強き光

ガルガード

失えないもの

クローガー視点


クローガー『クロリア………!クロリアどこだ!!』


クローガー またこの夢か………


クロリア『父さん………父さん助けて!!!』


クローガー『クロリア!!』


燃え盛る炎の中クローガーはたった1人しかいない息子を探して炎の中を走り回る………声は聞こえるのにどこにいるかが分からず必死に走り回ってクロリアを探す


クロリア『父さん!!!』


クローガー『クロリア!!やっと見つけた……怪我はないな?行くぞ!』


クロリア『シンセード!!行こう!』


シンセード『はい!!』


やっとの思いでクローガーは息子のクロリアを見つけ部下のシンセードと出口へと走る


クロリア『!!父さん!!!』


クローガー『なっ?!』


不意に漸く出口が見えたというのにクロリアに背中を押されてシンセードと出口から出る………咄嗟に振り向くとクロリアが落ちてきた燃えているコンクリートの下敷きになっていて………


クローガー『クロリア!!』


クローガーは必死になって燃えているコンクリートをどかしクロリアを外に出したが………クロリアは下敷きになったことで内部損傷が激しく既に瀕死だった………


シンセード『ぐすっ……うぅ………』


そして次に見えた光景はクロリアの葬式の風景でシンセードはずっと泣いていた………


???『お前は息子さえも守れないんだな』


背後から聞こえたその言葉………その言葉に反応して振り向くと景色が黒に染まり言葉を発す青年はクローガーに近寄る


???『俺の時みたいにお前は誰も護れない そして息子さえも失う』


クローガー『違う!俺は………』


???『何が違う?あの日お前は俺を撃った………「護る」と言っておいて俺を撃ったのは誰だ?誰でもないお前だろう?クローガー』


クローガー『違うんだカメリア………!俺はお前を撃ちたくなかった!護りたかったんだ!!』


カメリア………クローガーに数々の言葉を残し最後はクローガーに撃たれて死んだ男………


カメリア『何が違う?』


クローガー『っ!!』


カメリアは左胸を赤く染めながらクローガーの首を絞めクローガーは必死に抗う


カメリア『お前が俺を撃ったことに変わりはない いつまで現実から逃げている気だ?クローガー』


クローガー『やめ……て……くれ………カメ……リア………』


カメリア『所詮お前は誰も護れないんだよ クローガー』


クローガー『カメリア………』


クローガーは視界がぼやけ自分が泣いていることを理解しながらカメリアの名を呼ぶ………自分が殺した愛しい男の名を………


カメリア『お前は誰も護れない』


クローガー「はっ………はぁ……はぁ……」


クローガー 息が………


カメリアの言葉で反射的に目が覚めたクローガーは自分で自分の首を絞めていたことに気がつき、未だに治らない自虐を感じつつ起き上がり呼吸を整える………悪夢で体中汗だくて服も汗で濡れて気持ち悪くクローガーはベッドを降りる


クローガー 今月で何回目だ………


着替えるために個室の風呂に入ったクローガーはシャワーを浴びながら何回目かを考える………今月に入ってから何度も見る悪夢のせいで寝不足が募り食欲も湧かない


クローガー 確か先々週で3回、先週で4回で今週で既に2回………今日を含めれば3回か………つまり今月に入って既に10回………


体を洗いつつもそんなことを考えて風呂から上がりクローガーは時計を見てみる………すると息子のクロリアと側近の部下は既に動き出している時間だった


クローガー「はー………」


ルウィーク「隊長 お早いですね」


クローガー「夢見が悪くてな」


ルウィーク「また見たんですか?それと忘れていらっしゃるようなので手袋をどうぞ」


クローガー 完全に忘れてた………


クローガーは5年前の大火災の時に両手の平に火傷を負いその時からずっと手袋をしている


クローガー 5年前の大火災の時確かに俺はクロリアに庇われてクロリアは下敷きになった………運良くクロリアは受け身をとっていたおかげで大事には至らなかった………肩には火傷の跡が残ってしまったが生活に支障はないし機能しているから大丈夫だ………問題は本人の自己評価の低さなんだが………


ルウィーク「そういえばこの前も相棒審査蹴ったようですよ クロリア様」


クローガー「クロリアはシンセードとの付き合いが長いし相性がいいから逆に変えない方がいい 変えたら変えたで殺すか死なすかの2択になる」


ルウィーク「気性荒いんですか?」


クローガー「むしろあの調子で普段から荒いと思うか?戦闘の時ならまだしも普段は荒くない」


クローガーの1人息子のクロリアは組織内ではかなり大人しい性格で気性が荒いのは戦闘の時だけ


クローガー「組織内記録を次々更新し儲け高も組織1なのにあの大人しさじゃ舐められる ただでさえイヤミを言われているからな」


ルウィーク「それ嫌味言うやつかなりの自殺行為じゃないですか?隊長の息子ですよ?」


クローガー「基本「影口だから気にしてない」って言ってる割には1人で泣いてることあるから、クロリアの実力を発揮させる舞台が必要になる それこそ無所属なんだから余計にな」


ルウィーク「この組織で無所属ってかなり致命的ですしね………」


実はクローガーが首領を務める「クロウザス」は様々な部隊編成がさており、無所属で仕事をこなすというのはかなり珍しい


クローガー「極々単純に俺と似て団体行動が苦手なんだ 単独で動く方が気が楽だしな」


ルウィーク「クロリア様に甘いのか厳しいのかどっちなんですか」


ルウィークはクローガーとはかなり長い付き合いなのでさりげなく失礼なことを言っても許される


クローガー「飴と鞭(むち)を使い分けているだけだ

延々と鞭を使い続けたらクロリアの自由が一切ないだろ」


ルウィーク「そういうもんなんですか?」


クローガー「飴と鞭はさじ加減によっては自由は勿論精神面をも拘束する うまく使い分けないとクロリアは壊れ出すぞ………カメリアの時のように」


ルウィーク「…………」


クローガー カメリアは父親からの飴と鞭の極端過ぎるやり方によって壊れた………息子をその手にかけようとして俺と戦闘になり………護りたかったその人を俺は撃って殺した………それこそカメリアを愛していたのに………


カメリアは扱われ方に精神面をやられ壊れだし最後はクローガーに撃たれて死んだ………まだ20歳になったばかりのクローガーの腹の中にはクロリアがいた………たった1人でクローガーはクロリアを厳しく育ててきた………それこそ数名の仲間の手を借りたが必死に試行錯誤をして育て上げたその息子は………実力があるにもかかわらず表立って活躍はしないカメリアに似てしまって、クローガーはどうしたらいいかでよく悩む


クローガー「飯食ってくる」


ルウィーク「食べてないんですか?」


クローガー「食べてない」


元々仕事用の服を着ていた訳では無いがクローガーは軽装になり左目を隠して食堂へ


クロリア「父さん おはよう」


シンセード「おはようございます」


クローガー「おはよう 隣失礼するぞ」


食堂に行くとクロリアは相棒とシンセードと食事をとっていてその隣に座る


クローガー「朝から甘い物食べてるってことは夜勤か」


クロリア「今四徹中」


クローガー「後何日残ってるんだ」


クロリア「あと2日」


クローガーはコーヒーを飲みながら甘い食べ物を食べているクロリアを見る………甘いもの好きもカメリア似であまり自分とは似ていない


シンセード「先輩 今日どこですか?」


クロリア「夜戦が5、屋内戦が3の屋外戦が8」


シンセード「場所の把握はできてるんすよね 札使います?」


クロリア「使わなくても勝てる相手だから大丈夫だよ」


クローガー そういえばクロリアは事前に戦う場所の特性を把握してから戦うからかなり有利なんだよな………


クロリア「ご馳走様」


シンセード「俺もご馳走様 先輩の分一緒に片してくるっす」


クロリア「良いの?ありがとう」


クロリアとシンセードが食事を終えてシンセードがクロリアの分も片しに行く


クロリア「そういえば軽装だけど大丈夫なの?」


クローガー「………大丈夫か否かで答えれば大丈夫ではない」


クロリア「…………また悪夢見たの?」


クローガー「ああ」


クローガー だからここに来た………朝1の仕事がなければここに来るクロリアの所に


クローガー「少し………寝かせてくれ………」


クロリア「わかった 2時間後に仕事入ってるからそれまで起きなかったら起こすね」


クローガー「ん………」


クローガーはコーヒーを飲み終えてクロリアの肩に頭を置いて少し眠る


ルウィーク「あ 寝てるのか………」


クローガーが眠りに落ちてから30分位経った頃 ルウィークが来て「どうしよう」と言う


シンセード「何か用があったの?」


ルウィーク「ここの戦闘はどの属性が1番有利なのかってこと聞こうと思ったんだけど………」


クロリア「ちょっと見せて」


困っている人は放っておけないクロリアはルウィークの持っていた書類を受け取り、次に大掛かりな戦闘にを行うであろう戦場はクロリアが熟知している場所で少しアドバイス


クロリア「この地形は闇属性が多いから光属性か無属性の武器を持っている人を連れていった方が良い 闇と闇で戦うのもいいけど自分もダメージを負うことになるからオススメはしない」


ルウィーク「何故「無属性」を?」


クロリア「無属性はなんの属性にもならないけど全ての属性になれる この戦闘っていつやる予定?」


武器に属性があるその世界で無属性は最弱かつ最強


ルウィーク「予定では1年半後です」


クロリア「随分と先だね でもその間に無属性の武器を鍛えることが出来ると思うよ」


ルウィーク「助言をありがとうございます」


ルウィークはそう言って歩いていきクロリアは読書を開始


〜2時間後〜


クロリア「父さん」


クローガー「………2時間丸々寝てたのか?」


クロリア「うん 俺次仕事あるから」


クローガー「…………」


2時間後 クローガーはクロリアに起こされクロリアはシンセードと共に仕事へ


クローガー なんかスッキリしてるのはクロリアのおかげだろうな………


翌朝と違い完全に寝入り目覚めもスッキリしているのはクロリアのお陰だと判断


ルウィーク「隊長 そろそろ」


ふとその場に座り込み目を閉じていたルウィークに耳打ちされ、クローガーは立ち上がって自室に戻り仕事用の服になる


構成員「おはようございます 首領(隊長)」


クローガー「仕事に取り掛かれ」


仕事用の服を着て左目の傷跡を露骨に出すことで構成員達はクローガーを判断しているので、先程の様な軽装でただ息子の肩で眠っているのだと気が付かれない


構成員「あれ?先輩とシンセードは?」


構成員「号令前に仕事に出たよ 四徹してるのに大丈夫なのかな………」


構成員「いやキツいだろ 後で栄養ドリンクとか渡しに行こうぜ」


構成員「ついでにドゥミセックもな」


クローガー 9割方の構成員にイヤミを言われているクロリアを信用する人がいるのか………


クローガー「そこの3人 少しいいか?」


構成員「!はっはい!」


たまたま聞こえた若い構成員達の会話が気になりクローガーが3人を呼び止め話を聞く


クローガー「クロリアのことを「先輩」と呼んでいたが知り合いか?」


構成員「先輩がいなかったら俺ら今もこうして生きてません 俺 命を助けられてこの組織に入ったんです」


構成員「俺は先輩に戦闘の方法とか色々教えて貰って………新人相手に凄くわかりやすく丁寧に属性の特徴とかを教えて貰ったんです」


構成員「弟の命を先輩が救って下さったんです うちの家系はお金が無くて、重い病で高額な手術費用が必要になった時に、うちにはそんなお金無くて諦めるしかないってそう思い始めた時に突然「資金援助」と言って、後遺症が残った場合や様々な場合を含めた大金を貸し頂いて………おかげで弟の手術ができて今では元気なんですが 先輩がいなかったら俺はたった1人の弟を失うところだったんです………その恩を返すべくこうして働いて貸し頂いたお金を返済しているんです」


クローガー そういえばクロリアは困っている人は放っておけないタイプだし結構な世話焼き………前に突然億単位の貯金が1夜で引き出されたことあったな………そもそもなんで俺がそんなこと知ってんだっていうツッコミが入るかもしれんがそこは無視して、貯金はクロリア自身が管理してるから突然引き出されることはまずないし、どうしたんだと思ったらそういうことか………


クローガー「………クロリアは2人で行動することが多いけどサポートを頼んでもいいか?君らなら2人を孤立させないだろうし」


3人「はい!」


クローガーが少し口元を緩めて言うと3人は嬉しそうに返事をして仕事へ行く


ルウィーク「隊長 この戦闘での構成なんですが光属性と無属性の武器を多く持つ者を入れようかと思うんですが、それに関しまして隊長から何かありますか?」


クローガー「光属性と無属性?前は闇属性と炎属性を入れると言っていなかったか?」


クローガー まぁ前日に言われるよりもマシだが


ルウィーク「クロリア様がその地形に詳しいらしく助言として「光属性と無属性が良い」と………」


クローガー「成程………他に何か言ってたか?」


ルウィーク「話によるとこの地形ですと闇属性が多いそうです それと闇属性同士でぶつかり合うと自分もダメージを負うということを」


クローガー 流石に裏で功績を挙げて牛耳っているだけあるな………


※牛耳るとは……集団などを中心的に支配すること


クローガー「ルウィーク Wolf(ウルフ)って名前の奴が組織を裏で牛耳ってるって話知ってるか?」


ルウィーク「知っていますよ 狼のようだからという名前でつけられた名前ですよね?」


クローガー「その「Wolf」ってクロリアの事だぞ」


ルウィーク「えっ」


クローガー 知らなかったのか………


クローガー「言っただろ?「組織内記録を次々更新し儲け高も組織1」って」


そう言いながらクローガーは席を立ち部屋にある大きな窓の前に立つ………外の下の方を見れば仕事を終えて戻ってきたクロリアが誰かをリンチしているのが見える


クローガー 基本的にはクロリアはカメリアに似ているが………戦闘力は俺だからな


そんなことを思いながらクローガーはカメリアの言葉を思い出す


カメリア『お前は誰も護れない』


クローガー「………クロリアだけでも守ってみせる

例え俺の命が潰えるとしても………」


クローガーは手を握りしめてそう呟いた………まるで今亡きカメリアに誓うかのように………







クローガーはもう失えないのだ………愛するその存在を………

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