灰咲勇兎

私は何時も想ふのです。


貴方の膚の暖かさ、貴方の聲の柔らかさ、貴方の瞳の哀しさを、私は何時の日か、此の五感で捉えられなくなるのでせうか。


私は常に未来が恐ろしゅう御座います。


まるで小さな赤ン坊のやうに、私は縮こまりめそヾと泪を溢し不安と戦ふしかないのです。


恋等愛等問題でなく、師等弟子等にもあらず、友も他人もないのです。


只管、痛ひ。只管、恐ひ。


強烈な痛みが永遠に続ひてゐる癖に、私は死ねなひのです。


ですから私に、下さいませ。


貴方の想ふ、ありつたけの、美を、有を、熱を、そして眼差を。


どうかお願ひ致します。


私を、生かして、私を、殺して、そして、唯、手をお繋ぎくださいまし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

灰咲勇兎 @haisaki_isato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る