1-5【辺境のお祭り 13:~出発~】



「今回は悪いことをしてしまったね・・・・」


 村役場の2階にある村長の部屋に入ると、部下と思われる人と慌ただしくやり取りをしていた村長がその手を止めて、俺達に謝ってきた。


「村長さんが悪いわけじゃないよ、悪いのはあいつら」

「そう言ってくれるとありがたいが、メンディの襲撃を許したのは俺達の落ち度だ」


「メンディって何?」


「この村みたいに結界を張ることを、親の敵のように嫌っている連中だ」


「結界が嫌いなの? あんなにきれいなのに?」


 モニカが部屋の窓から見える結界の光を指差した。

 村長がそれに釣られて振り返り、その光をしみじみと眺めている。


「あれが嫌いとは、俺にも理解できないね、だがそういう奴らがいるのも事実だ」


 俺はあいつらが槍を投げ込む瞬間に叫んだ言葉を思い出す。


 ”大陸を汚染する邪王の眷属に死を”・・・・・


 邪王ね・・・恐らく聖王のことだろう。

 それにしてもこの言い回し。


『ひょっとして宗教絡みか?』

「しゅうきょう?」


「俺達からしたら”邪教”だけどな、まったく、結界無しでどうやって生きろというのだ!」


 村長が忌々しげにそう吐き捨てた。

 ”メンディ”の教義がどういうものかは分からないが、結界は弱者がこの環境で安心して暮らすには無くてはならない物だ。

 

「本当なら、こんな村にまで来ることはないのだが、今年は聖王役の司祭が大物だからな」

「あの人ってそんなに凄いの?」


 そりゃ、胸を貫かれて生きてる人間なんて普通ではないだろうが。


「あれでも、若い頃は将来は枢機卿候補なんて言われててな、北部じゃそれなりに有名なんだ、だから狙われたんだろうさ」


 ほう、それは凄い。

 たしかにそれはこの村には不釣り合いな大物といえる。


「・・・・ねえ、ロン・・・枢機卿ってなに?」

『ああ・・・すっごい、偉い司祭様のことだ』


 まあ正確にはこの世界の宗教における枢機卿の価値がよくわからないので、はっきりとは言えないが、それでもかなり偉いのは間違いないだろう。


「・・・つまりすごい人なの?」

「ああ、だから今年はピスキアから護衛のための兵士がたくさん来てるんだが、まさか祭りに気を取られて見逃すとは、まったく!」


 村長が不甲斐ない兵士たちに憤慨する。

 だがスキルを使って凶器をその場で作成と分配されては、ギリギリになるまで一般人と見分けはつかないだろうし。

 ただでさえいつもより様々な人達が集まっている。

 この祭りにやってきている人の中には、既に剣や弓などを持っている人も結構いる。

 彼等の中から危ない人間を弾き出すのは不可能に近いだろう。

 

「おっと、大事なことを忘れるところだった」


 村長が何かを思い出したように話を変えた。

 そして棚の一角から何やら包のようなものを取り出す。

 

 手に取ったときに鳴ったジャラジャラという金属音がその中身が何なのかを語っていた。


「約束していた謝礼金、お詫びとして少し多めに入れておいた」


 包みを受け取ったモニカが中を確認した。

 入っていたのは250セリス。

 

 今まで150セリス受け取っていたので、合計で400セリス・・・

 結局、最初にふっかけた額を丸々もらうことになってしまった。


「いいの? こんなに?」


 モニカが中身にびっくりする。


「いや、怪我までさせてしまったのにその程度しかできないのが申し訳ないくらいだ、ところで怪我の具合はどうだ?」

「ソニアさんのおかげで、もうすっかり治ったよ!」


 すると突然モニカが服を大きくめくり、胸の傷跡を自慢げに見せた。

 

『っちょ!? モニカ何やって!!?』


 慌てる俺。


 だが、村長や他のスタッフはそんなモニカの様子を見て、微笑ましいものを見るような表情になる。


「ああ、良かった、まったく毎年ソニアさんには助けられているよ」


 どうやら、この部屋にモニカの胸を見て変なことを考える不逞の輩はいないようだ。

 それよりも、傷が完全に塞がっているのを確認してホッとしているようだった。


 だがそれでもこの状況を放置する訳にはいかない。


『モニカ早く服をおろしなさい!』

「あ・・・うん・・・」


 いつもより大きな俺の声にモニカが慌てて服を元に戻す。

 今はまだ子供だから問題ないが、これは早いうちに恥じらいを教えたほうがいいかもしれない。


「そうだ、村長に聞きたいことがあるんだった」


 突然思い出したようにモニカが大きな声を挙げる。


「ん? なんだい?」


「この村にゴーレム技術者は居る?」

「ゴーレム技術者? そんなもんに何のようだ?」


 村長が不思議そうな顔になった。


「直してほしいゴーレムが居るの」


 モニカがまっすぐに村長の目を見つめる。


「今はこの村にはいないな、何年かに一度ピスキアから呼ぶことがあるかどうか・・・・」


「わかった、ありがとう」

「いいのか? 本当なら呼んでやりたいが・・・」


 そういう村長の顔は本当に申し訳無さそうだった。


「いいよ、これから行くし」


 モニカの答えはさっぱりしたものだった。

 これで彼女の中での、この村にいる理由はすべて無くなったことになる。


 まだ俺には少し確かめたいことがあるのだが、これも今はまだその人材がいないんだよな・・・



「村長!!!」


 ちょうどそのとき突然、大声を上げながら若い男が飛び込んできた。

 その急ぎ様と表情から、何やら緊急の事態が起こったことが分かる。


「どうした!?」

「昨日、取り逃がした転送使い! 村のハズレの森の中で捕らえました!」




※※※※※



 やはりそれなりの村になるとこのような設備もあるのか・・・・

 目の前には牢屋の格子が並んでいる。



「繰り返し注意するけれど、近づいちゃ駄目だよ」


 村長が俺達にそのような注意をする。

 ここは村の外れに作られた牢屋のうちの一つだ。


 意外なことに、中には多くの者が入っている。

 殆どは祭りの最中にハメを外して喧嘩をしたなどの、簡単な罪の者達だ。


 そういった者達は反省のために入っているので、どこか看守にもゆるい空気が漂い、牢屋の中にも多くの者達が纏めて入れられている。


 一方、その奥では少々毛色の違う連中が収監されている。

 小さな牢屋に一人づつ入れられた、”そいつら”の眼光はこちらを憎々しげに見つめていた。


 彼等が今回の祭りで捕まった”メンディ”の連中だ。

 だがそのラインナップはバラエティ豊かで、一見しただけでは特に法則性のようなものは見られない。


 だがよく見ると全員の目に同じような狂気の光を感じる。

 それは牢屋という環境に入れられたという以上の何かがある気がする。


 だが俺達は彼らもスルーだ。


 一番奥の牢屋・・・廊下の両側に特別に分厚い格子の牢屋がある。

 そしてその片方には、俺達が捕まえた槍使いが腕を鎖で壁に固定された状態で収監されていた。


 だが本題は彼でもない。


 その向かいの部屋にいる女だ。


「どうだ? 覚えてるか?」


 村長が俺達に聞いてくる。

 

 こんな所に俺達がやってきたのは、俺がモニカに強くこの転送使いの様子を見たいと要求するように頼んだからだ。

 名目は俺達が見た者の中にそいつがいるか確認するというもの。


 結果、モニカの恐ろしい粘りの交渉の末に俺達は面会することが可能となった。


 そして目の前の女は、たしかにモニカの視覚ログの中にいた。

 しかもログではラウラに向かってやりを投げている。


『確かに見覚えがある』

「見覚えがある、ラウラにやりを投げてた・・・」


 どうやらモニカ自身の記憶の中にもしっかりとあったようだ。

 その眼光に巨大サイカリウスを見つめていたときのような、冷たい何かを感じる。


「そんな所につながれていい気味」


 モニカがいつもなら言わないような棘のある言葉を、その女に言い放つ。

 だがこれは俺がモニカに頼んだ演技だ。


 

 俺がここに来たがった理由は一つ。


 昨日感じた、俺達のスキルの可能性・・・を検証するためのものだ。

 そのためにはスキル保有者がスキルを使う所を確認する必要がある。


「どういう気分? わたしはピンピンしてるよ? あなたが狙った緑の従者もなんともない 司祭さんなんて昨日のうちに元気になって帰っちゃったってさ!」

「モニカちゃん、その辺にしておけ・・」


「なんで失敗したか分かる? 力の差もタイミングも分からずに無茶したからだよ? なんでそんなことしたの? メンディってバカしかいないの?」


 村長が突然豹変したモニカを止めようと声をかけるが、それでもモニカが止まることはない。

 だが、一方の女は視線をこちらに向けるだけで床から起き上がったりはしない。


 まだ、沸点には届かないようだ。


 ならばこちらも演技のレベルを引き上げるとしよう。

 俺はモニカに新たな指示を出す。


 その指示を受けたモニカが牢屋の格子に飛びつき、大声を上げた。


「あんた達には何にもできない! 今日もこの村には偉大な聖王の結界がちゃんと張っているし! これからもその結界が守ってくれる!」


 ああ、そろそろ台詞が考えるのがきつくなってきた。

 俺もモニカもこういうの苦手なんだよな・・・メンディって何かよく知らないんで”ツボ”もわからないし。

 さっさと怒ってくれないかな・・・


「あんた転送スキル持ってるんだって? そんなものがあるならもっと上手く使えばいいのに! やっぱり頭が悪いと何持ってても一緒だね? それとも変な宗教に入ると頭まで悪くなるのかな? だったらスキル持ってても意味ないね!」


 おや、少し反応があったぞ。

 というかゆっくりと女が立ち上がった。


『モニカ、この調子だ』


 モニカから了承サインが送られてくる。


「この牢屋の中で何が出来るの? それともその使い物にならないスキルで何かするの? 大丈夫? そんな頭ある?」


 すると突然女が腕を伸ばしモニカの胸ぐらをつかんで引き寄せた。

 結果として格子に叩きつけられる事になってしまったが、それでもモニカは決して目を閉じない。

 

 そのおかげで俺はその”決定的瞬間”を逃すことはなかった。



「うっ・・・・」

「おい!!やめろ!!」


 看守の怒号が飛ぶ。

 そして目の前にはどこから取り出したのかわからない小さなナイフ。


 それが俺達の首元に突き付けられていた。


 看守が持っていたものか・・・・

 いや、この反応は村長の物だな。


 どうやら、村長の懐に入っていた小さなナイフを女が自分の手元に”転送”したようだ。


 俺は何かの”力”が空間を引き裂いて、ナイフがそこを通って瞬間移動するメカニズムをまじまじと観測することができた。


 その時、目当ての言葉が俺の口をついてモニカの中に響き渡る。

 どうやら俺の予想したとおりの結果になったようだ。


「スキルをバカにしていると、痛い目にあうよ」


 その忠告にモニカがニコッと笑う。


「ありがとう、肝に銘じておくね」


 転送使いが自分の予想に反してモニカが怖がらなかったのを不思議がる。

 そしてその隙にさっと、格子からモニカが離れた。


 この隙を見逃さぬ身のこなしは流石だ。

 ナイフを突きつけられていたとは思えないほどあっさりと、そこから脱出してしまった。


 そして俺は俺で心の中でガッツポーズを決める。


『よくやった、実験の第一段階は大成功だ!』

 

 俺のその言葉にモニカが満足したように牢屋から離れた。

 

 村長も女も突然大人しくなったモニカを若干引き気味に眺めている。

 そして要は済んだとばかりに軽い足取りで出口に向かう俺達を、不思議そうな目で眺めていた。


 それにしても今回の収穫は大きい。

 俺はたった今獲得した新スキル【転送 lv3】の表示を眺めながら、満足げな感覚に包まれた。



※※※※※



 翌朝


 ミリエスを出発する朝、俺達は日が完全に昇る前に宿の下に降りてきた。

 まだ、誰も動き出していないので辺りは静かだ。


 モニカが宿屋の厩舎に繋がれているロメオの背中に荷物を載せていく。


 こんな時間に旅立とうと言ったのはモニカだ。


 既に5日もこの村にいてしまったので、人が動いている時間に出発するよりも一思いにさっさと行ってしまった方がいい・・・というわけではなく。

 単純に日中の行動時間を最大にしたいというだけの意味しかないのだろうけれど。


 俺はいざ、ここを経つとなると少しさみしい思いが湧いてくる。


 殆ど”聖王の行進”に時間を取られてまともに祭りを楽しむことができなかったが、それでも少し愛着めいたものが湧いていたのだ。


「キュルル」


 旅立ちの気配を感じ取ったのか、ロメオの顔がいつもよりも気合の入ったものになっている気がする。

 そういえばこいつはこう見えて、旅の大ベテランだった。


「チェックお願い」

『うん、問題はないよ』


 旅立ち前の最後のチェックを終えて、モニカが厩舎に括り付けてある手綱を手に取った。


 


「モニカちゃんもう行くの?」


 表の道に出るとそこには待ち構えたかのように、ラウラがそこにいた。


「偶然?」

「いや、待ってた、なんとなく挨拶もなく行っちゃうような気がしてね」


 どうやら、ラウラは最後に俺達を見送りたいようだ。


「ありがとう、傷を塞いでくれて」

「あと、毒消しね、だけどそれだけだよ」


 ラウラが確認するようにそう言う。


「うん、分かってる、怪我は治していない」

「そう、ちゃんと自分の体のことは確認しないと駄目だよ?」


『ぜ、善処します・・・』

「ぜんしょします」


「よろしい!」


 モニカの答えにラウラが満足した様な顔になる。

 

「ラウラは、もうしばらくここに居るの?」

「これが消えるまではここかな」


 ラウラが体の前で組んでいた腕をどける。

 そこには薄っすらと緑色の光が見えた。

 

 治療用の魔法陣がまだその効力を失っていないようだ。


「わかった、ラウラもしっかり治してね」

「わかってるよ、それじゃあ・・・」



「「またどこかで」」






 

 ミリエスの村の南側に出ると、それなりに多くの人が村から出るところだった。

 どうやら、祭りが終了して帰る人が結構いるらしい。


 俺達はその人の波に混じって村を出るときに、ふと空を見上げた。


 そこには俺達・・・が張った結界の光が薄っすらと見えている。

 昨日見たときと比べると、かなり薄くなっているが、それでもしっかりとした結界だ。


 そこに混じる黒い色を見ていると、俺もモニカも心の底から誇らしい気持ちが湧いてきた。


「ピスキアまでは5日だっけ?」

『ああ、ひたすらこの道をまっすぐに行けば着く』


 モニカが真っ直ぐに前を見る。


 そこには俺達がこれから歩む道が、地平線の彼方まで続いていた。


 道の先に大きな山などは見えず、視界いっぱいに平原が広がっている。

 ちょっとモニカの住んでいた氷の世界を思い出す開けっぷりだった。


 


※※※※※※



「今回は災難でしたね」


 豪華な馬車の中で目の前に座る小間使いがそんなことを言ってきた。

 

今回も・・・・であろ? 全く次はもっと安全が確保できる街の担当になりたいものよ」


 それに対してミリエス村で聖王を務めた司祭が、少し憂いを含んだ表情で答える。


「決まりとはいえ、やはり私のような目立つものが”聖王”を務めれば、無用な被害が出る」


 司祭は今回の一件で亡くなった者達の顔を思い出し、目に少し涙を浮かべる。

 特に共に”聖王の行進”を行なった、青の従者の死は彼の心に深く残った。


「それも、逃げるように・・・・怪我人を置いて行くなど!」


 彼が一番憤慨したのはそこだ。

 まだあの場ではまだ多くの者が負傷していたのに、強力な治療魔法を使える自分が直ぐに逃げるように村を立ち去ったことが気に入らなかった。 


「仕方ありません、最前線を退かれた身とはいえ、あなたは失うには大物すぎる」


 小間使いは淡々とまるで事務報告でもするようにそういう。


「何をするかも決められん身では、大物と呼ばれても虚しいだけだ」


「いいえ、まだパトリシオ・アイギスの名は北部には必要だ」


 その言葉に反応するようにパトリシオと呼ばれた司祭が小間使いをギロリと睨む。

 

「気をつけろ・・・アイギスの名は捨てた・・語ることは許されん」


 司祭の目が険悪なものになる。

 だが小間使いはそれにもどこ吹く風だ。


「それでもあなたは国民にとっては、アイギス家の一端を担う存在でしか無い、あなたもそれが分かっているから”あの子”を見逃すのでしょう?」


 そこで司祭の表情がまた変わる。


「・・・・・お前も気がついていたのか?」

「何にです? 偶然教会の中枢で、かつて極秘とされたスキルの名前が頻繁に聞かれるようになったことですか? それともそれと同じ頃、北部の村にひょっこりと現れた、妙に強力なスキル反応を見せる女の子のことですか? それともその女の子の姿がまるで・・・・」


「ローマン!!」


 馬車の内部に司祭の一喝が響き渡る。

 それを言い放った司祭の顔に浮かんでいたのは強烈な怒りだった。


 暫くローマンと呼ばれた小間使いは司祭の顔をじっと見ていたが、ようやく観念したのか両手を上げて降参の合図を送る。 


「分かりました、あなたがあの子に関わらないというのなら、私はそれに従いましょう」

「それでいい」


「ですが覚悟なされたほうがいい、あの子、あの調子だといずれ大きな嵐を巻き起こしかねませんよ」

「どうすればいい?」


 司祭がローマンを睨む。


「まずは、枢機卿に連絡なされてはいかがかと、そうですね・・・・」


 ローマンが顎に手を当てて考え込む。


「まずは ”軍位級以上のスキル保有者を北部で見かけたのだが、教会は認知しているか?” とでも聞いてみましょうか、きっと碌でもないものを引っ張り出してくれると思います」


 ローマンの顔がひどく邪悪な笑みに染まる。

 そしてそれを見た司祭が頭を抱えた。


「はぁ・・・お前の方がよっぽど大物だ・・・」

「いえいえ、私はただのパトリシオ・アイギスの小間使いであり、今は無きアイギス家の家来であり・・・・」


 ローマンの目が司祭の目をしっかりと睨みつける。



「カシウス・ロン・アイギスの最大の信奉者です」


 そう宣言したローマンは、まるでそう宣言することが無情の快楽といわんばかりの恍惚な表情になる。

 結局のところこの男が司祭を支えている理由は、司祭の人柄でも家柄でもなく、司祭が彼が信奉する男の義理の父に当たるからだ。


 そしてそのことは同時に、彼の中で”あの子”の重要度が司祭よりも遥かに高いということを宣言するものだった。


 結局のところローマンがまだ・・・ここに居る理由は、”あの子”の正体についてまだはっきりとしない部分が多すぎるのと、”あの子”の存在自体があまりにも荒唐無稽なせいで混乱しているからなのだろう。


 全てがはっきりとすれば、おそらくローマンは司祭を捨てる・・・

 いや”あの子”のための生贄にするだろう。


 それが分かるからこそ司祭の憂鬱は深みを増す一方だった。


 そして馬車はその不穏な空気を乗せたまま、ピスキアまでの道をひた走る。




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