裏切り狐憑きの社
虎渓理紗
第1話 幼馴染
腐れ縁ってやつだ。
「ねーねー、夏祭りいこーよ」
「ヤダ」
「なんで? 暇でしょ?」
「俺は宿題やらなくちゃいけないんだ。暇なお前と一緒にするな」
「……夏休み終わりそうなのにやっていなかった、賢斗が悪いんじゃん」
だから
『でもいつも一緒に学校来るじゃない』
数いる男友達の一人がそんなことを言った。
ふざけるな、勝手に家に来るだけ。家が隣だからあいつが起こしにくるだけだ。
八月二十八日。
夏休みも終わりに近づいた
毎夜出かけ、朝になって帰っていた。
社畜じゃあるまいし、そんな過剰労働では身がもたない。昼間はずっと寝ていて気づくと夕方。そして夜に出かけるのだ。
「ねー、ねー! どうせ昼間もずっと寝てて、宿題忘れてたんでしょ!? この体たらく! クズ! ゴミクズ!」
こいつは知らないのだ。
俺がなんでこんなに疲れているのか。昼間に寝ている姿しか見ていないこいつは、俺がニートの生活をしていたが故のハードワークだと思っているらしい。
全く、こっちの気も知らないで!
「……ヤダってもんはヤダ」
こいつも一人で行くか、女友達を連れて行けばいいのに。なんでまた俺を指名するのか……。
全く分からない。
「だってー、高校最後の夏だよ! 楽しまないとさぁ! 賢斗、行こうよぉ! 行こう! さぁ、私と行こ!?」
うざったい……。
でも、こいつは決めたことを最後まで突き通さなければ気が済まない性分で、俺も何度振り回されたか知れない。
今回も振り回されている。やけに張り切っているこいつは、きっと俺の話など聞く気もなく、俺の意思など無関係で自分の意見のみを突き通す。
これが他の人ならどうだろう。相手のことを、もう少し考えて発言するのではないのか?
昔から自分だけには、こうワガママで頑固なのである。
「どうしても行って欲しいのか」
「うん」
「……仕方ねぇな」
どうせこいつは折れないのだから、自分から折れた方が言い合いにならなくて済む。長年の経験だ。自分の方が大人にならなければならない。
「じゃあ、今日の夕方五時くらいね!」
「……ッちょっと待て! 今日なのか!? 明日の町内のやつじゃなくて!?」
今日行われる祭りといえば、この町、最大規模で行わられる祭りのことだ。
「うん、ちょっと遠出になるけど駅前だし、自転車で行けるよね」
この街は古い歴史があり、現在の駅前あたりに神社が集結している。その辺りで行わられる祭りはこの辺りでも最大規模で、かなり広いのだ。
観光客も多く、どこもかしこも人で溢れる。
だが、規模がでかすぎるため、神社の祭りというよりも出店の方がメイン。肝心の神社はメインディッシュどころか、前菜でもなく、サイドメニュー的な立ち位置にあるというのがあの祭りである。
「何食べようかなぁー! 綿あめは外せないでしょ? たこ焼きも食べたい! お好み焼きも広島焼きも、どっちも食べたいし、じゃがバタ、イカ焼きも食べたい!」
どんだけ、食うんだよ……。
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