仏物語w

T隊長

少女の祈りw

 少女は歩き続けていた。


 その細く、短い足で。


 少女は泣いていた。


 長く泣き続けていたため、目が腫れ、もう涙を流すことが出来ない。


 少女はさ迷っていた。


 何処どこかも分からない、暗い暗い森林の中を。


 少女は怯えていた。


 森林の何処からか覗き込んでいる、何かしらの視線に。


 少女は不安だった。


 このまま帰れないのではないかと。


「……ママ……パパ」


 何かから逃げるように、そして帰るべき場所を求めて、太陽の光をほとんど遮るほどの森林の中を、幼い少女は無我夢中に歩き続けていた。


 歩いても歩いても、景色は変わることなく、同じ所をぐるぐると周っている気分だった。


「……いい子にするから……助けて……神様」


 少女は祈り続けていた。


 首から下げた、十字架のチェーンネックレスを握りしめて。


 もはや少女の心と身体は限界に近づいていた。


 しかし、そんな絶望的状況の中を打破するような光景を目にする。


 遠くの視線の先に、何かの建物の存在があった。


 少女はその建物を発見した時、絶望から少しの希望を抱くことが出来た。


「通じた……神様が私の願いを聞いてくれたんだ!」


 その少しの希望を求めて、少女は残りの力を振り絞り、その建物を求めて走り始める。


「ありがとう! 神様ありがとう!」


 少女は神に感謝を述べる、それはもうくどいほどに。


 そして少女は建物の前に辿り着いた。


 それは古く、黒い大きな館だった。


 少女は館のドアの前に立つと、丁寧に四回ノックする。


 ノックするも何も反応がなかったため、ドアノブに手をまわして押してみると、ギギという音とともに、その年季が入ったドアは開いた。


「開いてる……」


 少女は館の中をのぞく。


 中は一切明かりがなく、暗い空間が広がっていた。


 そんな空間を、少女は恐る恐る入っていく。


 少女は後悔する。


 ドアを開けてしまったことを。


 そして少女は実感した。


 神様なんていないんだと。


 少女はもう二度と、神に祈りを捧げることはなかった。

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