陰謀w 2

 ワゴン車内


「先輩、もうすぐ着き……あら」


 茶髪のセミロングで、おっとりとした雰囲気な彼女、嬉野うれしの莉之しりは恋する乙女である。


 相手の事を思うと、胸が苦しくなる。


 一緒にいるとドキドキして、何だか幸せな気持ちになる。


 ずっとずっと一緒にいたい。


 自分だけを見てほしい、他の人何て見てほしくない。


 怒ってる顔、泣いている顔、笑ってる顔を、全部自分だけに見せてほしい。


 水槽の中で買っている魚みたいに、お腹が減ってたらご飯をあげて、病気になったらお薬をあげて、汚くなったら掃除して、常に自分がお世話して、自分の手元に置いておきたい。


 例えその人が恋愛に興味なかろうが、女性だろうが、人体に興味あろうが、殺人に手を染めた人であろうが関係ない。


 自分の身を捨て、彼女の全てを受け入れ、彼女の為に生きると決めた。


 何故なぜそこまでするのか。


 何故なら、心の底から彼女を愛してるいるから。


 彼女を愛して愛して愛し続ければ、いつか振り向いてくれるかもしれない。


 嬉野の歪んだ愛は、留まることを知らない。


 嬉野が運転していると、前の信号が赤だったため、ブレーキを徐々に踏んでいき、ゆっくりと停止する。


 助手席に座っている思い人を起こさないために。


 嬉野は思い人に顔を向ける。


――か、可愛い〜。


 白髪のセミロングで、肌は雪のように白い。顔と身体には幼さが残っており、傍からみれば小学生にしか見えないが、実年齢は二十歳である。服はサイズが合っていない白衣を羽織り、インナーには白いシャツ、ズボンや靴、身につけている物は全て白で統一されている。


 嬉野は口からよだれを垂らして寝ている思い人をずっと見つめていた。


――可愛いすぎて食べてしまいたい!


「ちょっとぐらい食べても……」


『プーーー!!!』


「うわっ!?」


 嬉野は思い人に夢中になりすぎて、前の信号が青に変わったことに気づけなかった。


 嬉野は咄嗟にアクセルを踏んだため、その反動で車が揺れてしまった。


 その揺れで、助手席に座っている思い人が目を覚ましてしまった。


「ん〜……」


「あ、先輩起こしてしまってすみません。でももうすぐ着きますから」


 思い人は大きく欠伸をして、まだ眠たそうにしていた。


「先輩、慣れてない朝早くのお仕事で疲れたんですね」


「ん〜何か……」


「ん?」


「何か夢で、おしりーの大きなお尻が私のことを食べようとした夢を見たのです」


「どんな夢見てたんですか!?」


――先輩が夢の中に私が!?しかも私が先輩をお尻で……。


「はぁ……はぁ……」


 嬉野が息遣いが荒くなり、ニヤニヤしながら運転していると、目的地である市川駅のパーキングエリアに到着した。


「さぁ先輩、着きましたよ」


「ご苦労なのです! おしりー!」


「はい先輩! その呼び方、絶対他の人の前で言わないで下さいね!」

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