sideショーちゃん


 ついーん、と飛ぶのよ! 今は任務の真っ最中。とってもとっても大切で、ご主人様の命に関わる任務なの。せきにんじゅーだいっていうのよ!


 もちろん、飛んでいく前にドワーフの子にも声をかけたのよ? ご主人様の頼みは2つあったんだから。忘れてないのよ? エライのよ?


 ドワーフの子は、私の姿を光としか見えてなかったけど、私が声を届けたらとっても驚いた顔してた。足元の変な絵に、どんどん魔力を流してたからすごぉく疲れたお顔だったけど……なんでそんな事するんだろ? 人って、わからないのよ。もしかして、ご主人様も、おんなじ事してたから、ヘロヘロンだったのかな?


 ま、よくわからないことは考えないでおくのよ! ちゃんと1つ目の任務は終わらせたの! タイミングを見て、魔術を使って欲しいから、契約精霊とお話ししておいてって。あの子の最初の契約精霊は大地の子だったの。たぶんね? 魔石の中にいたから何となくでしかわからないけど!


 フウやホムラ、シズクにもちゃんと声をかけておいたのよ? これはご主人様には言われなかったけど、みんなで守ってあげたいから! ショーちゃん気がきくぅ! エライでしょ?


 だから、ここでの任務はかんりょーなの。だから、今ショーちゃんはついーん、と飛んでるのよ! ビューンとかキーンって飛んだんじゃ、遅いのよ。ついーん、って飛ばないと! わかるかなぁ?

 でもね、どこに行ったらいいのかは、わからないのよ。だって、ご主人様の仲間がどこにいるかわかんないんだもん。けど、目印はあるのよ!


 それは魔力。ここの大陸は魔素がほとんどないから、時々見つけられる魔力はわかりやすいの。仲間は魔力を持ってるから、楽になる方に行けばいいと思ったのよ!

 魔素がないとね、とっても苦しいの。シズクが言ってた。人が水中にいる時みたいに苦しいんだって。

 けどね、ショーちゃん今は真名を呼んでもらったから、今は無敵なのよ? もらった魔力も少ないから、ちょっとずつしか魔力を使えないけど……力尽きるまでに見つけてみせるんだから! それで、ご主人様に褒めてもらうのよー!


『? あっちに何かあるのよ? んん、あっちにも!』


 魔力の小さな塊があったから、近くにいってみたの。あ、これ、影鷲の魔力だ! ご主人様を守ってくれる黒い人のヤツ!

 それが間隔をあけてポンポン置いてあるから……これを辿れば影鷲がいるのよね! きっと。ご主人様はさすがなの。本当にこの大陸に仲間がきてたのよ!


 そうと決まればついーん、なのよーっ!




 あっという間にとうちゃーくなのよー!

 ここは、お城? 人間の国のお城みたい。その中の1つの部屋に、目的の人物を発見したのよっ。影鷲と、頭領ドンと、それから魔王に、時々ギルドの受付でみかける人! あとは、このお城の王さまかなぁ? それから鎧着た人が何人か。


 うーん、うーん、面倒くさいからこの場にいるみんなの前で声を流しちゃってもいいかな? 人を選んで伝えることもできるけど、大事なご主人様からの魔力をちょびっと多く使うことになっちゃうもん。いいかな? いいよね! きんきゅーじたい、ってやつだもの。よぉし、ショーちゃん張り切っちゃう!


『助けてなのよー!』

「「「!?」」」


 ショーちゃんが声を上げると、この場にいたみんなが驚いたように目をまん丸にしたの。よしよし、聞こえてる。それを確認してから、みんながショーちゃんのこと見えるように魔力をすこぉし使うのよ。


「な、なんだ!? 淡いピンクの、光……?」


 人間の王さまっぽい人が声をあげて、それから頭領ドンがメグの精霊か!? て叫んだの。だからショーちゃんはそうなのよって言ったのよ!


『きんきゅーじたい、なのよ! 助けてなの!』

「落ち着け、声の精霊。何があった!? というかメグはどこにいる!?」


 頭領ドンが立ち上がって詰め寄ってくるのよ。ちょっと怖いの。そっちが落ち着けなのよ。でもショーちゃんは泣かないで任務を遂行するのよー!


『ご主人様は、捕まってるの。ドワーフと、人間の男の子と! それで、いっぱい痛いで、苦しいのよ! 早く助けてなの!!』

「いっぱい、痛い……?」

「苦しい……?」

「怪我を、してるのか……?」


 ショーちゃんが報告すると、頭領ドンと魔王と影鷲がひっくぅい声で呟いたの。こわい! こわいのよ!


「どこだ! どこにいる!?」


 頭領ドンがそうやって叫んでくるの。もうっ、こわいのよっ! でもきっと、みんなご主人様が心配なんだ。ショーちゃんは影鷲に向かってこう言ったの。


『影鷲の魔力が近くにあったの。ここに来るまでに、56個、辿ってきたのよ! ご主人様は、えーっと、森の中の、地面の下のお部屋にいるのよー!』

「56個てお前……ギル、わかるか?」


 だってショーちゃん、この大陸のことわかんないもん……だから、数は覚えておこうと思ったのよ? 役に立たなかったかなぁ?


「わかる。十分な情報だ。感謝する、声の精霊」

「っとと、待てギル! 慌てるな! ここで慌てちゃ間に合うもんも間に合わなくなる!」


 すぐにでも影を通って行きそうな影鷲に、ストップをかけたのは頭領ドン。それからショーちゃんに向かっていくつか聞いてきたの。


「ギルは一瞬でその魔力の元へ行っちまう。そこまでいくのに、お前はどのくらい時間がかかる?」

『えっと、わかんないけど……ギルドのお茶のお店で使うお砂の時計だったら、3回か4回ひっくり返したくらい、かなぁ?』

「大体15分から20分くらいか……ちとかかるな」


 ショーちゃんったら、時間のこともちょっぴりわかるのよ? すごいでしょ! うふふ!

 でも頭領ドンったら少し腕を組んで考えはじめたの。褒めてくれないのー? くすん。


「ギルは一刻も早く行きたいだろうが、影鳥の元まではいけても、そこから案内してもらう必要があるだろ? だからまずは声の精霊にそこまで先に戻ってもらい、待っててもらおう。そしたら案内してもらえる。……頼めるか? 声の精霊」


 褒めてくれないのは悲しいけど、今はきんきゅーじたいだもんね! ショーちゃんはエライから我慢するの! ご主人様のため!


『わかったのよ! 影鷲、ショーちゃん急ぐのよー! ついーん、なの!』

「ああ……頼む。向こうで会おう」


 そうと決まれば魔力の節約! ショーちゃんはみんなから見えなくなるようにして、すぐに来た道を戻るのよ! 道はわからないけど、影鷲の魔力の場所は覚えてるし、56個辿ればいいから簡単なの。数は数えられるから大丈夫! 間違えないようにしなきゃなの!


 頭領ドンたちはまだ少しお話してるみたい。作戦会議かなぁ? でもいいや! ご主人様のために話してるんだもんね!

 よぉし、ひとまず半分は任務達成したの! 待っててご主人様! 影鷲と一緒に、ショーちゃんすぐに戻るからね!

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