2-19【穏やかな日常 1:~友達んち Part1~】


 春も半ばを超え、すっかり暖かさが出てきたアクリラ。

 人々の服装も半袖が増え、並木に咲く花の色が唯でさえカラフルなこの街の色をより濃くしていた。

 そんな街の中を行く俺達も人々の活気に当てられたのかモニカの足取りは軽く、ロメオもどこか鼻息を荒くしている。

 

 今日は祝日ということで授業の類は無く、特に目立った活動もない。

 週末はエリクの元に飛ぶのが日課になっていた俺達だが、今日は完全な休日だ。

 だが予定がないわけではない。

 むしろ、こういう時にやっておかなければならない事が多いのでかえって予定が詰まっていた。

 ”友人の部屋を訪ねる”とかな。

 お互いに忙しい学生の身でカリュキュラムも違うので、こういう日でもないとなかなか予定を合わせられないのだ。


 というわけで俺達、は現在アクリラの南側にある不思議な建物が並ぶ一角へとやってきていた。

 ここは”非”人型生物の多く住む地域とあって、普通の街並みを想像しているとなんとも奇妙な感覚に陥る。


 まず道がいくつも並行して引かれていて、体の大きさごとに通っていいところが違う。

 身長50cm未満の者のため高さ4mくらいのところに細い高架が整備されているし、体高3m超えの種族のために真ん中の道は広く、掘割のように一段下がっている。

 建物も建物で、高さが30mくらいあるのに2階建てとか、逆に20mくらいしかないのに30階建ての超高層ビル扱いの物があったり、それらがミックスされて複雑な構造を取っている建物もあるので風景は異質を極めていた。

 あと体の大きさが違う友人を招くためだろう、大型の飲食店やサロンの数も地味に多いな。

 幸い俺達が行くのは、サイズ的に問題ない友人の部屋なのだが。


 だがその前に、珍しいモノを見つけたモニカの足が止まった。


「あ、ルーベン!」


 モニカが嬉しそうにそう言いながら手を上げて振る。

 すると、向こうの方から歩いてきていたルーベンが怪訝そうにこちらを見た。

 歩きながら本を読んでいたらしいが器用な奴め。


『ここで見るなんて、めずらしいね』

『ああ、すごく浮いてるな』


 言っちゃ悪いが雑多の極みみたいなこの近辺で、公爵坊のルーベンの身なりは物凄く場違いだ。

 安定したのかスキルアップデートで最近付けてた専属調律師の姿もないので、余計に異物感がすごい。


「なんでモニカがここに?」


 ルーベンが聞く。

 その顔には露骨に面倒くさそうな表情が浮かび、気のせいか彼の”ボッチ結界”が濃くなったように感じた。

 だがそんなことはお構いなしのモニカは走り寄ると、親愛の印としてそのまま抱きつく。

 突然そんな事をしたもんだから、哀れなルーベンくんの顔は驚きに放心してしまっているではないか。


「え? あ・・・と・・・」

「近くにメリダが住んでるの」


 モニカが身を離しながら先程の質問に答える。


「ああ、そっか・・・」


 そのルーベンの声には納得と、なんとも言えないバツの悪さが交じっていた。


「ルーベンはなんで?」

「散歩・・・と、この先のサロンの個室でのんびりしようかと」


 なるほど。

 

「アデルと待ち合わせ?」

「いや、今日は誰とも会う予定はない」


 ルーベンは何でもない風にそう答える。

 きっと一人で本でも読むつもりだったのだろうか。


「じゃあ、予定は決まってないの?」

「決まってはないけれど・・・」


 そう言って言葉を濁すルーベン。

 ああ、これはあれだな、せっかくの祝日だから孤独を楽しもうと引きこもる気だな。

 どうせ、この辺りまで来たのも知った顔がいないと思ったからだろう。

 だがその答え方だとまずいぞ。

 ほら、モニカの目が輝いた。


「じゃあさ! じゃあさ! わたしと一緒に友達の部屋を回らない?」


 そう言いながらまた、ズイッと顔を押し込めるモニカ。

 この前の喧嘩拳でおはなしで”お友達”になってからというもの、モニカのルーベンに対する距離感はかなり近くなっていた。


「ちょ、ちょっといきなり何言って・・・」


 それでも、いきなり気勢を挫かれれたルーベンは、僅かばかりの抵抗を見せる。

 実際いくら”友達”とはいえ、いきなりふっかけるにはなかなか驚きの内容だ。

 だが、モニカは引かない。


「でもルーベン、今日は予定ないんでしょ? だいじょうぶだよ、知らない子にはわたしが”紹介”するから」


 実家のことで商人連中に営業を掛けまくったせいか、それとも高度授業に参加するために媚を売りまくったせいか。

 最近のモニカは”誰かに誰かを紹介する”という行動そのものに憧れを持っていた。

 それで上手くいき始めていたこともあるだろうが、彼女の中ではちょっとしたマイブームである。

 つまるところ、友人を引き回したいのだ。


「僕が付いていったら迷惑じゃないか?」

「”友達の友達は友達”でしょ? それにルーベンならみんな喜ぶよ!」


 そんな無茶な。


「それはむちゃな・・・」


 お、ルーベン君、気が合うね。

 だが残念ながら最近のモニカの思考は 友達×友達=幸せがいっぱい! なので止まらない。


「だいじょうぶだよ」


 無情にもモニカはそう言うと、ルーベンの手を引っ張って自分の進行方向へ引っ張り出す。

 哀れなルーベン君はそれになす術が無い。

 だが俺にルーベンを助けてやる義理はないし、今はヴィオにせっつかれているスキルの”パック化”で余裕がないのだ。

 それにちょっと面白そうだし。


 まあ、モニカは年下の引率で鍛えた謎の強引さが発揮されるので、抑えるのはどのみち無理だろう。

 高度授業やヴァロア領の事で媚を売って回っているので、変なところが鍛えられてきているのだ。


 商人の街ということもあるだろう、街行く者達もそんな様子の俺達を見て、微笑ましい視線を送るだけである。





 メリダの住んでいる寮は、外から見るとカラフルな球がいくつも集まったような構造をしていた。

 地球の常識セットで説明すると・・・・う~んと、多段積みのアイスを想像してほしい、コーンの上に色んな味のアイスを好き放題重ねたやつだ。

 それが積みすぎて崩れた瞬間を写真に撮ったようなデザイン、といえば想像がつくだろうか。


 ご丁寧に無骨な明るい土色の”コーン”の様な見た目の1階から中に入ると、そこの受付で魔力登録を行う。

 俺達は既にメリダの名前で訪問の予約を入れていたので問題はない。

 もっとも、最近では殆ど顔パスに近くなっていたのだが。

 ロメオも入っても問題はないのでそのまま付いてくる。

 ルーベンも俺達の紹介なので登録は簡単だった。

 こういう時、”友人”というのは便利だ。

 受付にいたのは、メリダとは違う種族の”しゃべる芋虫”のおじさん。

 青い体に、赤い丸い模様が浮いている毒々しい見た目の肌で、渋い紳士服にいつも違う柄の蝶ネクタイを付けていた。


 手続きを終えた俺達は、建物の中を斜めに走る廊下を登っていく。

 無駄に開放的な知恵の坂に比べると幾分狭いが、この街にしては天井が低めなことを除けば、横幅はかなり広く取られており、体の大きなロメオが入っても問題はない。


「なあ、”エクセレクタ非人型生物”の住んでるところって、こんなところばっかりなのか?」


 ルーベンが後ろから、おっかなびっくり壁に触れながらそう聞いてきた。

 その問いに、モニカが頭を捻って一瞬考え込む。


『”こういうところ”に来るのは初めてなんじゃないか?

 街は歩いてても、こんな建物の中に入ることなんてないだろう』

『そっか、わたし達も最初は結構びっくりしたもんね』


 俺達がそう確認し終えると、モニカはルーベンに答えることにした。


「建物によって違うよ、でも天井は低めが多いかな。 あとここは”這う子”が多いから、ほら」


 そう言いながら床に触れる。

 それを見たルーベンが真似をするように床に触れた。

 俺達の方がこの街のことを、前から住んでいる誰かに説明するというのはなんとも不思議な感覚だ。


「変な感触」


 ルーベンが率直な感想を述べる。

 廊下の床は平らではなく、一定の間隔でヒダ状の凹凸が設けられて若干柔らかい。

 あと、触った感触が少しザラザラとしている。

 これは、この上を這って ・・・移動する時に滑らないようにするための工夫だそうだ。


「でも、わたし達だとちょっと歩きにくいけどね」


 モニカはそう言って苦笑いを浮かべる。

 まあ、この程度は異種族と付き合う中では障害にもならない事柄だ。


 そのまま俺達はメリダの部屋の前に到着すると、大きな丸の形をした扉のノブに手をかける。

 その時だった。

 不意に後ろのルーベンに緊張が走る。


 突然、上の階から何か大きな気配が降ってきたのだ。

 モニカがそちらに振り向けば、先程まで上の階まで続いていた通路が濃い紫の壁に覆われているではないか。

 だがそれを見て、モニカの緊張は一瞬で解けた。


「あれ? モニカちゃん」


 その壁から野太い声が飛んでくる。

 その声は間違いなく知った顔だ。

 濃い紫の体に大きな頭と太くて長い胴体に、メリダのものをそのまま拡大して付けたような顔。


「リベロ先輩、おはようございます」


 モニカがいつものようにメリダの同室の先輩に挨拶する。

 リベロ先輩は高等部の最高学年の先輩で、この街では非常に珍しいメリダの完全な同種族のエクセレクタ非人型生命だ。

 だがその大きさはメリダとはかなり違う、前半分を持ち上げたときの体高は俺達より一回り大きいだけだったメリダと異なり、リベロ先輩が同じように体を持ち上げると3mは超えるだろう。

 こうして這っている状態でも目線は俺達よりも高い。

 色も濃いので、本当に色違いのモ◯ラみたいである。


「そういえば今日くるってメリダが言っていたね。

 そんなところで這って・・・ないで、中に入りなよ」


 そう言いながらリベロ先輩が少しだけ体を起こして、胸脚を器用に使って部屋の扉を開けた。


 視界の中に飛び込んできた部屋は、まるでアリの巣の中に迷い込んだかと錯覚させるように複雑な形をしていた。

 その丸みを帯びた壁に沿うように特製の棚が張り付き、そこに色々な物が置かれている。

 そこに置かれているものは、(本人たちは否定するが)彼らが物を集めるのが好きということもあってか、用途不明の小物類が多い。


 この部屋は現在リベロ先輩とメリダの2人で使っているので、部屋の色が途中でガラリと変わる。

 理論魔力学者を目指していて硬派な本や資料が並ぶリベロ先輩のエリアの向こうには、なんともファンシーな”女の子趣味”全開だが、よくよく見ると工具だらけのエリアが広がっていた。

 そして奥にある天窓の下にある机には、メリダが俺達の来訪にも気づかないほど集中して作業しているのが見える。

 見た感じ、ジェネレータの制御部を弄ってるらしい。


「メリダ!」


 リベロ先輩が胸元の”拡声器”の音量を弄って呼びかける。

 するとメリダは、その身を起こしてこちらを振り向いた。


「あ! モニカいらっしゃい・・・・と」


 メリダの視線が俺達の後ろにいるルーベンを捉える。

 するとその分かりづらい瞳に、分かりづらい驚きが広がるのが見えた。


「そう言えば、君初めて見るね。 あれ? でもどっかでみたような・・・」


 リベロ先輩が今更ながらにルーベンについて言及する。


「る、る、るーべん!?」

「メリダ落ち着いて、”ただのルーベン”だよ」

「只じゃない僕がいるのか?」


 脳天気なモニカの言葉に、ルーベンが呆れ顔でツッコミを入れる。

 

『やっぱり、いきなり連れてきたのはマズかったんじゃないか?

 別にルーベンが悪かったわけではないとはいえ、当人たちは複雑なものがあるだろう』

『え? でも、まえに聞いたときは気にしてないって言ってたよ?』

『そりゃ、言ってたけど、本当にそうかはわからないじゃないか』


 だが、俺のその考えも少し的が外れていたようだ。

 突然、メリダは慌てたように飛び起き、バタバタともがくように這い回りながら周囲を片付け始めたのだ。

 しかもその顔には”やりづらさ”ではなく、はっきりと”恥ずかしさ”が浮かんでいるではないか。

 

「ああ、こんな散らかってて恥ずかしい!!」


 そう叫びながら読み込んでいたのだろうマニュアルを慌てて拾う。

 そんな事しなくても、別に散らかってなど無いというに。

 確かにいくつかの物品は出しっぱなしだが、これで散らかってるというなら獣人系の部屋などどうなることか。

 特にワンコとかひどいぞ。

 だがメリダにとってはそうではないらしく、リベロ先輩の姿を見るなりそこにも噛みついた。


「あ!? お兄ちゃん・・・・・!! なんて格好してるの!」


 メリダが血の気が引いたような声を上げて叱咤する。

 実はリベロ先輩は、いくつか鞄やアクセサリーを身に着けているが、肝心の服を何も着ていない。

 俗に言う”真っ裸”という状態だ。

 とはいえ、


「別に問題ないだろ? 服なんて着る文化もないのに」


 その言葉通り、正直そんなに問題は感じない。

 リベロ先輩の裸体はどうみても只の”馬鹿でかい芋虫”以外の何物でもなく、すっかり慣れて感覚が麻痺してしまっている今となっては、むしろ”服を着ている芋虫”というメリダの方がまだ奇妙に思えた。


「もう!! 恥ずかしいからなにか着てよ!!」


 メリダはそう叫びながら全身を使ってこちらの方まで跳ねてくると、そのままリベロ先輩の後ろに回り込んで、何倍も大きいはずの先輩の体を押しながら彼のパーソナルスペースに押し入れ、そのまま仕切りのカーテンをバッと締めて隠してしまった。


「・・・・・・、い、いらっしゃい」


 一拍置いて、メリダがゆっくりとこちらを振り返りながらそう誤魔化す。

 その様子を見たルーベンがやりにくそうに口を開いた。


「お兄さん?」


 そう言いながらルーベンがカーテンの向こうを指差す。

 どうやら先に”そちら”に触れることにしたのか。


「うん。 そうだよ」


 メリダが迷うこと無く即答する。

 だが、注意しなければいけないのは彼が本当の”兄”というわけではないことだ。


 メリダの種族は羽化して成虫になると、全ての人格を失い、ただひたすら生殖のために大陸中を飛翔する”イナニス・マース”という巨大な蛾になる。

 名前の由来は異性を求めてフラフラと回遊することから”浮遊する亡者”とか、巨大な羽で光を遮ることから”光無き者”と言った意味を持っている。

 これが種族名なのだが、そんな理由から彼等は自分たちのことをただ”這う頭”と呼ぶことが多い。

 ”生殖”と”社会”が完全に切り離されており、時折幼虫のフェロモンに惹かれてやってくる”交尾済み”の成虫が置いていく卵を、幼虫達で育てるという独自の文化が育まれてきた。

 成虫も産卵を終えるとまた別の異性を求めてすぐに飛んでいくので、繋がりなども生まれない。

 そしてこのために、彼等には”血族”という考え方自体が存在していないのだ。

 つまり同じ社会に生きる者達というのが、最も親しい”家族”となる。


 リベロ先輩とメリダは同じコロニーで育ったので、お互いの事を兄妹と思っているというわけだ。

 もっとも、それをこちらの価値観で指摘する意味もないので、この場で補足するようなことはしない。




 それから少しの間、俺達3人は適当な駄話をしながら時間を潰した。

 俺は急にその辺で拾ったルーベンが心配だったが、完全に分野の違うメリダとお互いの専門に興味を持ってくれたことで、意外と和やかな時間が続いてくれた。

 特にルーベンが話してくれた今年に入ってからの戦闘順位などの情報は、俺達自身も簡単にしか把握してなかったので新鮮である。


 とはいえ異性との会話がそう続くこともなく、ルーベンの会話の相手は途中から完全にリベロ先輩の方に移ったのだけれど。


 その間に俺達は俺達で会話を行う。

 ちょうどメリダに相談したいこともあったしな。


「だいたいUユーザーIインターフェイスのデザインが決まったんだ」


 俺がこっそりメリダの耳(として使われている触覚)に伸ばした感覚器越しにそう伝える。

 それはここ数日ヴィオにせっつかれて作っているエリクのシステムで、情報などを表示する機能のデザイン案だった。


 戦闘をメインで使うということで、全ての情報を平板に並べるのではなく、注目すべき情報を取捨選択できる方法を取ることにした。

 伝統的なウインドウデザインのGUIだが、ヴィオに表示のテンプレートをくれといわれたのだ。


「今週末にエリクに持ってくやつにそれ入れるの?」


 メリダが問う。


「いや、まだ現段階ではなんとも。 見づらいんじゃないかなーって思って」

「良いと思うんだけどね」


 モニカが俺の描いたデザイン案の一枚を持ち上げて感想を述べる。


「でも、それだと装飾が大きくて、肝心のデータが見づらくなると思うんだよ」

「そうかなー・・・ちょっと実機で見せてみて」


 そう言いながらモニカがインターフェースユニットを展開し、片方のレンズを外してメリダの前に持ってくる。

 ここに表示しろってことか。


「こんな感じだな」

「おお・・・」


 随分とRPGチックな表示に2人が歓声をあげる。

 視界の中に浮かぶ整理された情報の羅列というのはなかなか興味深いからな。

 モニカも、普段見せているのほど情報を絞り込んでもないので新鮮だろう。


「わたしのとちがうね」

「モニカに見せているのは、俺が常に取捨選択してるからな。

 だがヴィオにそこまで求めるのはまだ無理だろうし、今後の事を考えると、ある程度”形式化”がいる」


 あの子にはまだ、”人の感覚”という指標がないからな。

 毎日飛んでくるヴィオの情報を見ていると、それに付き合わされてるエリクの苦労が伺える。

 

「でも”テスト版”は持っていったほうが良いんじゃない? それこそ本人の意見が聞けるでしょ?」

「なるほど、考えておくよ。 ていっても今からだと”データの紐付け”は間に合わないだろうけど」


 戦闘に関連するような情報はかなり扱いが難しく、安易に情報化できないものも多いのだ。

 まあ、案外その辺はヴィオが上手く使うかもしれないが。

 あの子は結構柔軟だからな。


 そうやって今後の方針を決めていると、モニカが話題を今日の予定に切り替えた。


「これからシルフィのところ行くんだけど、メリダも行く?」


 一応ダメ元でモニカが聞いてみる。

 だが予想通り、メリダの表情は苦々しいものだった。 


「遠慮しとく、あそこ怖いし」

「あはは・・・」


 やはりか。


『前にも、あの辺は大変だって言ってたからな。

 シルフィにも「強くないと危ない」と言われているし、連れて行くのは尚早だろう』

『そっか、残念』


 ”友人巡り”の同行者が増えなかったことにモニカが若干気を落とす。


 そして、そんな俺達をよそに、ルーベンの方はいつの間にかリベロ先輩が淹れていたお茶を啜っていた。


「モニカちゃんの好きなやつだけど、どう?」


 リベロ先輩が聞いてくる。

 ”あれ”を出したか・・・

 ルーベンが今しがた口につけた液体を見て、俺はこころの中で「あちゃぁ・・」と呟いた。


「ズズッ・・・ちょっと、土っぽい?」


 ルーベンが満更でもない風にそう答えるが、そのお茶は当然ながら人間用ではなく、作り方もまた”人間用”ではない。


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