第4話置いていかないで…2

前にも書いたけれど、母は夜に飲みに歩く。私が小3位の頃男の人から電話があるとすごい嬉しそうに出掛けていく時があった。子どもながらにいい気はせず、それが浮気みたいなものだと感づいていた。

ある日、また電話が鳴った。いつもの男の声。母にかわると「ビデオ返しに行くって家を出るよ。ビデオ屋辺りにいて」と話していた。その日はどうしても母に外に行って欲しくなかった。なので「私がビデオを返してくるよ」とビデオを奪った。「あんたはいいんだよ!お母さんが返してくるから!」とビデオ屋の近くまで取り合いした。「じゃあもう勝手にしろ!」とビデオ屋の袋を投げつけられ母はどこかへ行ってしまった。母を追いかけることは出来ず、ビデオのケースを広い返しに行ったあと誰にもバレないように泣いた。家に帰ったら妹たちがいるから泣けない。外で泣くのもダメ。涙がボロボロ出てくるし、声が出そうになるのを堪えて歩いた。家の前で涙を拭き「ただいまー」と何食わぬ顔で家に入った。その日の夜は布団をかぶってずっと泣いた。

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