満腹カフェ

もふ

第一章 ✲✲✲ 1 ✲✲✲

 薄暗い森の中。

 冬の真夜中の森はとても静かで、吹き抜ける風が冷たい。

 風に揺れる葉のざわめきが、森全体の鳴き声のように聞こえる。

 その森の中には整備された道はなく、木々や雑草が縦横無尽に生い茂り、あらゆるモノの侵入を拒むようだった。



 ふと…



 そんな森の中にひとつの灯りが、ふわりと浮かんだ。

 オレンジ色の明かりは暗い森の中で唯一、温かみ感じられるものだった。

 その灯りのもとには小さな小屋がある。

 傍らにはチョークで文字が書かれた黒板が、イーゼルに立て掛けられていた。


 【満腹カフェ~あなたの空腹、満たします】


 そこは森の中にある、小さなカフェ。

 一時の幸福を売るそのカフェに、今夜も客が訪れる。




「いらっしゃいませ、満腹カフェへようこそ」

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