第66話やはりソシャゲの花はガチャなんですが、確率が見えてしまうと思う事が出てきますよね? 海外なんかでは凄い言われようだとか

「ば、馬鹿な……この領地に異世界転生者が3人……しかも、異世界転移者だと ⁈ 」


「ひぃぃ ⁈ 」


 ふるふると震える拳を勢いよく壁に叩きつけるタバサ伯爵に、俺は思わず驚いてしまい悲鳴をあげてしまう。


「みっともないな伯爵殿、男がそのような姿を女性に見せるものではないな」


 俺を横から支えるようにさり気なく移動してきたマロンが真剣な表情で、タバサを非難する。


「す、すまない。少々動揺してしまったようだ。エルフの姫にもはしたない所を見せてしまった……」


 多少は落ち着いたのか、息を落ち着け冷静になろうとしているタバサはこちらに謝罪の言葉を掛けてくる。


「え、えぇ。こちらも問題ありません。ですが、そう言う事ですので近日中にはこの土地から出て行こうと思いますので今までどうもありがとうございました。」


 俺はこれ以上拗れる事を恐れて、この場を去ろうとする……が、いつの間にか俺の正面にまだ来ていたタバサに両肩を手で押さえられる ⁈


「ジルア殿……貴女は以前『あれ』と言う言葉を濁した相手と、この街にまで届く程の激しい音や光を放つ程の『何か』をしたと言っていたが、それは『世界の守護者』と戦い『撃退』したと取ってもも良いのだろうか? 」


 何かすがるようなタバサの目に、俺は言い知れぬ何かを感じて無言で頷く。


「そうか……そうなのか、世界の守護者はこの場所にまで手を伸ばしていたのか……」


 そう言うと、タバサは力が抜けたのか、ソファーまでよろよろと歩き、体を投げ出すように座り込む……やはり、貴族の上位の人達はあいつの事を詳しく知っていたか……


「エルフの姫よ……お願いがある」


 その体勢のまま、タバサは目から涙を流しながら俺に懇願するように話し掛けてくる。


「君達が此処にいる事を認めよう。その代わり……私の娘も守ってくれ……私の娘、ライアも異世界転生者なのだ……」


 応接室が真の静寂に包まれ、その言葉の後にその静寂を破る者はしばらくの間は現れなかった……







「何だと……それじゃあ、ライアもその世界の守護者に狙われているって事か! 」


 マロンの唸るような言葉にようやく静寂が破られ、俺達も我に返る。


「マロンさんもライア……様の事はご存知なの? 」


 流石にタバサの前で娘を呼び捨てにするのは不味いかと思い、様をつけたが嬢の方が良かったかな?


「あぁ……俺がテンカの元で冒険者になる為の修行をしていた頃に、館を飛び出していた所を偶然出くわしてな、俺も伯爵の娘とは当時は知らなかったから色々面倒を見てやってな……気が付いたら懐かれていた」


 苦笑しながらも当時の事を思い出しているのだろう……優しそうな表情でこちらを見ている。


「しかし、俺の知る限りそんな変わった所は見受けれなかったぞ? 伯爵様、何時頃彼女は『覚醒』したんだ? 」


 どうやら覚醒という言葉が記憶の戻る事だと気づいた俺だが、伯爵の告げる次の言葉に俺達は思わず突っ込んでしまう」


「あぁ……ここ1ヶ月前ぐらいの事だからな。娘がいきなり『伯爵の娘っていう事は悪徳令嬢なのかしら? お父様、今悪い事をなさっているのなら今の内に私に言ってくださいね? 私も今から一般市民に溶け込めるように頑張りますから』などと訳の分からん事を言い出してな……」


「「「それ間違いなく日本人だ! 」」」


 俺とアクトとセラが思わず突っ込んでしまう状態に、他のみんなが驚いてしまう……シロはどうも分からなかったのか首を捻っていたが。


「な、なるほど。それは間違い無く異世界転生者ですね……伯爵様、世界の守護者は異世界転生者の位置でも探せる方法でも知っているのですか? 」


 動揺しながらも何とかあいつの情報を少しでも集めるべく、俺はタバサに質問するがタバサは首を横に振りながら答えてくれる。


「どうやって知るのか方法までは分からないが異世界転生者が集まる所には確実に現れるらしい……それに奴が異世界転生者を見逃す事は今までなかった事だ」


 あちゃ––やっぱりそこまで上手くはいかないか。


 だとすると、あいつは復活すると間違いなくこの街に最初に来るだろうな。


 そうなると伯爵の娘のライアも狙われる事間違いないだろう……


「伯爵様、予定変更です。このアクトをライア様の護衛に雇いませんか? このアクトの能力は時間を稼ぐことにおいては他の誰にも真似出来ない程の力を持っていると言ってもいいでしょう。アクト、貴方もここにいれば私達があいつから何とかしてあげるからここに雇ってもらいなさい。あと、貴方のユニークスキルについてもライア様に来てもらってから話してもらうから。伯爵様、私に出来る事はここまでです。雇うかどうかは貴方の判断にお任せいたします」


 俺は一気に言い終わると、伯爵の返答を黙って待つ事にする。


 アクトが狙われているかどうかまでは知らないが、あいつの姿が異世界転生者を始末する姿を見ているのなら出来るだけ力が欲しいはずだし、タバサとしても同じだろう。


 何より、俺達が世界の守護者から守る為の力として手に入るしな!




 少しの間考えていたタバサだが、考えがまとまったのかスッキリとした表情で立ち上がると俺の前にまで来て話し始める。


「そうだな……アクト君と言ったかな?彼を私の娘の護衛として雇うとしよう。ただアクト君……娘には手を出さないようにね。それでは娘を呼んでくるとしよう。済まないが少々ここで待っていてくれ」


 そう言うと、タバサは娘を呼びに部屋を出て行く。


「ジルアよう……お前何気に俺を売り飛ばすなんて酷くはないか? 」


「何言ってるんだ? アクトもこのままじゃ不味い事は分かっているだろ? 伯爵のお墨付きが貰えるなら安全さが全然違うじゃないか」


「それはそうだけど……絶対ライア嬢って普通じゃないだろ。俺一体どうなっちまうんだ……」


 アクトの愚痴を聞きながら待っているとようやく部屋の扉がノックされ扉からタバサとかなり若い女性が一緒に入ってくる。


 かなりウェーブの掛かった赤毛を背中まで伸ばし、鋭いの青い目には強い意志を感じる。


 全体的に女性らしい体をしているが目つきの所為か、かなりきつめの印象を受ける。


「待たせたな。私の横にいるのがライアだ。ライア、この人達はお前を守る為に力を貸してくれる人達だ。挨拶をなさい」



 こうして俺達とライアとの初めての邂逅が行われたのだった。

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