優しいお姉さんと男子高校生
おーがみ
第1話
ジリジリジリジリ。
「あーうるさい...」
寝ぼけながら手を伸ばしカチッという音を鳴らして止める。
目を擦りながら時間を確認すると朝の7時。
いつもの時間だなと一瞥し、体を起こし伸びをする。
自室から出る前に欠伸をし、洗面所へ向かい顔を洗う。
「ふぅ」
タオルで顔をポンポンと水を拭い、鏡に映る自分を見て気合を入れる。
「今日も1日頑張るか...」
まずは朝食作りだ。
先日買ったパンを2枚トースターの中に入れ、加熱する。
次に冷蔵庫から卵とベーコンを取り出し、油をひいたフライパンの中で適当な大きさに切ったベーコンを焼く。
軽く焼き色が付いたら、平面なところで卵にヒビをいれ、パカッとベーコンの上に落とす。
これを2回繰り返しながら、余った時間で昨日の残り物を弁当に詰める。
焼きあがったパンの上に先程焼いていたベーコンと目玉焼きをのせ、軽く塩コショウをふる。
もう1つの方には、塩コショウではなくマヨネーズとケチャップで作ったソースをつけたら完成。
「よし、次」
俺は2階へ行き、自室の横にある部屋をガチャっと開ける。
中は綺麗に整理整頓されている部屋で、ベッドの上で1人の女性が寝ている。
その女性は大きい羊の抱き枕を抱いて「くぅー」と小さい寝息をたてている。
俺はその女性に近づき、肩を軽く揺らす。
「
莉緒さんは「んー」と寝ぼけながら体を起こす。「ふわあ~」と小さく欠伸をするとうつ伏せに倒れ、つの字のような姿勢をとり、猫のような伸びをする。
これで朝のスイッチが入ったのか顔をこちらに向け、
「
と挨拶する。
「朝食は出来ているので、顔を洗ってきたら来てくださいね」
俺はそう言葉を残し、リビングへ戻って洗い物をする。
莉緒さんは21歳のOL。
身長は156cmで体重は秘密だそうだ。
髪は明るい茶髪で、背中に届くか届かないかくらい。
性格は明るく、困っている人を見捨てられないのでいつか悪い人に騙されるんじゃないかと時々心配になる。
洗い物が終わった頃、莉緒さんの身支度も終わったみたいで2人で「いただきます」をして朝食を食べる。
莉緒さんはパンの上に目玉焼きとベーコンをのせて食べるのが好きで週に3回以上作っている。
「やっぱ、このソースがたまんないー♪」
ほっぺに手を当て美味しそうに食べている。
ケチャップとマヨネーズで作ったソースを食べているのは莉緒さんだが、俺にはその味覚が理解できない。
「莉緒さんには飽きとか無縁そう」
「そう? 私だってあるよ」
「そうなんですか?」
疑問をぶつけると、唇に人差し指を当てて考えているようだ。
「料理・・・とか」
莉緒さんは少し恥ずかしそうに言った。
「あーなるほど」
たしかに、料理は苦手だと思うが飽きとは少し違うような気はするが、頷いておく。
お互い最後の一口を頬張り、玄関へ向かう。
「澄くんは緊張とかしてないように見えるけど平気?」
「はい。ただの入学式なので」
そう。ただの入学式だ。
「一緒にいけなくてごめんね」
「気にしないでください。莉緒さんに迷惑もかけたくないので」
「澄くんはしっかりしてるね。でも、迷迷惑かけてもらってもいいから」
「これ以上はかけられないです」
俺は普通なら学校に通うとことすらできなかった。
それなのに、莉緒さんが色々と頑張ってくれて通えるようになったのだ。
感謝してもしきれない分の恩は受けている。
いつか返せればいいけど・・・。
「それじゃ、行ってきます。」
「あ、うん。いってらっしゃい!」
莉緒さんと別れ、学校に向かって歩みを始める。
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