1-13【お受験戦争 5:~逃走戦~】


 こいつは俺達が戦って勝てる相手ではない。



 その一瞬で俺とモニカとルシエラの3人が3人とも同じ結論に達した。


 もちろん”思考同調”などの本当の奥の手を使えばどうなるかは分からないが、今そのリスクを負えば本当の意味で勝てるかどうかが怪しくなる。


 ならばやることは1つ。


 そして、それを行うだけの覚悟と後悔と、無力感に打ちひしがれるのは既にさっきやり終えている。


 モニカとルシエラが一瞬、目線だけでお互いに合図を送り合う。

 まだ、そこまで信頼関係を構築しているとは言い難いかもしれないが、俺もモニカもそこに出来る限りの感謝と信頼を込めたつもりだ。


 そしてルシエラも視線に期待と覚悟を込めてくれたように感じた。


 次の一瞬。


 ルシエラが怪物ゴーレムのいる方に向かって広範囲の攻撃を放つ。


 すると怪物ゴーレム含め、広場の騎士ゴーレムの半分がダメージまでは追わなくてもその場で一瞬動けなくなる。

 

 そして、その一瞬で俺達はそれとは違う方向、具体的には南、つまりは俺達が向かうべき方向へ向かってロケットキャノンの砲身を向け全力で発射した。


 今回は砲弾の破裂時間の調整などという小細工は行わない。

 その代わり、小型の魔力砲弾を俺が作れる限り砲身に詰めて、ブレるのもお構いなしの威力で打ち出した。


 すると一瞬にして広場の4分の1を黒い炎が覆い尽くし、砲口から円錐状に飛び出した大量の砲弾が騎士型のゴーレムを次々に破壊しながら広場の端に到達して、そこにあった建物を粉砕する。


 俺が一瞬だけその建物の主に心の中で謝罪を述べると、その炎がまだ煙に変わる前に、俺達はロケットキャノンの体制を解除して即座に飛行モードへと移る。

 砲身だったものが羽へと変形しエンジンが形作られる瞬間には、もう飛び出した後だった。


 向かう先は今しがた魔力砲弾の暴威が通過したその場所。


 そう、戦って勝てないと判断した俺達が下した決断は、”モニカの逃走”と”ルシエラの時間稼ぎ”だった。

 そしてそれは、当初よりかなり条件は悪いものの、先程決めた俺達の方針と変わらない。


 そもそも俺達の勝利条件はあいつらの殲滅などではなく、アクリラ行政区の境界への到達なのだ。


 そしてそれにはルシエラがあの怪物ゴーレムをどこまで抑えられるか、俺達が二人の力だけでどこまで逃げ切れるかにかかっている。


 ルシエラが負ければ俺達は逃げられないし、俺達が逃げ切れなければルシエラも助からない。

 互いに己の命の一端を相手に任せる覚悟が必要だった。


 そして魔力ロケットが火を吹いて大推力が体にかかる感触が伝わり、俺達が作り出した黒煙の中を弾丸のように飛ぶ。


 下では、すぐに俺たちに逃亡に気づいた騎士型のゴーレム達が慌てて起き上がり、腕に仕込んでいた小さな弓のようなものを取り出そうとしていた。


 だが、


「キュルル!!!」


 そのゴーレム達を、ようやく恐怖に慣れたロメオが突き飛ばし、さらにそのまま俺たちを追いかける様にこちらへ向かいながら、その道筋に転がっていたゴーレム達を足で踏みつけ頭で突き飛ばしながら走り続ける。


 大した戦果だと褒めてやりたいが、残念ながら今は待ってやることはできない。


 そして、これからどう転んでもロメオの姿は、おそらくここで見るのが最後になるだろう。


 たとえ俺たちが逃げ果せたとしてもしばらくはこの街に戻ってくることはできない。

 ロメオがアクリラまで追ってこれれば話は別だが、それを期待するのは酷だ。


 俺はモニカの後頭部につけた感覚器の映像の中で、凄まじい勢いで小さくなっていくロメオに向かって、心の中で別れの言葉を叫ぶ。


 そして、その後ろで強大な軍勢を一人で相手にする事になってしまったルシエラに向かって、少しの謝罪と大量の感謝を叫んだ。


 おそらくあの怪物ゴーレムは、ルシエラを以ってしても勝てる相手ではない。


 それでも誇らしいことに彼女の背中は、今まで見た中でも特段に力強いものだった。


 彼女が少しでも動きを確保するために、上に着ていた魔法士服の上着を脱ぎ捨てる。

 すると、その下から同じように青いタンクトップ状の下着と、大量の魔法陣が出現した。


 そしてそれらの魔法陣がジャミングにかからないように、猛スピードで反応しながら手の先の方に向かい、掌の先で集まるとそこで左右一対の2つの魔法陣に変わり、その魔法陣の中から、もはや禍々しいレベルの光を放つ青い柱のような魔道具を引き出した。


 その柱には大量の魔力回路の幾何学模様が刻まれており、その側面からは一瞬にして全てを焼き尽くすような激しい光が、スパークのようにランダムに飛び散っている。


 それが何かまでは分からないが、俺はそれが近くに仲間が居ては使えない様な危険な代物であることだけは感覚的に理解した。


 おそらくあれが彼女の切り札的なものなのだろう。


 モニカの体が、崩壊しかかった建物の側面を突き抜け、その中へと入り込んでルシエラの姿が見えなくなるその瞬間、轟音と青白い閃光が俺たちの後ろで放たれた。



 俺達の魔力砲弾によってバラバラに崩れている最中の建物の中を飛ぶのは、神経がヤスリで削られるような行為だった。


 次々に柱や壁が崩れ、その瓦礫と土煙で視界が悪く、なんでどこにも当たらずに飛べるのか理解できない程だ。


 だがそれでも俺とモニカの二人同時の状況理解と姿勢制御で次々に瓦礫の雨を回避していく。

 それはこれこそ本当の意味での”思考同調”といえるのではないかと感じるほどの連携だった。

 

 そして最後の窓がグシャリと潰されるその直前、俺達は辛くも建物から飛び出し広場の外へと飛び出した。


 その瞬間、顔に新鮮な空気と明るい光がかかるのを肌で感じ、場違いにも、”なんておいしい空気だろうか”という感想が胸を突いて出かかる。


 時間にすれば3秒もない間だったのに、凄まじい緊張だったせいかずっと崩れる建物の中にいたような錯覚を受ける。


 モニカが一瞬だけ振り返ると、まさにその建物が完全に崩れ去る瞬間だった。


 今更ながらあれって俺達のせいになるのだろうか?


 よく見れば野次馬だろうか、建物のすぐ側で兵士に抑えられながら、あんぐりと崩れる建物を見つめる人間が何人も集まっていた。

 あれがあの建物の主たちだろうか?


 悪いが、被害は全部ゴーレム達に請求してくれ。


 そしてモニカの顔が再び前を向いて、今度は若干上を見つめる。

 そこには重低音を発しながら俺たちのすぐ真上を飛行する、巨大な門番ゴーレムの姿が。


 あれが俺達が建物の中をわざわざ突っ切ってまで、高度を上げて飛べない理由だ。


 この飛行スキルの速度では、あいつらを振り切るほど高速で飛べないし、やってこないほど高空で耐えられる魔法はまだ知らない。


 必然的に、街の中の建物の影を縫うように飛ぶことになる。


 その際中、現在の街の様子が目に入ってきた。

 

 街の中の一般人は案の定何が起こっているのかわかっていない様子で、広場から聞こえる爆発音に耳をふさいだりしながら、兵士たちの誘導のとおりに”戦域”から外側に向かって誘導されていて、その間を、沢山のフード付きのローブを身に纏った、騎士型のゴーレムと思われる人影が高速で移動している。

 

 そして何らかの指令でも受けているのか、ルシエラが残る広場ではなく、俺達のいる方向や、その進行方向に先回りする形で移動しているのが目に入ってきた。


 こうしてみると、あいつらがどのような作戦を取ったのかが見えてくる。


 おそらく、この街に俺達が入ったのは確信しているものの、正確にその位置を把握しているわけではないという仮説は正しい。


 だからあいつらは街から外に出れないように封鎖して、戦力を街の中に分散して配置していたのだ。


 そして発見次第、誰かがそのことを全員に伝達して一斉にその場所に向かう。


 後は先着した戦力から順次襲いかかり、俺達を仕留めきれるような”主力”が到達するまでの間、雪だるま式に数を増やしながら足止めを行うという作戦だろう。

 その主力が何体いるかは定かではないが、それほど多くはないはずだ。


 あんなデタラメ、一体だけの可能性も十二分に考えられる。


 少なくとも壁の外に控える巨人型のゴーレムに動きはない。

 あれを街の中に投入するのは流石に目立ちすぎるということだろう。

 それとも、俺達が街から逃げおおせた場合の保険のつもりだろうか?


 そしてゴーレム達が誰かの指揮下にあり、情報が伝達されているというのはゴーレム達の動きを見れば明らかだった。


 モニカがゴーレムの接近を嫌がって向きを変えるたびに、即座に全員が動きを変えている。


 そしてその指揮を出しているのは、さっきからずっと肌で感じるこの謎の”視線”の主だろう。

 それも一体や二体ではない。


 何体もの視線が四方八方から俺達のいる場所を正確に確認し続けているのだ。


 これでは隠れながら進むことが出来ない。


 必然的に俺達は、狭い路地の間や、建物の側面スレスレを飛ぶことになる。

 またそのときに、まだ人払いの済んでいない区域を通過し、一般人の上を通過することがある。


 皆一様に、奇妙な姿の俺達に驚き、直後にその轟音に耳をふさぐ。

 考えればこの爆音エンジンで空を飛ぶのは凄い目立ちっぷりだ。


 その時俺の中にある考えが。


『モニカ!!』

「なに!?」


『人の多い所を飛んだほうがいいんじゃないか!?』

「なんで!?」


『あいつらも、目立つのは嫌なんだろう!?』


 すると、モニカの中に一瞬だけ迷う感情が渦巻き、すぐにそれが纏まる。


「方向を教えて!!」



 そして即座に次の作戦が決定された。



 俺がその指示に従いこれまでの視覚情報から最適なコースを割り出す。

 

 直接南門に向かうコースは、既に人払いが済んでいた。


 そして今は大きく迂回して東に飛んでいるから、そちらにも手が回っている。

 反対に西側はほとんど管制が機能しておらず、かなり南側まで直接進めそうだった。


『モニカ、右旋回! 次の角を右で、ついでにその次も右だ!!』

「うん!!」


 次の瞬間、モニカが一気に体を傾け、まるで空中をドリフトするように横滑りしながら、巨大なビルのような建物の周りをぐるりと回る。


 頭の周りの感覚機を動かすと、視界の端に映るゴーレム達の動きが大きく変化したのが見えた。

 どうやら今回の進行方向の変更は想定外だったようで、今の一瞬でかなりの個体から距離を取ることが出来た。


 そしてそのまま2回ほど、フェントのように進行方向を変えながら、俺達は狭いながらも一気に西側まで進める、大通りのすぐ横の真っ直ぐな路地裏を、魔力ロケットを全開にして猛スピードで突き進んだ。


 どうやらこの道は当たりだったようで、一瞬にして何百mもの距離を飛ぶことが出来た。


 このまま、ゴーレムの少ない西側に到達できる。


 そう思った刹那、突然右側の道から目の前に鳥の群れが現れ、俺達がそこに突っ込んだ。


「いっ!!??」

『ぐあっ!!?!』

 

 咄嗟の出来事に対応できなかった俺達が、鳥と激突した衝撃とその痛みに声を上げる。


 だが”そいつら”は鳥ではなかった。


 一瞬だけ目を開けると、すぐそこに銀色の羽が広がっていることに気がつく。


 それはアレス高地から逃げるとき、真っ先に接近してきた鳥型のゴーレム達だった。

 こうして近くで見ると、あんまり鳥には見えない。


 そして鳥ゴーレム達は、左右6個の目で俺達をしっかりと睨んでいた。

 なるほど、あの謎の視線の正体はこいつらか、道理でどんなに逃げても視線が切れないわけだ。


 そしてその機械じかけの鳥たち・・・・・・・・は、開かないクチバシでもって俺達の全身を滅多刺しにしてきた。

 幸い鋭く尖ってはいないものの、一応突起物であるクチバシでつつかれるのは、冗談じゃなく痛い。


「うっ・・・ぐあああ!・・っぐ・・・」


 モニカがなんとかそいつらを追い払おうと、手をバタバタと振り回すも、鳥ゴーレム達の方が遥かに機敏でその腕が相手を捉えることがない。


 この状況、どっかで見覚えがあるな。


 ああ、超巨大アントラム戦の時か。

 あの時は、巨大な魔獣相手に小さな俺達がその小回りと速度を活かして立ち回っていたが、今回は全く逆の立場に立たされている。


 まさか俺達が自分より小さいものたちに翻弄される日が来ようとは・・・・


 なんてことを考えている時ではなかった。


『モニカ!! 速度を落とせ!!』


 ”それ”に気づいた俺が慌てて、モニカに向かって警告を送る。


「うぐっ・・・なんで!!??」

『”羽”が崩れてる!!!』


 次の瞬間モニカが一瞬だけ頭を横に向け、その光景に驚愕した。


 そこにはなんと、俺達の羽にクチバシを突き刺している鳥型ゴーレムの姿があったのだ。


 しかもそのクチバシが刺さった箇所から、まるで砂のようにボロボロと崩れていっている。


 フロウに対してこんな反応を出せるものなど一つしか無い。

 

 先程の騎士型ゴーレムが使ってきた謎の大槍。

 あれと同じ効果がこいつらのクチバシにはあるのだ。


 そしてそれを突き刺し妨害魔力を流すことで、フロウの魔力的構造が破壊されていっているのだ。

 こうなれば俺達は、蝋の翼で太陽に挑んだ古代の英雄と何ら変わりない。


 だが幸いにも魔力エンジンは無傷のようだ。

 何匹かつつこうと試みたが、魔力エンジンの振動とそれが生み出す強大な気流に飲み込まれて、グチャグチャになりながら後方に吹き飛ばされると、すぐにエンジンは狙わなくなった。


 だが、それは羽と本体に対する攻撃が増えたことを意味し、早く着地しなければ、高速で空中に投げ出される事態になりかねない。


 モニカが慌てて高度を落とそうと下を睨む。

 だがそこには待っていたとばかりに、騎士型ゴーレムが数体現れてこちらを睨んでいた。

 

 このままではあの集団にまともに突っ込み、めった刺しにしてくる凶器が金属のクチバシから、重厚な片手剣にランクアップしてしまう。

 流石にそれに耐えることは出来ない。


 だがこのままでは墜落必至だ。


 結果として俺達は妥協策として、すぐ横を高速で流れる建物の中から広い部屋のある建物を選んで飛び込んだ。

 

 きっと高かったであろう大きな窓ガラスを突き破り飛び込んだそこは、古風な会議室のような印象の部屋だった。


 割れたガラスが凶器のような鋭い断面をこちらに向けて飛んでくる。

 そしてそれが突き刺さる直前、飛行モードを解いたフロウが回り込んで保護してくれたことで無傷で突入することに成功した。


 だがそのおかげで部屋の中の家具類が凄まじい勢いで破壊されていく。

 中央に大きな木製の机が置かれ、それをぐるりと取り囲むように品のいい椅子が配置されているが、猛スピードの砲弾と化した俺達が半分近くの椅子を粉々にしてしまった。


 そして部屋の端の壁に大きなへこみを作ってようやく停止すると、モニカが即座に立ち上がりフロウを棒に戻して構えようとする。

 だが鳥ゴーレム達の激しい攻撃を受けてボロボロになったフロウは、片方が3分の2、もう片方に至っては半分以下にまで減っていた。


 これでは飛行どころか棒術すら出来ない、精々が長剣と短剣の二刀流が関の山だ。


 だがそれでもモニカは2本の短いフロウを巧みに振り回し、俺達と一緒に飛び込んでいた鳥ゴーレム達に向かって攻撃を仕掛ける。

 そして今は地に足がついているという事もあってか、2,3回軽く振り回すだけで何羽かの鳥ゴーレムが部屋の床に叩き落された。


 さすがに相手も部屋の中では不利と見たのか、即座に入ってきた部屋の窓から飛び出して逃げていった。

 

 その様子をものすごい形相で見送ったモニカが、最後の鳥ゴーレムが窓から外に出た瞬間、膝に手をつく。


「・・・はあぁぁ・・・・」


 そして、凄まじい緊張からで溜まっていた息を一気に吐き出した。

 どうやら少しの時間、呼吸を忘れていたらしい。


 そのまま、その場に倒れてしまいそうな疲労を、俺の筋力強化でなんとか支えながら立ち上がり、今しがた俺達が突入した部屋の内部を見渡す。


 幸いにも部屋の中には誰もいなかった。


 もちろん人気のない建物を選んで飛び込んだので当たり前なのだが、誰もいないその空間がかなり不気味だった。


『そういえばまだ早朝だったか・・・』 


 当然、店などもまだ準備しているところが偶にあるくらいで基本的に開いていない。

 そしてこの建物にもまだ人はやってきていないようだった。


「・・・ここなに?」

『ええっと』


 感覚期を調整して、周囲の物体に焦点を合わせる。

 なにかこの場所の正体を推定する材料がないかと探してみると、端の方に俺達に破壊された黒板のような物が見つかった。

 そしてそこには沢山の文字や数字が書き込まれている。

 それを見る限り・・・


『穀物を扱う商会らしいな』


 また、災難なことで・・・

 まさか全く関係のない者の争いに巻き込まれるとは思いもしなかっただろう。


 モニカが先程の広場での戦闘で負傷した鼻をおっかなびっくり触りながら、突入した窓の方へと歩いていく。

 そして、そこから身を乗り出さないように、外の様子を窺った。


 シュッ!!


 その瞬間、俺達の顔面の直前を金属の矢が高速で通り過ぎ、奥の壁に大きな音を立てて突き刺さった。


『顔は出さないほうがいいな』


 モニカから同意の感情が流れてきて、わずかに窓から身を引く。

 どうやら何処からか狙われているらしい。

 厄介なことだ。


 さらに下を見れば、何体かの騎士型ゴーレム達が徒党を組んで建物の1階の入り口に集まりだしている。

 もうすぐ戦力を整えて突入する気だろう。

 これも厄介だ。


 だが幸いなことに先程まで感じていた視線は感じない。

 流石にこんな建物の中までは手が回っていないか。


 そして見た感じ、この部屋は6階か7階だろう。

 まだ上にもあったので結構大きい商会といえる。

 もしかすると他の組織でも入っているのかもしれないが、どちらにしろこの周囲の建物には人の気配がなかった。

 まだ出勤前か、今日が何かの休日なのだろう。


 今後はこの辺り一帯も人払いされるだろうから、物的被害に目を瞑れば多少は暴れることはできそうだ。


 今、俺達の耳に入ってくる一番大きな音は、モニカの荒い呼吸音と、遠くに聞こえるルシエラと怪物ゴーレムの戦いのものと思われる爆発音くらいだ。

 頼もしいことにまだ保っているらしい。


「・・・・何ができる?」

 

 モニカが部屋の中を睨みながら聞いてきた。


『何ができるねぇ・・・・』


 俺は頭の中に現状の情報をできるだけ広げて、打開策を考えることにした。

 そしてその中から出てきた案をふるいにかけて並べていく。

 

『・・・・まあ、なんとかやれるだけやってみますか』

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