その9

 校舎のあちこちに雪が積もり始めている。気を遣って1年生が先輩たちにジュースを注いでくれた。


「母親は僕と入れ替わりに死んだんだ」


 そう言えば・・・プチ合宿でおうちにお邪魔した時、接待して下さったのはおばあちゃんだった。

 たまたまいないか、忙しくて顔を見せないだけだと思ってたけど・・・

 ユズル部長の次の言葉は衝撃だった。


「自ら、死んだんだ」


 一瞬、しん、と静まった後、やはり頑張って訊いたのはわたしだった。


「何で、ですか?」


 ユズル部長はわたしの顔をまっすぐ見る。

 入部してからずっと一緒だったけど、目を直視されたのは多分初めてだ。

 こんな場面なのにわたしは自分の頬が火照り、思わず視線をずらした。


「僕が生まれる時って、切迫早産だったんだ」

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