カロンの谷へ

青羽根

第1話

‪稀代の天才と呼声の高かった友人が突然筆を折り、画壇から消えたのはもう一昔前になる。‬

‪何もかも捨てて引っ込んだ彼のこの田舎家を訪ねるのも、数年ぶりにはなるだろうか。‬

‪極めるほどの才能もなく、美の周辺を未練たらしくうろついて記事を書き散らす半端な私は、未だに彼の事を考える度に、腹の中に蠢くものを感じる。‬

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