特殊性癖教室へようこそ 中西鼎

中西鼎/角川スニーカー文庫

第1話 特殊性癖教室へようこそ プロローグ


   プロローグ



 就活に失敗した。

 俺は採用面接にことごとく落ちまくった。

 八月上旬。誰もがひとつやふたつは内定を持っている頃、俺は未だに内定がなかった。

 志望業界が、良くなかったのかもしれない。

 灰色のキャンパスライフを払拭するために、キラキラしたマスコミ業界を志望したのが良くなかった。マスコミ業界は志望者が多い。何も考えずに受験した俺は、最終面接にすら残れなかった。

 おまけに俺は、マスコミ以外の会社を受けていなかった。ようやく別の業界のエントリーを始めた頃、無情にもタイムアップの宣告があった。

 母親に、実家に帰ってこいと言われたのだ。

 俺の家は代々教師をやっている。父・母・姉含め、親戚一同みんな教師なのだ。おじいちゃんが学校法人をやっていて、私立学校を運営している影響だろう。俺も母親の命令で、取りたくもない教員免許を取らされていた。

 本当は、教師になんてなりたくなかった。大変そうな仕事の割に地味だし、俺はちゃらんぽらんで責任感もないし、教師のような職業は向いてなさそうだからだ。

 だが、就活に失敗した俺に選択権はなかった。

 こうして俺は、実家に帰った次の日に、祖父が運営している、私立清純学苑の採用試験を受けることになった。

 自己紹介、自己PR、志望動機、いじめの対策、モンスターペアレンツ問題――等々の教師らしい質問に、俺は祖父から暗記させられた通りの回答をした。俺の回答はしどろもどろだったが、試験前からほぼ内定は決まっていたらしく、面接は和やかに進んでいった。

 ただ一つだけ、思いもよらぬ質問を受けた。


「あなたは、快楽に強い方ですか?」


 あの質問は、どういう意味だったんだろう?

 面接が終わると、祖父が刷り立ての内定通知書を持ってきた。こうして俺は、清純学苑の教師になった。

 いや――なってしまったと言うべきか。

 この物語は俺が、特殊性癖教室という奇妙なクラスの教師になり、認められるまでのお話である――



第一章①につづく

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