第21話戦略型の課金ゲームは対人戦が多いから無課金には辛いよね。続けられる人はやっぱMなのかな?

 俺の魔法による先制攻撃により、戦端が開かれた。

 両軍がぶつかり合う頃には俺は相手の後方にしか魔法を打てず両軍が入り混じるようになってからは魔法が打てなくなってしまった。

 俺の魔法、無差別爆撃に近いからな。

 こんな状態だと使えない。

 地球の戦略ミサイルに近いな。

 ともあれゴブリンを三千程は焼き殺したので取り敢えずはいい感じ。

 MPも多分半分くらいはあるはず。

 ステータスにHPとMPが表示されないので体感でしか分からないのがもどかしい。


「ご主人、やり過ぎです!周りのみんなが引いてるじゃないですか!何ですか、あの炎の矢は!何処の大魔術師なんですか貴女は!」


 シロの突っ込みが激しいな。

 どうやら今日のシロの調子は絶好調らしい。

 これなら世界を狙えるな。


「何黙っているんですか?あちらの指揮官なんてご主人見ただけで震えあがっているじゃないですか!せめて人間らしく振舞ってください!」


「俺エルフだから人間じゃないもん」


「貴女をエルフの基準にしたら全世界のエルフに怒られます!」


 カルシウムが足りないのかな?こちらの世界にコネッコあるかなぁ?


「貴女一人で約三分の一は倒してるじゃないですか。このままじゃこの国に祭り上げられてしまいますよ?それで王子様の婚約者とかになって…あれ?それっていいかも?」


 シロが変な事を考え出したので戦況を観ることにする。

 騎士団千人はゴブリン本隊を良く防いでいる。

 残り五百の傭兵団も騎士団の左右から攻撃する事でゴブリンの数をよく減らしている。

 後は冒険者ギルドの精鋭三〇〇の奇襲が成功するか否かだ。

 残り二百は予備戦力らしい。

 街の中では民軍が準備しているがこれは最終戦の場合と考えていいだろう。





「冒険者達の奇襲が始まったぞ!」


 その声に俺は東の方を観る。

 ギルマス自らが先頭に立ち、矢の形となって敵の本陣に突き進んでいる。

 カルパスさんとクレアさんは指名依頼の為不在。

 マロンさんは護衛任務の為不在。

 ギルドの最高戦力達が不在の中よく頑張っていると思う。







 冒険者の矢が本陣に後少しで到達しようかという時にそれは起こる。

 敵の本陣から3mを越す巨大なゴブリンが百体程現れ、その後ろに王冠を被った2mを越すゴブリンとその左右に杖を携えたゴブリンが出てきた瞬間、ゴブリン達の戦意が一気に高まる!先程までバラバラだった行動がはっきりと分かるほど統制されている。

 こんなに遠くにいる俺の危険感知でも感じる程ヤバイ状況だ。

 これはもう遠慮していると死ぬ!


「シロ、今から敵のど真ん中を突っ切る。俺の護衛として守れ!攻撃はしなくていい。俺の近くに敵を寄せ付けるな」


 シロは顎が落ちそうなぐらい口を開く。

 俺は凶月を戻し、「ヴァーミリオンスタジアム」で俺が作り上げた中で一番大きく、一番頑丈な競争獣を呼び出す。


「頼むぞ!鋼龍出番だ。お前の突破力を俺に貸してくれ!」


 全長30mを超える巨大さ、鋼で出来た鱗、その重さと力による突破能力。

 速さは無いがあらゆるものを退け突き進む。

 ブレスや魔法は使えないがその体力は上位竜にも勝る。

 超重量級に於いて俺が考えたコンセプトの重い、力強い、硬いという競争獣としてはどうなんだと思う競争獣だが、俺はこいつで超重量級の競技で三位になったことがある。

 トラップだらけの競技場をただ前にだけ進み、全ての罠を耐えきりゴールした。

 俺にとって無課金の誇りを見せてくれた騎獣だ!


「グルルルルルルルル!」


 俺の姿を見て喜ぶ鋼龍に乗り、命令する。勿論命令は一つだけだ。


「真っ直ぐ行ってぶっ飛ばせ!」


 この言葉のみで全てを分かってくれる。この言葉だけでこいつは全てを成し遂げてくれる。


「ガゥゥァゥゥゥァ‼︎」


 空を裂かんばかりに吠え、前に進み始める鋼龍。

 動き始めは遅い所はあるがスピードが乗れば、それは凶器となって立ち塞がる全てを粉砕する!


「あわわわわわ!」


 いつの間にか乗っていたシロを手繰り寄せ俺は大声で前にいる騎士団達に命令する。


「全員退避しろ!全て踏み潰す!」


 俺の言葉に振り返り、左右に分かれていく騎士団。

 その間のスペースをゴブリン共を踏み散らかして俺達はゴブリンキングの元に行く。

 俺たちの通った後には血の跡しか残らない。

 俺達を止めるつもりなら死ぬ気で来てもらおう!




 しばらくして本陣に激突する。

 ここのゴブリンは鋼龍を見ても退かない。

 それどころか上にいる俺達に向かって来る!矢を放つゴブリンに石を投げて来るゴブリン。

 数が多すぎるので(ウォータ・アロー)の水圧で弾き飛ばして行く。


「あわわわ!」


 シロは両手のトンファーを回転させながら矢を弾き、石を弾く。

 凄いな!あわあわ言いながらも俺を守ってくれる良い子だ。

 その間にも鋼龍は前に前にと進み、遂に冒険者達と合流する。



「怪我人はいるか⁈」


「「「何とか生きてるよ!」」」


 俺の叫びに円陣を組んだ冒険者達から声が掛かる。

 円陣の中には重傷者がいるようだ。(ヒール)を飛ばして回復させる。


「な、何だありゃあ⁈」


 冒険者達の悲鳴が聞こえる。

 その視線の先を見てみると、鋼龍の前方にスクラムを組んだ大きなゴブリン達が迫って来る!


「鋼龍!踏ん張りどころだ!奴らにお前の力を見せてやれ!上位竜とも互角と言われたお前の力を振り絞れ!」


「グガァァァァァァァアア!」


 肯定の叫びとともにジャイアントゴブリンともいうべきゴブリン百体に鋼龍一体で立ち向かう!ここからは力と力の勝負だ。

 俺は俺の信じる鋼龍に全てを任せる!







「「「ズヴォォォォォォォォォォォ」」」






 両者のぶつかる音が聞こえる前に衝撃波で周りのゴブリン達は吹き飛んで行く。

 俺とシロは抱き合いながら鋼龍の背中に何とかへばりついてる状態だ。

 今の所ゴブゴブのようで、鋼龍とジャイアントゴブリンのがっつり組み合っての押し合いだ。


「ギャオオオ⁈」


 突然鋼龍の悲鳴が響き渡る。

 横から杖を携えゴブリンキングの隣にいたゴブリンが魔法を鋼龍にぶつけて来たのだ!鋼龍は下位の龍種の為、他の龍のように魔法に対する抵抗力があまり無い。

 その身を焼かれ、裂かれる鋼龍だが、その力を緩めることはない」


『男と男の勝負に横から手を出すんじゃねーよ‼︎』


 俺は怒りと共に鋼龍から駆け下り、中級剣術の(パラレル・ドライヴ)を発動する。

 四人に分かれた俺達が前後左右から魔法を使ったゴブリン達に襲い掛かり無数の剣戟が相手をバラバラにしてしまう!


「男なら正々堂々と戦う奴の邪魔をするな!」


 ショートソードを振り、血を払いながらサイコロステーキになったゴブリンに俺は呟く。


「ご主人は幼女なんですけどね」


 うるさい。

 お前の方が年下だろう。

 エルフをなめんな。






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