第5話 属性確認!



 昨日は夜だったから、ちゃんとした大きさに気づいていなかったけど。いや暗くてもでけぇとはおもってたけどさ、ほんと大きいなここのギルド。ギルドだけで町になるんじゃないか? というくらいなのだが、王都はもっとでかいんだろ? 人が多いから大きくなきゃ仕事を捌けないのかもしれないけどさ。


「マスター、属性確認はこっちのようです」

「おー了解」


 キョロキョロ周りを面白がって見渡す俺に対し、目的地を確認して案内してくれるノアール。

 うん、俺方向音痴なのかも。今気づいたわ、ノアールがいないと俺絶対迷子になる。というかなったことあるんだから気をつけよ……。


 俺の肩に乗り、翼であっち、こっち。と道案内をするノアール。を珍しそうにみる冒険者たち。

 んー? 使い魔ってそんな珍しいものだったけかな。そいやマールが「はじめてみた」っていってたから珍しいのか? でも使役の呪文は中級魔法さえ使えるレベルなら使用できるはず。しかもここは樹海の麓だ。Aクラスくらいの冒険者がわんさかいる筈で、うーん。わからん。


「どうしましたマスター?」

「いや、使い魔って珍しいもんかなって」

「そうですね。使い魔との契約はCクラスでもできますが、使いこなせるかという問題が発生してきます。特にこの辺りのモンスターは強いですから、契約しても力負けして死ぬというリスクもあります。私のような動物でも個体が強い場合は、動物から契約破棄もできますよ」

「見捨てないでくださいノアール様」

「マスターを一人にするのはとても心配なので大丈夫です。私が保護者になります」

「まさかの保護者」


 鳥が保護者、保護鳥? になろうとは。かといって一人になってもどうしたらいいのか、引き籠って暫く悩みそうだし、まぁいいか。 


「マスター、あれが属性確認の窓口です」

「へーい」


 んじゃちょっくら調べますか。と窓口受付にいるドワーフのおっちゃんに話しかければ


「お、新人か? の割には使い魔持ちかよ! かー! 最近の若いもんは!! その使い魔どうやって手に入れた? 金か!?」

「え、い、や、あの、金はないです? え、使い魔って金でどうにかなるの?」

「なりますよ。使役の首輪という高級な魔法道具がありまして、前の主はそれを使って使役しておりました」

「お、なんだ。金じゃねぇのか。あー……悪いな兄ちゃん。最近変な冒険者が多くてな、兄ちゃんはまともなマスターのようだな?」

「はい。私のマスターは良い方ですよ」

「ガハハハッ! 使い魔がそこまでいうなら兄ちゃんはいい奴なんだな! さて、属性確認だったか? こっちこい!」


 「こっちだ!」とドワーフのおっちゃんにHPが削られたままついて行けば、真っ白な部屋に通された。部屋の中心にはどうやって浮いているのかわからない水晶玉。手のひらサイズだが、これ一個で国が買えるくらいの値段はするなと直感で判断した。壊しそうでこわい。


 うわ、触るの怖い。と怖気づいていれば


「マスターその水晶に触れば属性がわかりますよ」

「そうだ。早くしろ。別に触っても壊れやしねぇよ」


 鳥とドワーフが急かしてくる……俺より小さいのに、中身は大きいよこの人(鳥)たち……俺小心者なんですよ、ちょっと行動する時は勇気的なものが必要なんですよ、特に属性とかいう過去の過ちを見るのには必要なものが!!


「ちょっとまって急かすな! いま勇気一杯溜めてるの!!」

「そんなものどこに溜めるんですか」

「肺の中!」

「そりゃ空気だ! 後がつっかえてるから早くしろ!」


 「早く!」と鳥とドワーフが結託し、無理矢理腕を掴まれて、手が水晶玉にちょこんと触れた。

 瞬間、ぶわっ! と白い部屋いっぱいに拡がる白と黒の光。


 んんん? この文様というか白と黒の混ざったものは、昔なんかの呪いの本で見たことがあるぞ。陰と陽は表裏一体だぜ! ってことを表わしていて、光と闇も表裏一体ってことかなっていう解釈でいいの? と子どもの時に読んだような……。


「こりゃあたまげた、光と闇の属性持ちかよ兄ちゃん」

「流石私のマスターですね。対極する属性を同時に持つなんてすごいですよ。ただ使い勝手は酷く悪いでしょうね」

「普通をください」


 反応も対極していますが、俺はしょんぼりです。なんだかすぐ疲れるから水とかがよかった。水属性って回復呪文得意なんだよね、癒し、癒しは何処ですか……あぁ、さらば俺の癒し。


 そんなこんなで属性確認は終わったが、特殊な属性の組み合わせなせいかドワーフのおっちゃんが「魔法使いになるなら大変だぞ。光と闇の魔法はそうそう使いこなせないからな。いくら適性属性だとしてもだ。覚悟しとけ」だそうで。覚悟したくないのですが、こればっかりはしょうがねぇよなーと頷いて、宿屋へと戻った。

 

 ふーっと息を吐き出してベットに寝転がれば、「お疲れ様です」と同じくベットに飛び乗り、労ってくれるノアール。


「ノアールもなー。今日疲れたろ、飯食ってもう寝るか?」

「いえ私はこれくらいで疲れませんが」

「……レベルの違いってやつか、俺もうぐったりだよ……属性みるんじゃなかったなぁ、つか魔王が光属性を持ってるんだよ。可笑しいだろ」

「偶然か、必然か、謎は多いですね。ちなみにマスターはどの魔法が得意なんですか?」

「あー、特にないかな。言ったろ、いじめられっ子のドジっ子で頭が悪かったって」

「魔王の時はどうしていたんです?」

「うーん、確か上級魔法普通にぶっぱなしてたな、闇以外にも全属性普通に使えたし」

「一応戦闘経験の記憶はあるということですね。では明日は腕試しということでスライム討伐等の簡単なギルドの依頼をこなしましょう。そうしないと今後宿にも泊まれませんよ」

「おっしゃる通りです……属性は一旦置いといて、まずはレベルを上げてこの世界の常識を勉強しないとな。どっかでバレそうだ」

「魔王だってバレたら、まぁ捕まりますね。その時は逃げさせていただきますよ?」

「おう、逃げろよ。そこは気にしないし、今からでも良いマスター探せよな。それまでは俺のところにいてくれると助かる。どうもこの町、大きすぎて迷子になるわ……ははっ」


 「迷子は困りますねぇ」と考えこむ声で言うノアールの嘴の下を撫で、「飯食いにいこうぜ」と起き上り、ノアールを肩に乗せ、頭をガシガシかきむしりながら部屋のドアを開けた。



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