあの流れが出来たのにな…。ま、しゃーない。いただこう)


各々そんなこと思いながら土を食べる。


「あれ、意外と良いかも」


「ふむ、悪くないな」


「「やったーー!!」」


二人の感想にアクシスジカとサーバルがハイタッチをする。


「食感がちょっと気持ち悪いが癖になるかもな」


「口の中になにか残るような感覚になりますけど、そこまで悪くないです。むしろいけますね」


言いながら二口目を運ぶ二人。


「やったやった!土の時代来た!?」


「そんな時代やだよ!」


ルルが懸命に突っ込む。


「で、ルルはどうするの?」


「食べるですか?食べないですか?」


「博士助手みたいに言わないでー!」


言いながらルルは土を手に取る。


「あれ?食べるの?」


アクシスジカが言う。


「だって食べないと終わらないでしょー!!」


ルルが涙目で叫ぶ。


「あの、ルルさん。無理はしなくていいですよ?」


「ああ、嫌だというなら私らも強要したりはしない」


「頑張って!ルル!」


そしてルルはこう呟いた。


「ラビラビ、あたしに勇気を…」


言いながらルルは土を食べた。


「…あれ?美味しい」


「でしょでしょ!」


サーバルがルルに飛び付く。


「ごめんアクシスジカ!食わず嫌いしてた!」


「良いんだよ分かってくれれば。まだまだ土はあるよ。もっと食べるか?」


「うん!」


「じゃあわたしも!」


「じゃ、じゃあぼくも。ツチノコさんは…。ツチノコさん?」


かばんちゃんは深刻そうな顔をしてルルを見つめるツチノコを認め、声をかけた。


「う、うん?なんだ?」


「いや、なんか様子がおかしかったので、大丈夫ですか?」


「あ、ああ大丈夫だ。気にするな。それより土を食べようか」


「あ、はい」


こうして四人は土パーティを満喫した。

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