2-17【剣の声 1:~血液検査~】


「ロザリア先生いますか?」


 アクリラ市街地の北側にある通称”アクリラ北病院”の受付で、モニカがいつもの様に受付の獣人に問いかける。

 彼は休憩中だったのか奥に引っ込んでいたが、俺達の顔を見るなり、すぐに「ああ」と一声出して席を立った。

 向こうもこちらを知っているので、特に何かを確認する事もなく、すぐに表を見ながら歩み寄る。


「いるよ、今は・・・」


 だがその獣人の言葉はモニカの背中に抱えられてる物体を見るなり怪訝なものに変わった。


「どうしたの? それ」

「ふたつ先のみちで、馬車にひかれてたから連れてきた」


 それは結構激しく損傷した・・・身長1.2m程の小亜人の・・・まあ、死体っぽい奴だ。

 ”っぽい”ってのは、ここがアクリラという特殊環境のせいで、死亡の概念がだいぶ緩いせいだが、とにかくひどい怪我である。


「うわぁ、そりゃお気の毒に」


 受付の獣人はそう言うと、特に急ぐこともなく淡々と部屋の中から担架を取り出して、モニカの背中の患者をそこに乗せた。

 その時に滴り落ちた血が俺達の肩にかかり、傷口がグチャリと音を立てる。

 だが獣人は少しその場で診察を行うと、慣れた様子で紙と台板を取り出してカルテを作り始めた。


「脊椎の骨折に腰部裂傷、下半身はありで、失血ショック、意識なし、脈拍なし・・・」


 そこまで言ってから獣人が患者の頭に手を翳す。


「・・・脳波なし」


 そう言ってカルテに書き加える。

 うわ・・・絶望的・・・


 だが、


「まあ、”入院3日”ってところでしょう。 もう既にアラン先生の魔力が染み込んでる」


 獣人はそう言うと、傷口の様子を触って確かめた。

 それはとてもグロテスクな光景だが、経過時間を考えるなら不思議なくらい瑞々しかった。

 この街に溶け込んでいるアラン先生の白の魔力が、それ以上の損傷を防いでいるのだ。

 これによって、この街ではどれだけ怪我を負おうとも、外科的に復元できればどうとでもなる。

 ”首さえ残れば大丈夫”の理由だな。


「それじゃ、この人は私が運ぶから、君はいつもの部屋に・・・の前にその血を何とかしないとな」


 獣人がそう言って、俺達の肩を指で示す。

 その言葉通り、俺達の着ていた制服は肩から背中にかけてのその白地を赤い血で染めていた。

 これも放っておくわけにはいかない。


「だいじょうぶです」


 だがモニカはそう言いいながら首を横に振って答えた。

 それと同時に俺が制服についた血液を滅菌解毒処理してから凍らせる。

 するとあっという間に染みが黒く変色し、小さな欠片となってパラパラと落ちはじめたではないか。

 後はそれを風魔法を使って集め、袋に入れれば処理は終わり。


「さすが”2種免持ち”は違うね」

「うん」


 獣人のお褒めにモニカがどうだとばかりに頷く。

 まあ、この程度の事は既に勉強済みなのだ。


「それじゃ、今度こそ私はこの人連れてくからね」


 そう言って、獣人は担架の真ん中を掴んで持ち上げると、病院の廊下を奥へと歩いていった。


 それを見送る俺達。

 するとモニカから、なにかやり切ったような安堵が流れ込んできた。



 ちなみに、このアクリラに漂う超強力なアラン先生の魔力だが、当然ながら万能という訳ではない。

 治せないタイプの病気や怪我だってあるし、その性質上、外で負った傷には効果が薄い。

 だから、たまに外の街から治しに来る旅人が病院の中で絶望していたりするが、それもまた半ば風物詩と化している。

 まあ、それでも6割方は治るし、ほぼ全員が症状を改善させれるのだが。


 ただ治療費がべらぼうに高いので、アクリラの住民でも、生徒とかでもないと気楽に怪我はできないのだが。


 



 いつもの様に、いつの間にか北病院に居着いたモニカ班にデータを取られてアドバイスを貰ったあと、俺達はこっそりロザリア先生が1人になるのを少し待ってから、合間を見てもう一度先生の部屋に忍び込むことにした。


「あら? あなた達まだ帰ってなかったの」


 当然、ロザリア先生の反応はこんな感じになる。


「ちょっと先生に相談したいことがあって・・・」


 そう言いながら、モニカがキョロキョロと周囲を見回す。

 それで近づいてくる気配が無い事を察知すると今度は俺が声を出した。


「ロザリア先生に見て欲しい物があって、意見を聞きたいんです」

「あら、なに? 勿体ぶっちゃって」


 ロザリア先生が興味深そうに聞いてくる。

 俺達が聞きたい事と聞いて、興味が湧いたようだ。

 そんな彼女に俺は若干申し訳なくなる。


 モニカが何の躊躇いもなくドンと机に置いたのは、コップほどの大きさの頑丈な小瓶。

 実験とか採取依頼で使う”保存瓶”だ。

 瓶全体が小さな魔力回路になっていて、中のサンプルの状態を一定に保ってくれる。


 そしてその中には、真っ赤な液体が入っており、それを見たロザリア先生の顔が途端に苦いものに変わった。


「・・・先生ね、もうちょっと”まともな物”だと思ってた」


 ロザリア先生がそう苦言を呈するが、どこ吹く風のモニカは、鞄の中から続いて違うラベルのこれまた赤い液体の入った保存瓶を取り出して並べた。

 机に並べられる、真っ赤な液体入りの小瓶。


ケラトマトジューッポス的な飲み物・・・とかじゃないわよね・・・」

「うん、”血”」

「またストレートに行ったなモニカ」

「・・・へん?」


 俺達の反応に若干首を傾げるモニカ。

 ちなみに、ケラッポはよく唐辛子が大量に入ってる事があるので注文するときは要注意だぞ!


「で、こっちは誰の血?」


 ロザリア先生が諦めた様な声で片方の小瓶を指差し聞いてくる。

 おお、さすが医療魔法士、血を一目見ただけでもう片方がモニカのだと見抜くとは。

 俺でも高レベル観測スキルなしじゃどっちがどっちだか。


「エリク。 パーティの前衛やってくれてる子」

「ある”一点”を除いて俺達と同い年くらいの普通の少年なんだが、その”一点”が気になって」

「ふーん、男の子・・・ね」


 ロザリア先生がそう言いながら値踏みする様にこっちを見つめる。

 だが、すぐにモニカの中にあるのが”純粋な興味”だけだと悟ると、その視線をやめた。


「一応、”連中”に聞かせられないような事なのよね」


 ロザリア先生がそう言いながら、”モニカ班”の陣取る一室の方向を見つめた。


「正直よく分からなくて、だから公にする前にロザリア先生の意見が聞きたいんだ」

「まあ、いの一番に頼ってくれるのは嬉しいけれど・・・それで、その”一点”って何?」

「ええっと、事の経緯から説明するよ・・・」





 それから俺達は、ロザリア先生にエリクとの出会いと、”最初の依頼”で見た彼の戦い方・・・そして彼の持っている”武器”の事を説明した。

 特に彼の使っているのが、俺達が失ったフロウであること。

 そしてそのフロウが俺達が使っていた魔法を内包した、”新たな剣の姿”に変わっていた事を重点的に。


「つまり、あなた達の魔法を、フロウを通じてより上手に使う子がいたと?」


 ロザリア先生が話を纏める。

 するとモニカが不承不承に頷いた。

 あの”魔獣狩りの巨刀”を組み込んだシステムは、あまりにピーキー過ぎて俺でも制御できなかっただけに、それで身を立ててる奴がいるというのは気分のいい話ではない。

 ・・・いや、そういう事じゃない。


「そもそもフロウを武器として使いこなす奴なんて、俺の知る限り”3人”しかいないんだ」

「カシウス、あなた達に、そのエリクって子ね?」

「ああ」

「でもそれにしては、その子は”普通すぎる”と・・・」

「しかも俺達と違って、制御してる素振りがないんだ」


 実はあれから2回組んで近場の依頼をこなしているのだが、エリクの動きは完全に剣だけに集中していた。

 俺達みたいに、剣を構成するフロウを制御している様子はない。


「だから、考えられるのは、俺達の残した制御を、どういうわけか使えてるって説」

「なるほど、だからその少年の体とあなた達との魔力の親和性が高いと考えたわけね」

「「うん」」


 ロザリア先生の見立てに俺達が揃って頷く。

 すると、先生はエリクの血の入った小瓶を持ちげ睨むと不思議そうに唸った。


「うーん、でも、パッと見た限りでは確かに黒傾向ではあるけれど、あなた達と違って結構濁りが多いし、生体魔力の効率はかなり違うわね」

「血を見ただけで分かるの?」

「医者だからね」


 医者ってすげー。


「まあ、その話は気になるし私でも調べてみるわ」


 ロザリア先生はそう言うと、足を組んで椅子に深く腰を落とし、2つの小瓶をマジマジと眺めだす。


「・・・ねえ」

「「はい?」」

「この血・・・どうやって手に入れたの?」


 ロザリア先生が疑念深そうにこちらを見る。

 その視線には”何やったんだ”的な感情が在々としていた。

 実際、普通女の子が同年代の男の子の血液なんてどうやったら手に入るものなのか、俺達も想像がつかなかった。

 不思議だなー


「・・ア、ゼンゼン、ヘンナコトシテナイヨ!」


 だが、何故かモニカが冷や汗を浮かべながら激しい棒読みでそんな事を口走るもんだから、ロザリア先生の視線が急激に鋭くなるのは避けられない。


「何言ってんだモニカ。 本当に変な事はしてないだろ」


 そう、変な事はしてない。


「ただ、エリクが怪我した時に、手当ついでに検査の為と言って貰っただけだろうに」


 俺がそう言って、入手の経緯を説明する。

 実際それで嘘はない。


 だが、結局ロザリア先生の表情は、晴れないままだった。


「はあ・・・相変わらず、”トラブルの臭い”がする子ね」

「え? 臭い?」


 ロザリア先生の言葉に反応したモニカが、自分の腕の匂いを嗅ぐ。

 うん、ほんのり汗臭く、それ以上に血生臭い。

 こっそり【体臭抑制】のスキルを使っておこう。

 


「喧嘩とかしないでしょうね」


 そんな様子にロザリア先生は心配そうに聞いてきた。


「まさか、俺達はそんな事しませんよ」


 俺がそう言って空返事を返す。

 まあ、モニカもこの1年で物凄く成長したし、以前ほどそう簡単に短気は起こさないだろう・・・




 ちなみにこの日は、ルーベンと喧嘩する事になった1週間前である。

 念の為に・・・


 その辺りの話はもう知っているだろうから、俺からは語らない。

 ただ、言い訳をさせてもらえば、まさかまだモニカがあんなに短気だとは思わなかったというか、俺達の”年齢”を舐めていたというか・・・

 


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 それから数日が経過する。


 ・・・”ルーベンとの喧嘩”まであと2日ともいえるか・・・いや、忘れよう。



 俺達は、ロザリア先生からエリクの”血液検査”の結果が出たと知らせを受けて、また北病院にやってきていた。

 もっとも、今回は”モニカ班”には内緒なので、表門からではなく裏門から入る。

 とはいえ、気負うところはない。

 こう毎週通っていれば、気分はすっかり自分の家だ。


 だが診察室に入ると、ロザリア先生は何とも難しい顔をしたまま俺達を迎え入れた。

 机の上には何枚かの紙束が。


「何か分かった?」


 モニカが期待を込めてそう問いかける。

 だが、ロザリア先生は首を横に振った。


「全然。 残念ながら、まったく何の関連性も見つけられなかったわ」


 そう言うと1番上の紙をペロリと捲る。

 その様子に、モニカはシュンとして椅子に座り込んだ。


「まずはじめに、”魔力許容性”の検査だけど、これは標準値だったわ。

 ・・・つまりモニカの魔力を無理やり血中に混ぜると拒絶反応が起きるって事ね」

「あれま」


 その結果に意外に思った俺が声を上げる。

 てっきり、その項目に関しては何らかの傾向が・・・少なくとも平均以上にモニカの魔力が馴染むと思っていたのに。

 それに・・・


「それじゃ、ロメオと違って直に俺達の魔力を投入して強化・・・というわけには行かないか」

「あの子は、普段からあなた達の魔力を食べてるからね。 あなた達の魔力への許容性は非常に高いわ。

 まあ、だから普段から慣れ親しんでると上がる項目ではあるんだけれど、今その傾向が見られるわけではないわね」

「なるほど」


 ロザリア先生の言葉に俺は少なからず落胆する。

 だがまあ、見方を変えれば、少なくともこれで今回ロザリア先生に聞いた価値は発生した。

 聞かなかったら、きっとエリクの体に俺達の魔力を直接流す実験に進んでいたことだろう。

 そうなった場合、なかなかに”楽しい事態”になっていたに違いない。


「次に血液の迎合性だけど・・・」





 そこからしばらくの間、ロザリア先生による検査の結果報告が俺達に伝えられた。

 その項目の多さに、俺達はまず何とも言えない感謝の念を彼女に感じる。

 内容は散々だったが、先生は本気で俺達の魔法をエリクが使えてしまった謎に取り組んでくれたことが伝わってきたのだ。


 とはいえ・・・


「つまり・・結論を言えば、あなたとエリクの”身体的相性”は同種のものとしては”普通に普通”以上ではないということね。

 少なくとも特殊な相性の傾向は発見できなかったわ。

 もちろん、これで無いとは言い切れないけれど、有ってもそんなはっきりした物じゃないでしょうね」

「はあ・・・そうですか・・・」


 モニカが若干がっかりしたような声で落ち込んだ。

 だが俺は違う。


「俺はある程度、予想はしてました」

「あら、ロンは悲観的だったのね」


 俺の答えにロザリア先生が驚いたように反応する。


「実は、ルシエラにも相談してて、彼女の研究室でこっそりエリクと俺達の魔力を調べてみたんですけれど・・・」

「まったく、なんの繋がりも発見できなかった?」

「はい。 ルシエラ曰く”素晴らしく他人”とのことでした」

「なるほどねー」


 ロザリア先生がそう言って腕を組む。


「もう後は、本人と彼の持ってるフロウの動作を直接調べるしか無いですね。 でもそこまでの仲ではないので、まだ先になりますが」


 ここ数回会っただけでも、エリクが”あの剣”をどれだけ大切にしているかは伝わってきた。

 エリク自身はモニカの用意する魔道具とか、補助魔法とか、結構ありがたく使ってくれるのだが、決して彼の剣にそれを使おうとはしてくれないのだ。

 そりゃそうだ、彼にとっては唯一の武器なのだから。


 とはいえ、諦める気はない。


「でも俺達の設定した魔法を使ってるのは事実なので、彼を強化する実験は他で続けていくつもりです。

 もしかしたら、とんでもない”金鉱脈”かもしれないので」


 いや・・・

 不思議なことに、俺の中には”確信”があった。

 エリクは、俺達を”次のステージ”へ進化させる鍵なのだという。


「だから、”ユニバーサル計画”の第一被検体として、”エリク”を使うという方針は揺るがないです」


 俺はモニカとロザリア先生に宣言するようにそう伝えた。

 すると、すかさずモニカが肯定と興味の感情を滲ませる。

 だが、ロザリア先生はまだなにか引っかかるようだ。


「”ユニバーサル計画”ねぇ・・・あんまり無茶しないでね。

 あなたの”居場所”は、あくまで”モニカの中”なんだから、それを壊すようなことが有っては本末転倒よ」

「もちろん、モニカを助けるための計画ですから」

「ならいいけれど・・・」


 ロザリア先生はそう言って、渋々ながら了承してくれた。


 まあ、まだしばらくはエリクについては様子見ということだ。

 一応、そろそろ彼に取り付けた観測機の中で、”バイタルデータ”が固まり始めてる頃なので、フロウの謎が解けなくとも計画は進められる。

 実際、メリダと一緒に作ってる”最初の図面”は、そろそろ佳境を迎えるところなのだ。

 この程度の”つまずき”でいちいち止まってはいられない。


 そんな風に、俺達が無理やりテンションを維持しようと心に火を入れていると、


「ねえ、その”フロウ”って、ちょっと見せてくれない?」


 不意にロザリア先生がそんな事を言ってきた。

 それに対し、キョトンとする俺達。


「え!? でも結構、試合とかで見せてません?」


 俺がそう返す。

 ロザリア先生は俺達の”主調律者”を引き受けてくれているので、大きな試合の時などは普通に試合も見てくれていたはずであり、当然その中で俺達は数え切れないほど”フロウ”を使ってきていた。

 だが、そういうことではないらしい。


「実際に、”それ”に触ったことがないから。 どんなものなのかなって」


 ロザリア先生はそう言うと、こちらに向かって手を差し伸ばす。


「えっと・・・はい」


 その様子にモニカは次元収納から短い棒を取り出し、それを手渡した。

 エリクの持っているのと対となるその棒は、アクリラに辿り着くまでの戦いで一部が破損し、その長さをかなり短くしている。

 かつては2mあったその威容も、今では70cmほどしか無い。

 そしてそんなフロウを手にしたロザリア先生は、様々な角度から興味深そうに観察を始めた。


 その様子に俺達はなぜか緊張してしまう。

 彼女の真剣な眼差しを見ていると、まるで心の内を晒しているかのようなもどかしさと不安が込み上げてくるのだ。

 ずっと信じてきたものを否定されるんじゃないかという不安が・・・


「えっと・・・どう?」


 それに耐えきれなかったのか、モニカがおずおずとそう聞く。

 だがそれに対しても、ロザリア先生は無言のまま。

 様々な角度から観察を続け、次第にその表面に魔力を流したりして反応を見始める。


 そして・・・


「ねえ・・・これって、本当に”フロウ”なの?」


 やがてロザリア先生は、なんとも疑わし気な声でそう聞いてきた。


「・・・ええっと、そういわれて育ったので・・・」

「俺もそう聞いてたんで・・・」


 それに対し、俺達が萎みがちにそう答える。


「でもこれ・・・”フロウ”じゃないよね?」


 その瞬間、俺達の心の中に巨大な雷が落っこちた。


「え!? ちがうんですか!?」


 咄嗟に、俺が素っ頓狂な声を出してしまう。

 まさかそんな可能性は考慮していなかったからだ。

 すると、ロザリア先生がなんともバツの悪そうに首を縦に振る。


「私も医療魔道具の中のフロウ魔力配線に触ることがあるくらいだから、大きな事は言えないけれど・・・これってやっぱり”フロウ”って感じがしないのよ・・・もっとこう・・・最初から”別の目的”で作られたような気がするの・・・」


 ロザリア先生の言葉に、俺達が完全に沈黙した。

 

 だが、そうだ・・・そういえば、なぜこれまで全く意識しなかったのだろうか。

 よくよく考えてみれば、たしかに、”フロウ”の特性としておかしな点がいくつも散見されたというのに・・・

 この棒は、ただの”線材”としての領分を遥かに超えた性能と特徴を備えていたのだ。


 というか・・・これ・・・なんだ?


 俺達は、手元にあるこの短い棒の存在が、急に遠のいたような錯覚を起こした。


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