Ch7.夜
夜の暗闇は、未来のようなものだ。
だから、私は夜が訪れるたびに、自分が否応なしに前へと進んでいることを自覚する。
真夜中の道路を歩く。冷たい夜風が肌を撫でる。
気持ちいいかというと別にそうでもなくて、ただただ夜という状況が好きで深夜徘徊を繰り返している。
気まぐれの散歩。パトロールといえば多少は聞こえがいいかもしれないけれど、結局のところ私のようなか弱い乙女では、何か危険に遭遇した時に対処できるはずもなく、やっぱりどれもこれもなんとなくの気まぐれで、自分に降りかかるかもしれない災厄のことは意識的に思考から弾いている。
何かあったら、その時はその時で、苦しみ喘ぎ泣き叫んで祈りながら懇願すればいい。未来の自分に全部丸投げ。未だ知らない暗闇のことは、既知の世界を歩む私には関係のないことだし、何より考えたところでどうにかなることでもない。
未来は妄想。あるかもわからないことを想定して躍起になるのが私たちの仕事。それが、人に課せられた枷。
知らぬ存ぜぬの恐怖に抗うべく今日も今日とて思考と試行を繰り返す。意味なんて後からしかついてこないもので、結果がなければ過程にそれらしい意味をつけるのにも難儀する。まぁ、その辺りに真も嘘もあまり関係ないというのは、これまで生きてきてなんとなくわかった気になっている。
大切なのは自分が納得すること。他者を納得させること。自分で選んだと自覚すること。後悔をしないこと。
ポツリポツリと電灯が道行を照らしてくれる。信用するにも頼りなく、かといって他に明かりがあるわけでもない。仕方ないから、それを頼って歩を進める。
夜の暗闇は、未来のようなものだ。
身に迫った危険ほど、気づきにくい。
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