灰咲勇兎

夏は死の薫りがする

アスファルトの上で干からびた蚯蚓

最期まで呻き悶え翔ぼうとする蝉

水の在る場所が判らなくなった蛙


夏は死の薫りがする


夏休みの終わりに飛び降りる子供

満員電車にスーツで飛び込む大人

車の中に置き去りにされる赤ん坊


夏は死の薫りがする


茹だるような熱気に酔狂する人々

茹だるような熱気に辟易する人々


夏は死の薫りがする


秋に恋い焦がれ

秋に期待を寄せ

秋に思いを馳せ


あと何回夏が来るのだろうかと

そのことを考えてはいけないと


あと何回死を欲してしまうかと

そのことを考えてはいけないと


夏は死の薫りがする

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灰咲勇兎 @haisaki_isato

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