THE VIBRANT SKY

佐野亮太

THVIBRANT SKY (1)

プロローグ

8年前──地球人は、突如として現れた地球外生命体により、その存在を脅かされた。

彼ら地球外生命体は、地球にある資源を求め戦争行為を行ったのだ。

結果として、地球人は宇宙からの未知の技術に対し、何も出来ず敗戦し、彼らの植民地となることを余儀なくされた。

以来、地球人の約3割が2年に一度彼らの住む星、

『ダイトラーク』へ労働力として連れていかれ、挙句の果てには、地球に戻ることの許可すら得ることができずにいた。

これが西暦2084年9月21日に起きた地球史上初の地球人類と地球外知的生命体との戦争であった。


それから8年経った現在、ダイトラークフランテイク王国領荒廃都市調査区域にて、労働用のワークスーツを着た一人の青年が瓦礫の山の中でぱたりと倒れていた。


「おい!しっかりしろ!大丈夫か!」


一人の男が倒れた青年に駆け寄る。

この男も、青年と同じゴテゴテとした重苦しいワークスーツを着ている。

男が青年のヘルメット部分を開け、呼吸の有無を確かめる。


「自発呼吸に問題なし、…気絶してるようだな腕の骨が折れてるようだが、応急処置をして、後で医療機関に運べば問題はないだろう」


男が救急用の医療キットを取り出し、折れた骨の応急処置をしようとしたときだった。


「貴様!そこで何をしている!油を売っていないでさっさと調査をすすめろ!」


声を荒らげてこちらへ向かってきたのは、フランテイク王国軍陸部第18師団第4期団荒廃都市調査部隊副隊長のアヴィ准尉だった。


「す、すみません!人が倒れていたのでその安否確認と応急処置をと思いまして…」


彼女は男の回答に、不機嫌そうな顔をして嫌味ながらにこう言った。


「馬鹿か貴様、我が隊のワークスーツを着ているということは、こいつも我々の隊員の一人であろうが!IDと身分の確認そして報告が最優先だ!それに、貴様の発音は聴き取り辛いぞ、もう少し語学を学んだらどうだ?全く、これだから地球人は…」


8年前の戦争以来、労働力としてダイトラーク星へと連れて行かれた地球人は、現在までに、第1期団、第2期団、第3期団、第4期団に別れそれぞれ別々の役割を担っている。

第1期団は、フランテイク王国とムガンド帝国による戦争に特攻の派遣部隊として前線に駆り出された。

第2期団は、王国軍の武器や新システムの開発を担当。

第3期団は王国領における地球人の居住区域の開発調査及び住居や施設の建設などを行っている。

第4期団は王国と帝国との戦争により壊滅した王国領の荒廃都市の現地調査を主としている。


「准尉、IDの確認終わりました!どうやら、私と同じ地球人のようですね」


男がアヴィに青年のIDを渡すと、アヴィの表情はより険しくなった。


「これは…こいつが地球人だと…?おい、貴様こいつを医務室に運んでおけ」


そう言って、その場からさっさと去っていってしまった。


「あっ、はい…」


と呆気に取られ、去っていった上司に届かぬ返事をした。






声が聞こえた。声の方を振り向くと、そいつがいた。そいつは、俺に向かってこう言った。


『まずは、お前で試してみるか』


次の瞬間、吹き飛ばされて目の前が真っ暗になった。

目が覚めると、そこには白衣を着た医者らしき男がこちらの様子を伺っていた。辺りを目だけで見渡すと、変わった軍服のようなものを身につけた背の高い女と同じ格好をした目の鋭い大柄な男が立っていた。二人の表情はとても厳しく、こちらを睨みつけているようにも思える。


「目が覚めたようだね。気分はどうだい?ここがどこか分かるかな?」


医者の男がこちらに問いかけてくる。どれほど眠っていたのだろうか、とりあえず気分は最悪なのは確かだし、ここがどこなのか検討もつかなかった。病院にしては少し衛生面が気になる。


「えぇ…と…ここ…は?」


声を出すのも精一杯だ。肺が押しつぶされてるような感覚だし、頭痛もひどい。僕の様子を見て医者らしき男は眉をひそめたが、軍人じみた格好をした二人組の表情は以前厳しいままだ。


「ここは、君が所属している第4期団荒廃都市調査部隊の拠点施設にある医務室だよ。」


僕には、この白衣を着た医者のような男がこのとき何を言っているのかさっぱり理解できないでいた。


「第4期団…?調査部隊…?」


すると、軍人の格好をした女の人の方が僕の体を襟首を掴んで無理矢理引き起こした。その行動に医者男が慌てるがすぐに大柄な男が医者男を制止させる。


「貴様、所属と階級を言ってみろ」


女の人が僕の襟首を掴んだまま、静かに命令してきた。


「かっ…階級っ…て言…ったっ…て…そんなの…知らない…!」


それを聞いた途端、彼女はパッと手を離し、その勢いで僕は背中から強くシーツに倒れた。


「では、貴様の名前を言ってみろ、出身もだ」


その一言で、僕はハッとした。『名前』そう、自分の名前がわからないのだ。出身もよくわからない。思い出そうとしても頭痛が酷くてモヤがかかる。断片的な映像すらも出てこない。


「どうやら、記憶を失っているようだな…隊長、この男をどうしますか?」


隊長と呼ばれた大柄な男は、僕を見たまま彼女にこう言った。


「こいつは記憶喪失だ、一度軍に掛け合ってこれからの処遇を考えねばならん俺達だけでは何もできんよ…上からの指示があるまでとりあえずこいつの軍務は一時的に免除し、監視処分にする。それから、お前の名前やその他の情報だが、お前のIDで確認は出来ている」


隊長はそう言って、胸ポケットから銀色のメモリーカードのようなものを取り出して何かのデバイスに接続すると、ホログラム画像でメモリ内の情報が出てきた。


「地球西暦2085年10月18日地球生まれ、名前はアレン・ハーヴェン年齢は7歳だが、その体つきを見るにお前はダイトラーク人と地球人との間に生まれたいわゆるハーフだ」


地球人、ダイトラーク、ハーフ、わからないことらけで、気を失いそうだった。

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