第67話出ない。出ない。出ない。出ない。出ない……出ないんだヨォォォ!
「あら? エルフなの! 私エルフなんて初めて見ました! しかも可愛い。あ〜ん。この世界に来て良かった〜お父様、この子は養子にしましょう! エルフの妹……これだけで
部屋に入るなり俺を見つけると、そのままこちらに突撃してきて俺を人形のように抱きしめるライアに、みんなは何も言えずにただ見ているだけだった。
「あの〜今から真面目な話があるんで離してもらえませんか?ライア様」
「はうっ! 声まで可愛い……これはもう保存用にどこかで飾っておかないといけないレベルだわ……お母様に相談してお披露目用の服を作ってもらわなくちゃ! 」
あかん……全く話を聞いてくれない。
いや、聞く気すらないよねこの子?
「いい加減にせんか! お前の命を守る為に助けてくれる人たちなのだぞ! それを自分の趣味に巻き込むんじゃない! 」
「でもお父様、この子を養子にすればこの子が『おとうさま。一緒に寝ましょ? 』とか言ってくれんですよ?それを想像して見てください! 」
「それは……その、ありだとは思うが……」
おい伯爵、娘に言い負かされてどうするんだ……あと、こっち見て頰を染めんな。
「そうでしょ? それなら早くこの子との養子縁組を結ばないと……」
『いい加減にしろ、このロリコンが! お前はこのまま殺されたいのか?』
思わず日本語で怒鳴った言葉に、ライアの動きが止まる。
俺はその間に抱きかかえている手を払い、その場に着地するとライアの顔を見て子供に言い聞かせるように説明する。
「いいか? あんたは『この世界の理(ことわり)』に狙われている。理由は異世界転生者だからだ。この世界において異世界転生者は世界の敵であり、抹殺対象なんだ。それが分かったら、俺たちの話を聞いて自分で自分の未来を決めるんだ」
「…………! 」
俺の言葉の意味を分かったのか、それとも命が狙われているという事に恐怖したのかライアの動きが止まる。
これでようやく本題に入れる……
「なんて事なの!悪徳令嬢かと思っていたら勇者物だったなんて! 私の婚約者達はどこにいったの! 」
……こりゃ駄目ですわ。
「なるほど。私達はその世界の守護者に狙われているという事ですね。そうなると、確かに戦力は出来るだけ確保したい……と。分かりました、私も覚悟を決めましょう。それで……世界の守護者とはどのくらいの強さなのでしょうか? ジルアちゃんの話だと追い返すのに精一杯といった感じですけど? 」
何とか話を進める事が出来たが、思ったよりは頭が良いようだ。
現状把握は終わったが……そうだな、この間の戦いも防戦一方って感じだしな。
「そうだね。正直あの時は相手もこちらの戦力を知らなかったから追い返せたけど、次に会う時には対策を立てられているだろうしね……正直、勝てるとは言えないかな」
「そうですか、だったら私のユニークスキルとアクトさんのユニークスキルを聞いてもらってから考えましょう。私のユニークスキルは【屏風乃虎】私が創り出した無地の屏風と筆で描いたものを実体化させる事が出来るスキルですわ。屏風は1日1枚創れますし、その屏風は時間が経っても無くなりません。ただし、絵を描いた屏風は絵を実体化させると消滅します。現在3枚程創り出したままの屏風がありますわ。それにあの完成度によって、出てくるものの能力も制限されますわ」
これは……使い方によってはかなり強力なスキルだな。
でも戦闘中には描く余裕もないだろうし、ある程度罠のような使い方になりそうだな……
「次は俺の番か……俺のユニークスキルは【自宅警備】……言っとくけど前世も今もちゃんと働いていたからな。能力は自分の知っているものを創り出す事。今回はダンジョンだったが、他にも家やお城なんかも創り出せる。ただし、ダンジョン以外は俺が見たものでないと創り出せないから、外見しか見てないものはハリボテみたいになるな。ダンジョン型なら色々改造出来るから1番創りやすいのは確かだ。あとダンジョン型だとモンスターも創り出せる。これも俺が見たことあるモンスターまでだな」
こちらも創作系のスキルだな。
こちらは臨機応変に使えるから対応し易いけど、アクトが見たことあるモンスターまでなので少々力不足なところもあるな……今度どこかの魔境にでも連れて行くか。
「2人の能力だとライア様には強力な罠になるような物を創ってもらっておいて、アクトにはそれを自分のダンジョンに効率よく配置してもらう感じにしてもらえば良いかな? ちなみにアクトのダンジョンはいつでも創れるの? 」
「あぁ……出入り口さえ創れば俺が創ったダンジョンに繋がれるからな。出入り口は3つまで使用可能だ。それ以上は3つのどれかを破棄しないと増やせないな」
どうやらこの間創ったダンジョンはまだ残っているみたいだ。
「ちなみにお酒で気を失ったら私達は外に出されたけどあれはどうしてなの? 」
「俺の意識が無くなるとダンジョンを具現化させておく事が出来なくなるんだ。だからこの間もギリギリだったんだよ! そこのオカマに丸2日近く襲われてな! 」
マロンさんを睨むアクトだが、マロンさんからウインクを返され撃沈する……この世界、地元の人の方がよっぽど強いよね。
「これで全員の力が分かったみたいだけど、どうやって世界の守護者と戦うつもりなの?ジルアちゃん」
セシルが不安そうに俺に聞いてくる。
今のままだと勝ち目がほとんど無いからな〜さて、どうやってあいつを倒すとしようか……
「とりあえずはアクトとライア様はレベル上げだね。相手は強敵だし、何よりステータスが低いとすぐ死にかねないしね。そう言うわけで伯爵様、ライア様を少しお借りする形になりますけど宜しいですか? 」
「命に関わる事だし、エルフの姫もついていてくれるのだろう? ならばこちらからお願いする……頼んだぞ」
「私もやっと冒険者デビューなんですね! これは執筆活動に役に立ちそうですわ! 」
本当にこれでいいんだろうか?
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