第19話課金ゲームのお年玉は遊ぶ人の為のお年玉ではなく運営の為のお年玉だと思うんだ

 伝説のエルフのパンツを求めて俺は旅立たなくてはいけない。

 エルフの国は滅び、エルフの住む場所が分からない今、俺はエルフ奴隷持ちの貴族を滅ぼす事しか出来ないのではないか?


「そういう訳で貴族を探しに行こうかと思います。店主さん、情報ありがとございました」


「うん、ちょっと待とうか。このままじゃ私が戦犯にされかねないし」


「ご主人!私、防具がとても欲しくなりました!ここの防具がとても欲しいです!」


 シロが何故か急に張り切り出した…そうか、俺の為に家族と戦う事を選んでくれたか!だったら良い防具を探さないとな!


「店主。お願いですからどんな手を使ってもエルフの下着を見つけてください。さもないとこの国が傾きます。この人本気出したらどこまで出来るか想像がつきません」


「はぁ。分かったよ何とかしてみよう。私が言い出した事だしね」


 防具屋の店主がツテを使って探してくれるそうだ。

 俺としても情報がないから動きようがなかったしね。

 それじゃあ気分を変えてシロの防具を手に入れましょう。


「シロはどんな防具が欲しいのかな?」


 シロに尋ねてみると自分の体を確認しながら防具に対して注文をしてくる。


「まずは足は膝から下まではある程度頑丈な方が良いですね。よく蹴りますし。手も手甲のような感じで。後は軽い方が良いです。余り重たい物は持てないなで…そのくらいですかね」


 意外とシンプルな構造になりそうだ。

 店の店主はシロの手足を触りながらどの程度の重さまで行けるか調べてくれている。

 シロの力は一般人程度なのでかなりの軽量化がいりそうだ。


「ブーツに鉄板を仕込みたいが今の力だと無理だな。足先だけ鉄板で補強しよう」


 店の店主はシロの能力が分かっているようだ。

 シロと店主との話の詰め合いになると俺には何も出来ないので店の中を見てまわる。

 良い物もあるが今の装備から買い換えるほどではない。

 しばらく見ているうちにひとつだけ場違いな防具がある事に気がつく。

 地球でトンファーと呼ばれていた武器なのだがどうしてこんな所にあるのだろう?


「お待たせしました。ご主人…何見てるんですか?」


 装備の見繕いが終わったシロが俺の手にするトンファーを見る。

 目を輝かせて見ているが知っているのだろうか?


「シロ。これが何か分かるの?」


 俺の言葉にトンファーを持ってくるくると回転させるシロ。

 扱いが上手だな。

 奥から店の店主も出てきてシロのトンファー裁きを見て驚いている。


「凄いな。私には防具としてしか分からなかったがシロちゃんは攻撃にも使えそうだ」


 俺も同感なので値段を聞いてみる。

 お気に入りのようなので値段が合えば買ってもいいな。


「それなら銀貨十枚でいいよ。昔知り合いに頼まれて作った物だから。誰も扱えなくて困ってたんだ」


 店主がそういうので一緒に買う事にする。

 シロに聞くと「これを持った途端、何故か血が騒ぐんです」と言うから魂にでも刻まれていたのだろう。


「全部で金貨二枚と銀貨十五枚でいいよ。シロちゃんはしっかりしていたから私も楽しかったよ」


 そんな格好いい店の店主。

 実は鉄クラスと言うから驚きだ。

 歴戦の戦士が見てくれた防具だ。

 きっと役に立つだろう。


 支払いを終わりシロの装備を見てみる。

 手足の装甲は虫の魔獣から削り出したものらしい。軽くてしなるのでシロにはぴったりだ。

 上半身はトカゲ系の皮で作っておりライダースーツみたいだ。

 伸縮性を重視しているので体の動きを阻害しないのだと聞いている。

 下半身は牛の皮で作られたレザーパンツだ。

 柔らかく弾力がある為走ることが多いシロにはぴったりだな。


「これでホブゴブリンにも時間稼ぎが出来そうです!」


 そんな健気なシロに今日は食堂でご馳走を用意した。

 これで肉盾として頑張れるな。

 トンファーは腰にトンファー用のホルダーをつけてもらっている。

 さて、明日からは頑張って仕事をしよう。


 フィリさんお得意先の食堂でご馳走を食べ宿屋へと戻る。

 最近街の子供がこっちをじっと見てるんだがあれは何なんだろう?宿屋でクリアを二人纏めて掛けてご就寝…と言う訳にはいかず、現在二人で話し合い中である。

 議題はこれからの行動。

 俺は伝説のエルフのパンツを探すのが第一なのだがシロには気になる事があるらしい。


「この国に来るまでに何処かでエルフの集落を見た気がするんですよ。ただ、どの辺かまでは覚えてないので…」


 こんな近くに情報源があるとは!しかし曖昧過ぎて探すのが難しい。

 エルフの一人や二人何処かに転がってないかな?


「後、言うまでもないですが私は追われていましたので何時また襲われるか分かりません。今までの追っ手でご主人に勝てそうな人はそういないと思いますがなんせ相手は暗殺者ですから」


 確かに暗殺者は俺には荷が重い。

 察知系のスキルが低すぎる。


「やっぱり日々の生活でレベルを上げていくしかないか〜」


 俺はそう言うとベッドに寝転ぶ。

 シロが何かに気づいたようだ。


「そう言えばご主人、職業にレベルがなかったじゃないですか!」


 シロの言葉にそういえばと思いだして確かにレベルが無いのに気がつく。


「ご主人のステータスはおかしいですからね。他にも色々変な所がありましたし…」


「まぁ戦えるから問題ないよ。そこそこ戦えるから何とかなるでしょ」


 あまり突っ込まれたくないので適当に返事をする。

 異世界転移者は確か一人だったんだよな。

 でも異世界転生者は何人いるか分からないしな。

 そんな話をしながら就寝する。お休みなさい。

 シロとベッドは一緒だよ?







 夜明け前から鐘が鳴り響く音が聞こえる。

 街の中はまだ朝には早いのに多くの人が起きて荷物を纏めたり、出る用意をしているようだ。


「シロ。何があったか分かる?」


 俺が状況が分からないのでシロを外に出して情報を確認させたが、戻ってきたシロの顔は強張っている。

 どうやら想像以上のピンチみたいだ。


「ご主人…最悪です。どうやら近くにゴブリンの王が誕生したようです」


 ノクターンの出番ですね分かります。

 どうやらこの街はゴブリンに侵略されそうだと今更ながら気がついた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る