その7

「・・・僕にはこうするのがごく自然なことなんだ」


 あと4か月で3年生は卒業、という12月頭の雪の降る日。

 遅ればせながら3年生の”慰労会”をやった。

 部室に飲み物とスナック菓子を持ち込んで。加藤さんと西さんは志望大学の模試判定も順調で、受験勉強のラストスパート中。

 そして、ユズル部長は、気良高校からの数少ない推薦枠にはまり、大学の文学部にほぼ入学できそうだって言ってたのに。それなのに。


「どうして推薦枠を片山さんに譲るんですか!?」

「・・・片山は先週お父さんが亡くなったんだ。この推薦枠は学費減免とセットだからね」

「そんなこと訊いてるんじゃないんです。なんで自分の一生を左右するようなことまで人に譲らないといけないんですか!」


 推薦枠の次点だった片山先輩にユズるというのだ。わたしはユズル部長が志の目の推薦受けるって聞いた春から、”わたしも志の目を目指そう!”と思って、2年になってから猛勉強した。

 ユズル部長の後を追っ掛けるっていう動機が不純だろうがなんだろうが、わたしの成績は上がり、ようやく”リアル”な状態になったのに。それなのに。

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