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「送別会は楽しかった?」

「はい、とても楽しかったです。みんな、私の卒業を喜んでくれて」

「遠くへ引っ越すんだって?」

「はい。就職先が向こうにしかなくて」

「そっか、寂しくなるね」

「・・・はい。本当は学費を払うためだけにキャバ嬢になったんですけど、凄く楽しくて。学費を払い終えてもギリギリまでお店にいさせてもらいました。実家から一人でこっちに来たからってこともあるかもしれませんが、なんだかみんなが家族みたいに思えて。最初は出勤するのも怖くて、辛かったはずなのに、今はやっぱり寂しいです」

 学校とバイトの両立。苦学生だとばかり思っていた彼女だったけど、それだけではなかったみたいだ。

「なんだかんだ言って、ほぼ四年間お世話になりましたから」

「カリンちゃん、頑張ったね」

「いえ、頑張れたのはみんなのおかげです」

 少しだけ声に涙が混じる。寂しさを少しでも埋めたくて彼女は風船を持って帰って来たのだろうか。

「だからきっとこれからも頑張れます」

 ニッと唇を引き上げて彼女は笑って見せる。

 あぁ、そうか。寂しさを埋めるためじゃなくて、背中を押してもらうためにカリンちゃんは風船を。

「頑張ってね。俺も応援してるよ」

「ありがとうございます」

「またこっちに来た時は顔見せてね」

「はいっ」

 カリンちゃんは丁寧に頭を下げて背を向けた。重そうな荷物を両手に下げて、それでもスッと伸びた背中はとても誇らしく見えた。

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