青春・恋愛なんていらないから平穏な日常が欲しかった俺は変わっていくのかもしれない
平涼
第1話 俺は変わるのかもしれない
俺
それは本の新作が買えたからである。ずっと待っていた本が買えるというのは本当に嬉しいものだ。俺はハイテンションでスキップしながら帰っていると、
「キャ!」
俺のテンションは一気に冷めた。一体なんだ。俺はそう思いながら声がした路地裏を見る。
そこには複数の男が金髪の女を襲うとしていた所だった。
.....帰ろう。
俺はそう結論付け帰ろうとした所だった。だってあれは絶対に関わったらいけない奴だ。揉め事にあうのは間違いない。
それにあの金髪の二人に見覚えがある。基本俺は人を覚えない人だがあれだけは覚えている。あれは俺と同じクラスメイトだ。
駄目だ。嫌な予感しかしない。そうだ。それに俺には家で待っている妹がいる。あいつの為にも俺は早く帰らねばならない。
そう自分に言い訳をして帰ろうとした時だ。
「誰か!助け」
その言葉を言い終わる前に男に口を塞がれたようだ。
.......ああ!くそ!めんどくさいがしょうがない。
「お巡りさん!こっちです!こっち!」
俺はカバンで顔を隠して指を路地裏に指して、大声で叫んだ。仕返しが怖いから顔を隠したわけではないぞ。無意味な暴力を嫌っているだけだ。
「クソ!あとちょいだったのに!逃げるぞ!」
その男の声と共に不良のような連中は逃げて行った。
俺もあいつらが帰った所で俺も帰ることにした。
「ちょっと待って!」
すると、金髪の一人に止められた。
「どうした?」
「お巡りさんは?」
「あれは嘘だ。俺の実力じゃ倒せないしな。ああ言うしかなかったんだ」
俺はそう言って改めて帰ろうとすると、
「誰か分からないけど助けてくれてありがと!」
そう言ってお辞儀した。
......俺クラスメイトなんですけどね!
そんな言葉を言わないであげた。なんせ俺はクラスでもボッチだ。逆に覚えられているはずがないしな。
「気にすんな」
今の言葉は自分でも少しカッコイイんじゃないかと思ってしまった俺は間違ってない筈だ。
そう思いながら家に帰るのだった。
「ただま」
俺はそう言ってリビングに行くと、パジャマ姿の妹、
「お兄ちゃん。ただいまも言えなくなったの?」
テレビを見ながらお菓子を食っている妹が俺を見ないで言う。
「あれは長いからこれでいいだろ」
俺はそう言いながら冷蔵庫にあるアイスを食べながらテレビを見る。
「そういえば今日ちょっと遅くなかった?」
「ああ。ちょっと面倒にあってな。本を買うだけのつもりだったんだが」
「へえ。珍しいね。お兄ちゃんがめんどくさい目に合うなんて」
本当にめんどくさかった。もう本だけが俺の友達だ。
俺はそう思いながら本を見ようと思った所で気が付いた。
「本落した!!!!!!」
「うるさいわ!」
最高の一日は最悪の一日となってしまった。
だがここから吉条宗広の人生は変わる事は未だ知る筈も無かった。
俺は学校でボッチだ。だが俺はこれが悪いとは思わない。中学の頃は普通に友達もいた。だがめんどくさかった。休憩時間になると常に話す。そして休日は遊ぶ。俺はそんな人生がめんどくさくてしょうがなかった。本があればそれだけで良かった。
周りから見れば調子乗んなと言われるかもしれないが、しょうがない。これが俺だからだ。だから俺は高校では誰とも話さずボッチだ。
幼馴染もいたが、小学三年生の頃親が離婚してそれから引っ越して疎遠になり明るい幼馴染なんてものもいない。そんな普通のボッチの高校二生だ。
......だった筈なんだけどな。
「それこっちに持って来て」
「分かった」
そう言いながら部屋に荷物を持って入る二人の金髪の女。
「ちょっと。吉条も手伝ってよ!」
.......ほんとどうしてこうなった。
~その日の朝~
俺は本を落として、相当テンションが下がっていた。
絶対にあの時だ。俺が昨日助けた金髪のせいだろう。俺は金髪を許さない。
俺はそう思いながら教室のい入る。
すると、教室には俺が助けたであろう金髪の二人もいたがリア充のような男達と話していた。
あいつら昨日あんな目にあったが明るい様子だ。だが金髪の染めたであろう一人は少し一歩引いている姿勢だ。やはり昨日の事が残っているのだろう。
そう思いながら自分の席に座った。
するといきなり俺の後ろから話しかけられた。
「ねえねえ」
これ俺に言ってるわけじゃなさそうだ。俺の名前はねえねえではない。
俺の思い過ごしだ。
中学の頃もこんな事があった。
俺が話かけられたと思い後ろを振り返り何?と聞くとえ?と返ってきた。
あれ以降勘違いの広と言われるようになったのを覚えている。
あんな真似は絶対にしない。
「ねえ。ねえてば!」
俺は頭を叩かれた。
「痛い!」
俺はそう思いながら後ろを振り返る。そこには昨日助けた二人がいた。
「呼んでるんだから返事しなさいよ!」
何だこいつ。ツンデレが似合いそうな奴だな。俺はそう思いながらも口にしたらどうなるか分かったもんじゃないので言わないでおく。
「俺に言われると思っていなかったんだ。それよりどうした?」
早く要件を聞きたい。なんか周りからとても見られている。それもそうだろう。この二人は美人で相当目立つ。正直に言うと要件を聞かずに立ち去ってほしいぐらいだ。
「昨日もお礼を言ったけど改めてお礼を言おうと思ったのよ。ありがと」
そう言ってもう一人もお辞儀してお礼を言った。
「ありがと!」
「だから気にするなって。偶々助けたが次は知らんからな」
俺はこれで終わりかと思ったが違うらしい。
「それとこれあんたの?」
そこには俺が昨日落した筈の小説があった。
「これ!探してたんだ!ありがとな!」
金髪最高だ。金髪許さないとか言ってほんとごめんなさい。
俺は心で謝罪する。
「あんたって金髪好きなの?」
その人がニヤニヤしながら聞いてきた。
「ち.....違うわ!偶々だ!」
俺は慌てて弁明する。そう決して金髪が好きなわけではない。俺はどの髪型も好きな男子だ。決して金髪が好きなわけではない。
「ほんとかな?」
そう言いながら二人で笑い出す。
「この金髪ビッチが」
俺はぼそっと言うと、二人が笑いを止めてこちらを睨んできた。
どうやらこいつらは耳が良いそうだ。
「今なんて?」
一人の金髪が笑ってない笑顔で聞いてきた。
「可愛いらしい金髪って言ったんだ」
「......え」
「騙されたら駄目よ!こいつ今失礼な事を言った筈よ!」
二人の内一人が驚きの声をあげる。
どうやら誤魔化せたかな。俺は内心冷々してやばい。
「ほれ。もう戻れ。お前らと話していると周りからめっちゃ見られるんだよ!」
俺はもうぼろが出ないようにそう言ってこいつらを帰らす。もうほんと皆から見られてるんだよな。
「ちょっと!あんた私達と話すのが嫌だって言うの!?」
今までそういう経験が無いんだろう。そんなものは知らん。
「大迷惑だ。周りを見てみろ!めっちゃ目立ってるじゃねえか!本を返してもらったことには感謝しているが助けたのでチャラだ!」
そう言って俺は改めて戻ってきた本を読むことにした。
周りからぼそぼそ言われているが知った事ではない。
~放課後~
俺は早く帰って小説の続きを見たい。なんたって良い所で終わったのだ。あれから主人公がどうなるのか気になってしょうがない。
俺はすぐに帰る支度をし、帰る所で、
「ちょっと」
俺の目の前には金髪の二人がいた。
「はあ。またか、今度は何だ?」
「今は放課後なんだからいいじゃない。それより付いてきて」
「なんだ?告白でもするならここでお願いします」
「馬鹿じゃないの?」
そんな軽口を叩きながら来たのは職員室だ。何でこんな所に。
そう思いながらも金髪の二人は入っていく。
「妙先生、ちょっと用事があるんですけど」
二人が呼んだのは俺らのクラスの担任である萩妙先生だ。
この人はある所では三十代に近づいて結婚を焦っているとも噂がある人だ。
「あら、どうしたの?」
「部活を作りたいんだけど」
「タメ口は止めなさいと何百回言えば気が済むのよ」
「それよりも部活」
「無理よ。あれ色々めんどくさいのよ。やるのが私なんだから嫌」
俺はその会話に置いてけぼりだった。何で部活を作るのに俺がいるのか全く分からない。
「先生。お願いよ。いいじゃんそんぐらい」
二人は抗議するが先生は嫌らしい。しかも先生の無理な理由がめんどくさいからだから凄い。気持ちは分かるが。
すると、二人は顔を見合わせ頷いた。
「先生。これ見てください」
すると、何やらスマホを先生に見せる。
それに先生は驚愕する。
「これに招待してあげてもいいんですけど。先生が私達のお願い聞いてくださらないなら」
何やら取引が行われているらしい。俺の予想では婚活パーティーの招待状とみた。
「よし。分かった。いいだろう。しかしメンバーは三人以上が必要だがここの三人でいいのか?」
......ここにいる三人?それって俺も含まれてませんかね?いや、含まれてますね。
「いや。俺は入らんぞ。絶対に入らん」
ここははっきり言っておかないと、後々流されて入らないといけないやつだ。
「こう言ってるんですよね。どうにか出来ませんか?先生」
金髪の一人がスマホをぶらぶらさせながら先生を脅す。
俺は何でこんな不良娘を助けたのだろうか。ちょっと後悔してしまう。
先生が俺の方を向いて何やら考え出す。俺は絶対に屈しない。何があっても。
「そういえば、吉条は就職希望だったよな?」
確かにその通りだ。俺は母が離婚してそこまで稼いでいない。なので大学に行くお金はない。
「そうですけど」
「部活に入った方がいいんじゃないか?」
「どうしてですか?」
「入学した時にも話したが、就職を希望したものは部活に入ってると、それだけで有利なんだ。それに私の方でもなるべく君が就職したい場所に入れてあげようじゃないか。」
おっと。この人説得が上手すぎるだろ。簡単に屈してしまった。
「分かりました。入りますよ」
どうせ幽霊部員になるし俺には関係ない。
そう思い話は終わったので職員室を出ようとすると、
「幽霊部員だと逆に内申下がるからな」
それを早く言いやがれ!俺は心の中で悪態をついた。
冒頭に戻る。
「お前ら何で俺を誘ったんだよ」
「面白そうだったからよ」
「俺は面白くないぞ」
「今まで私達と話す奴は大概嬉しそうに話すのに、あんたは違ったのよ。そんな人初めて見たわ」
それにもう一人も頷いている。
「俺はお前らの玩具か何かかよ」
「確かにそれも間違ってないかもね」
笑顔でそう言う。そんな風に言われたら俺もどうやって言ったらいいか分からないんだが。
「それよりここは何の部活何だ?」
「聞いてなかったの?ここはお悩み相談部よ!」
「なんだそりゃ」
「それよりも自己紹介がまだだった。私は
顔立ちは日本人で、目が青色の金髪の美人がそう言う。多分こいつは会話が出来ないおバカさんだ。
「私は
こっちは美人の日本人で、髪は染めただろう金髪が言った。こいつは心で不良娘と名付けよう。
「俺は吉条宗広何だが......」
ただ、こいつらは会話が出来ないのだろうか。この部活を教えてくれよ。俺は心の中でそう呟いた。
俺はあれからきちんと部活について聞いた。
このお悩み相談所の部活は悩んでいる人がここを訪れて、その悩みを俺達がここで聞いてあげるというなんともめんどくさそうな部活だった。
だがこの部活にしたのにも理由があった。他の文芸部などは何か文芸に関する大会があればきちんと実績を残さないといけないが、この部活の場合、何の実績も必要ない。ここに来た人の相談を受けたらいいだけなのだから。
それも考えてお悩み相談部にしたらしい。この金髪の二人は考えていないようで考えていた。
「けどね。少し事情があってね」
「事情?」
金髪の青色の目をした南澤がそう言う。
「それが学校に部室で使える部屋が無かったの」
「は?今ここを使ってるじゃん」
「ここは前の部活と合併したようなものなの。それでここは元文芸部で三人いたんだけど、二人は幽霊部員だったんだけど、残り一人がこの部室を使わせる代わりに、静かに本を読ませてくれるならこの部室を使わせてあげるってなったわけ」
「ほう。それでそのもう一人は?」
「それがそろそろ来るはずなんだけどね」
「あら。ストーカー君もここの部活なの?」
後ろからそんな声が聞こえた。俺はその声に聞き覚えがあった。
そこには黒髪ロングの超絶美人と言われている
「その名前止めやがれ。どうせそれテストの話してんだろうが」
「あんた達知り合いなの?」
それを金髪に染めたであろう、寺垣真由美が俺達を交互に見ながら言う。
「「違う」」
「息ぴったりじゃない」
そんなツッコミを受けるが決して俺達は知り合いではない。少し中学の頃あったがそれだけだ。
「こいつとはテストの順位がいつも一位差なんだよ」
「......え?けど確か清水って学年一位じゃなかったけ?」
寺垣がそう呟く。
「こいつは毎回俺の上の点数を取って一位の座を譲らないんだよ」
「もしかして吉条って二位なの!?」
「そうだが」
こいつは中学の頃からずっとそうだった。俺が一位を取ろうと思っているのにも関わらずあっさりその上をいきやがる。俺の中学の勉強のライバルである。
「めっちゃ意外なんだけど」
南澤にそんなこと言われてしまう。
「逆に俺お前が頭良かったら俺が卒倒するレベルだ」
「何ですって!」
そう言って突っかかってきそうな南澤を何とか寺垣が止める。
「ていうかお前が誰かのお願い聞くなんてあり得ないような話だな。どういう風の吹きまわしだ?」
「彼女に借りが出来るからね」
「どういう意味だ?」
「それは」
「ちょっと!」
何故かそこで南澤が叫ぶ。何だか一触即発の雰囲気で俺と真澄はどうしたらいいか分からない。ていうか俺は今すぐ帰って小説の続きを読みたい。だがこの雰囲気で言えるわけも無く。
「分かってるわよ。ちょっとした冗談じゃない」
先に清水が肩を落として降参したような感じで終わった。......一体何なんだよ。
女子って怖い!俺は改めてそう思った。
「その代わり読書させてもらうからなるべく静かにしてちょうだい」
そう言って一つ椅子を持ってきて読書をしだした。
すると、金髪の二人も同じく椅子を持ってきて話し出す。
何だろう。これ絶対に俺がいらない気がする。
ていうか、もう三人いるじゃん。
「あのさこれって俺必要なくね?」
「何で?」
「何でじゃねえよ。これ三人いるじゃんか」
「この澄ましたお嬢さんはいない時が多いから駄目よ。それに先生に言われたでしょ。あんたが就職するなら部活はした方が良いって」
確かにその通りなんだが、この男子一人という空間がなんとも耐えがたいがもう気にしないことに決めた。
「分かったよ」
「なら決りよ!ってことでチラシを配りましょ!」
「チラシ?」
「これ!」
そこに書かれたのは何と俺達の名前とお悩み相談部という名前が書かれた部活があった。
これはよくない。これでは万が一にも誰かが来てしまうかもしれない。それだけはめんどくさい。
「これは別に貼らなく」
俺がこれを拒否するよりも前に、
「これ色々と貼ってきて!」
「は?」
南澤は俺に殆どのチラシを持たせる。しかも結構量があるんですけど。
だがここで俺に救世主が現れた。携帯が鳴ったのだ。そこには妹からのメールが来ていた。
『お兄ちゃん。遅いけど誘拐でもされたの?』
こいつどんだけ縁起でもない事言ってんだよ。
しかし何も返さないのも悪いので俺も返信した。
『誘拐された』
あながち間違っても無い。こいつらに誘拐されたと言っても過言ではない。
するとすぐにメールは返ってきた。
『そう。そろそろご飯できるからなるべく早くね』
この妹はバカなのだろうか。誘拐されて早く帰ってこれたら苦労はしない。
だけど、妹も寂しいのかもしれない。なんて可愛い妹だ。なので帰ることに決定。
「妹が速く帰ってこいってうるさいから俺帰るわ」
そう言ってこいつらが何か言う前にカバンを持ちドアの前まで行くと、
「明日も来ないと学校放送で呼ぶからね!」
「こえーよ!」
俺はそう言い残し、可愛い妹の為に帰宅するのだった。
「ただま」
「あれ?まだ帰ってこなくて良かったのに」
全然可愛くない妹である。
「お前が心配のメールしたから早く帰ってきたんだぞ」
「お兄ちゃんってシスコンなの?私そんな気ないからごめんね。きっといい人見つかるよ」
「何で俺がお前に振られて慰められてんだよ!おかしいからな!」
「まあ。お兄ちゃん、ご飯できたから食べよ」
「そうだな。いただきます」
そう言って今日も一日が終わった。
~翌日~
俺は学校の校門を通り過ぎて唖然とした。
「なんじゃこりゃ!」
そこには所々に昨日見たはずのチラシが落ちていたのだ。
俺は何だか今日も平穏な日常が送れない気がした。
俺は現在生徒指導の先生に怒られている。
だが俺だけではなく、南澤、寺垣、清水もいる。だがちょっと待ってほしい。
「何で俺怒られてるんですかね?」
「お前もこの部活の部員なんだろうが!」
俺は先生に渡されたチラシを見ると、部員に俺の名前が書かれていた。
それで俺も朝から呼び出しを食らった訳か。とんだ災難だ。
俺は先生に怒られながら読んでいる小説の続きを頭の中で予想することにする。
「おい!吉条お前話を聞いてるのか?」
「聞いてますよ。これから主人公がどうピンチを乗り越えるのかっていう話でしょ!」
「お前一体何の話を聞いてたんだ!」
少し説教が伸びるのだった。
「マジで災難なんですけど」
俺は教室に帰る途中思わず呟いてしまう。
「まさかあそこまで怒られるとは思わなかったわ」
「ほんとに勘弁してくれよ」
こいつらはあれからチラシを色んな所に貼っていたがどうやら途中でめんどくさくなってしまったらしく、もう昇降口に置いておけば誰か見るだろうと思ったのだがそれが風で飛ばされたらしい。
こいつらは俺が思っていたよりもバカだったらしい。
「もう頼むから俺を巻き込むなよ」
「それは分かったけどこれからも部活来てよ!」
「へいへい」
俺はまさか知らなかった。あのチラシで本当に依頼者が来ることに。
放課後にこのまま帰ってしまいたい衝動を抑えながら部室に向かう。
今日の出来事で本当にこいつらは校内放送で呼んでもおかしくないと思ったからだ。
「おじゃま」
そう言って部室に入ると清水がいた。
「あなたの方がお邪魔だと思うんだけど」
「今のはおじゃましますが長いから略しただけだ!」
だがそこで気付いた。
「南澤と寺垣は?」
「さあ。私がここに来た時にはまだいなかったわよ」
あいつら俺より先に出て行った筈だったんだけどな。
「よし。じゃあ帰るか」
「さようなら」
こいつは帰る気はないらしい。だが今回は言い訳が出来る。お前らがいないから今日は無いと思ったと。
俺はそう思いドアを開けようとすると、
「あれ吉条?トイレでも行くの?」
こんなことだろうと思ったよ!
そこには南澤達が戻って来ている所だった。
だが俺はふと気づいた。
「お前らの後ろにいる奴誰だ?」
そこにはもう一人茶髪の女の子がいた。
「初めまして。私一年の
そこにはまあ何ともリア充でパリピのような輩が相談しに来てしまった。
どうしよう。俺もう既にこの依頼主で帰りたい気持ちになる。
俺にはどうもこういうパリピのような輩が苦手だ。まあ逆に苦手じゃない奴の方が少ないとは思うが。
「あ!清水先輩!相談乗ってください!」
その泉は清水の所に向かう。
「お前。案外知り合い多いんだな」
「この子は元文芸部に入ってもらった子よ」
「あーそういう事か。それでここにいるお前に相談って訳だな。じゃあ俺はこれで」
俺には関係なさそうなので帰ろうとすると、後ろから首根っこを南澤に捕まえられる。
「何処に行くの?」
「帰るんだよ。俺には関係ないだろ?」
「関係大ありよ!この子が私達の部活に相談しに来たのよ!助けてあげないの!?」
「清水が助けてくれるだろ。俺なんていなくても変わらないって」
「取り敢えず、話を聞く!」
「分かった!聞くから俺を引きずろうとするな!」
俺は引きずろうとするこいつから離れ一応聞く為椅子に座った。
「それで俺が聞いてもいいのか?」
「全然大丈夫ですよ!むしろ男子の意見も聞きたいので!」
この子は分かってない。今の流れで別に先輩はいなくても大丈夫ですよって言ってくれれば俺は帰れたのに。
「それで何があったの?」
清水が聞いたので泉は話した。
それは彼氏がいて振りたいという簡単な話だった。
「それってなんの問題もなくない?」
寺垣がそう言うのだが俺も同意見だ。
「それがこの人別れてくれないんですよ!」
それに食いついたのか泉が体を乗り出して言う。
もっと詳しく聞くと泉はもうこの人に別れたいと言ったらしい。だが結果はもう少し考えてくれ。まだ付き合いたいという話だった。
「いい彼氏じゃないか」
俺は最近ではそんな男子は近年稀にみる良い奴だと思う。
「男子からしたらいいかもしれませんけど私からしたら他にいけないし大迷惑です!」
ほんと女子ってこえーな。俺は改めてそう思った。
「なんでそいつと別れるんだ?」
「冷めたからですよ」
「はい?」
「だから冷めたんですよ。大体別れるのってそんなもんじゃないですか?」
何だろうか。もうこの子は助けてあげなくてもいいんじゃないかと思う。
だが他の奴は違った。
「分かるよ!男子って諦めなくてしつこい奴とかいるんだよね」
それに女子は全員頷いている。
ここに男子がいるのにそんな話をしないで欲しい。
女子っていつもこんな話をしているのだろうか。俺なんかここにずっといたら女性不振になりそうな気がする。
なので俺は話を逸らした。
「それでどうするんだ?」
すると、泉が俺に聞いた。
「どうしたら別れてくれると思いますか?」
無茶を言う。俺は付き合ったことのない歴=年齢だ。
そんな俺には別れるどころか、付き合う所から始めなければならないレベルだ。
「俺はまず付き合ったことないから分からん」
おい。そんな悲しそうな目で見るなよ。
皆からこいつ寂しそうな奴だ的な目を向けられる。
「そそそそうなんですね。まあそういう人もいると思いますよ」
泉はちょっとテンパりながらも俺をフォローしてくれた。
何だか急にこいつを助けてあげてもいい気がする。
「お前らはどうしたらいいと思う?」
俺はモテるであろう三人に聞く。
「私はまず付き合ったことないから」
「右に同じく」
「右に同じく」
「は?」
こいつら全員付き合ったことが無いだと。まさか清水はともかく、ビッチだと思ってた二人まで付き合ったことないとは思わなかった。
「まあ、告白はされるんだけど、何だかピンとこないんだよね」
そう言って南澤と寺垣は笑っている。
そんなん言ってたら萩先生のようになっちゃうぞ。
俺は心の中で言ってあげた。
「じゃあ、先輩はどうしたら諦めると思いますか?」
泉はまたしても俺に聞いてくる。
「そう言われてもな」
俺には一つだけ方法があるにはある。だけどこれを俺がする理由が無い。
それにこれは最低とも言える行為だろう。
「もう最近はメールとかめっちゃ来て困ってるんですよね」
泉は独り言のつもりで言ったのだろう。
だが俺はその言葉を聞いた時中学の頃の事のあの出来事が何故か思い出された。
......ああ。くそ。思い出したくも無い事を思い出したじゃねえか。それにそんな事を言われると断れ無いんだよな。
「おい。お前とその男を別れさせる事が出来たら俺のいう事一つ聞くと約束出来るか?」
それに他の人は驚いた顔をしていた。泉は少し考える素振りを見せて、
「エッチな事じゃなかったらいいですよ」
ウインクしながらそう言うのだった。
「興味ないんで」
「それはそれで腹が立つんですけどね!」
女心はめんどくさいものだと思いながらも助ける事が決定してしまった。
「じゃあやるのは明日で」
「明日は用事があるので明後日でもいいですか?」
......こいつ。本当に助けなくてもいいんじゃないだろうか。
俺は泉の要望を受け入れ明後日にしてやったのだが。
「何でお前らまで付いてくるんだよ?」
そこには南澤と寺垣がいるのだ。
「いいじゃない。あなたがどうやって解決するか気になるし」
南澤がそう言うのだがあんまり人に見せるような事をするんじゃないんだよな。
俺はこいつらに解決方法を教えていない。
ていうより言ったら反対される気がする。
「付いてくるのはいいけど遠くから見るだけで、近づいたり邪魔するなよ」
俺はこいつらに釘を刺しておく。
「分かってるわよ」
こいつらの場合本当に分かって無さそうだから怖いんだよな。
泉の彼氏は他校の人らしい。それはそれで都合がいいので助かるのだがまたしてもめんどくさい事になりそうだな。
今俺達はその彼氏がいる学校の前だ。
そこで泉には彼氏を学校の入り口に呼んで貰っている。
そこからの作戦はまだ言ってない。
「あの先輩。一つ言っておきたいんですけど、私の何か悪口とかが出るような事は嫌なんですけど」
「分かってる。今回お前が何にも悪くないようにすればいいんだろ」
「まあ分かってるならそれでいいんですけど。本当に何する気なんですか?」
「それを言ったらお前が演技できなくなるかもしれないから、お前は俺の話に合わせてくれたらいいよ」
泉は首をかしげながらも深く聞いてくる気はないようだ。
なので俺がその泉の彼氏を待っていると、ついにやって来た。
そこには茶髪で青春してます系の男の子がいた。
「誰なのこいつ?」
その男が俺を睨みながら言ってくる。泉はどうするのかという目線を俺に向けてくる。
なので俺は一度溜息をついて俺が昨日思い付いた作戦を実行することに決めた。
「俺の女に言い寄ってるようだな」
そう言って俺は泉をこちらに引き寄せる。
「キャ」
そんな声を出すのはやめて欲しい。ちゃんと演技してくれって言ったじゃないか。俺がそれを目で泉に訴えると分かってくれたように思える。
俺が今回考えたのはこいつの彼氏を演じる。だがそれは彼氏がいない人には有効だが、彼氏がいる奴には無理だ。それだと泉がクズという事になってしまう。なので、
「まさか俺が付き合った時の返事をしたとも思わず嬉しそうに付き合ってるもんだから最高だったぜ」
俺は昨日泉が告白された方だという事も聞いている。
「どういうことだ?」
男は未だ分かっているのか、それとも分かりたくないのか俺を先程よりも鋭い目で見てくる。
「だからお前の告白は俺が適当にふざけて返事してやったんだよ。それを隠してこいつがお前を振ろうとしているのにお前がしつこいんだからわざわざ俺が直接言いに来てやったんだよ」
今回俺はクズの男を演じる。これによって泉は優しくて健気な女の子となり、この男を振る様に見えるだろう。
俺が泉と付き合っているのは俺が弱みを握っているとでも言っておけば大丈夫だろう。
「本当にごめんなさい」
泉が演技でも悲痛に言っているように聞こえるから怖いものだ。
「このクズ野郎が!」
俺はすぐに泉を離してそいつのパンチを受ける。
「キャアアアアア!」
泉が俺が殴られたことにより叫ぶ。うるさいな。俺はお前がこんな依頼を出したからやってるんだからそんな声を出さないで欲しい。
「お前みたいなクズのせいで俺がどんな思いしたと思ってやがる!」
そう言ってまたしても殴られる。俺はそれを避けない。避けれないの間違いでは無い。.....多分。
「クソが!」
そう言って何度も殴られる。痛いな。今まで中学の頃とかおふざけで殴られたりしたことはあったけど、そんなもものより何十倍も痛い。
これでこいつも自分が悪くて振られるのではなく俺のせいだからと割り切ってくれる筈だ。
だがここで一つの問題が生じる。それは先生という存在だ。この学校の玄関で殴られるという事は先生が黙っているわけがない。
「こんな所で何やってんだお前ら!」
そんな体育教師であろう先生の声が聞こえる。ここからが本番だ。
俺はその声が聞こえた瞬間から行動を開始する。散々殴ったこいつは俺が殴り返してこないと思っただろう。だからこそその隙をついて俺はカウンターを繰り出し、まるで今まで俺が殴っていたかのように見せる。俺のカウンターは見事に決まり、相手も倒れた。
「お前らこんな所で何してやがる!今すぐ来い!」
そう言って俺と男は先生たちに捕まり教室に連れて行かれる。
これで後は俺が罪を全部被ればいいだけだ。たかが子供の喧嘩だ。そんな重い処分な訳がない。
そう思って俺が口を開こうとすると、
「僕がむかついて殴りました」
「は?」
まさかの男が自分が悪いと言ったのだ。これはまさかの予想外だ。
「本当か?」
生徒指導である先生が俺に確認する。
「いや。僕も悪いのでお互い様です」
そう言っておく。
すると、俺達がいる教室のドアが開かれた。
「君達もう帰りなさい」
「校長!?」
どうやらこの人は校長らしい。
「今回は見逃しますが次は停学ぐらいの処分は覚悟していてください」
そう厳命された。
「失礼しました」
俺達は何の処分も受けずに帰ることが出来た。
俺はもう帰ろうと思ってると、
「おい」
男に呼び止められた。
「なんだよ。まだ殴り足りないのか?」
これ以上殴るようなら逃げる覚悟が必要だ。俺はまだ痛いのだ。
「さっきはすまなかった」
「.......どうしたんだよ急に」
謝られると俺がどう対応したらいいのか分からない。
「あれから冷静になって考えたら彼女を庇ってたんだろ?」
「何のことやら分からんな」
ここで俺がそうだと言えば俺がやった事が無意味になってしまう。
俺は悟られないようにその場を逃げるように歩いた。
「俺は見る目が無かったのかな」
「知るか。それはお前しか知らないよ」
俺はこいつの方を見ていなかったが、何処か寂しそうな気配を感じる。
だがそれを感じたら俺は殴られ損だ。俺はこいつが悲しそうにならないようにこういうことをしたのに意味が無くなる。
「今度は悪女のような女には手を出さないようにするんだな」
俺はそう言ってその場を後にするのだった。
俺は男と別れて学校を出ようとすると、
「何でお前らまだいんの?」
そこには南澤、寺垣、泉がいた。
「どうしたも無いわよ。まさかあんな行動に出るとは思わなかったわよ」
南澤がそう言うが俺は何て言えば分からない。
すると泉が俺の所に来て頭を下げた。
「ありがとうございます」
「別にお前の為じゃないからな。行くぞ」
俺達はそれから学校に戻ろうとしていた。
そこで泉が俺に聞いた。
「どうしてあそこまでしてくれたんですか?」
「さあ。何でだろうな。俺にも分からん」
本当は分かってる。だけど言いたくない。
「もしかしたらあの男に同情してしまったのかもしれんな」
「似合わないセリフね」
「やかましいわ」
寺垣に突っ込まれながらも俺は学校の前に着いた。そこで俺は今回泉に言わないといけない事を言う。
「おい泉。約束は果たせよ」
「そういえば聞いてませんでしたね。何ですか?」
今回解決したら俺のいう事を聞くと言う約束だ。だがこれは決まってる。
「これ以上その場のノリとかで付き合うなよ。今回みたいに巻き込まれても今度は絶対に助けないからな。だから今度は絶対に冷めないような人間と付き合うんだな」
「そんな事ですか。私も先輩が殴られている姿見て、流石に反省しましたよ」
それで人が変われたら苦労しないんだがな。
心ではそう思ってもこいつがこれからどうなるかなんてこいつ次第だ。
「そういえば先輩って名前何なんですか?」
「お前知らない人に相談してたのかよ」
こいつは本当に大丈夫だろうか。将来お金が貰えるとか言われたらホイホイ付いてきそうだ。
「それは置いときましょう」
「はあ。吉条宗広だ」
「広先輩ですね!これからもよろしくお願いします」
「これからはよろしくしたくないがな」
「冷たいですよ!まあ、それじゃあ私達はこれで!」
「気を付けて帰りなさいよ!」
皆がそれぞれそう言って帰ったのだ。
「あれ?なんであいつら学校まで来たんだ?」
俺は不思議に思いながらも部室にあるバックを取りに行く。
部室には今日は読書をするからと来なかった清水がいた。
「どうしたのその顔」
清水は本から目を離さずに話しかけてきた。こいつの眼は何処にあるのだろうか。
「ちょっと色々あったんだが俺の顔そんな傷ある?」
とても痛かったがそこまで傷があるとは思っていなかったんだが。
すると清水は本を閉じて立ち上がった。
「付いてきなさい」
そう言って歩き出した。
これを無視して帰ったら面白そうだが後が怖いのでやめておき、素直について行った。
ついた場所は、
「保健室?」
「入って」
保健室には誰もいなかった。
「今日は保健室の先生は休みよ」
俺の疑問が分かったのか清水が答えた。そして何か漁りだした。
「そこに座ってなさい」
「漁って大丈夫なのか?」
「ばれなきゃ大丈夫よ」
そう言うので俺は座ると、目の前には鏡があるのだがそこに写っている俺の顔は酷かった。
所々に擦り傷もあればあざになりそうな傷もあるし、砂もついている。
「これは思った以上に酷いな」
俺は自分の顔を見ながら苦笑いが出てしまう。
「どうやったらそうなるのよ」
そう言って清水は俺の真正面に座り絆創膏を貼ってくれる。
「お前何なの?もしかしてツンデレなの?」
俺は何だか無言でいるのが恥ずかしいのでふざけて言ったのだが、
「何か言ったかしら?」
そこには笑顔ではない笑顔の清水がいた。
「......何でもないです」
俺は何も言えなくなりそのまま傷の手当をしてもらい、一緒に部室に戻る。
「その傷は中学の頃を思い出すわね」
帰る途中そんな事を言われた。確かに今清水が言った事は覚えてる。
「あの時、お前が襲われそうになった時か?」
それに清水は頷いた。中学の頃清水は一度襲われそうになった事がある。それは同じ中学で清水の事が好きだった人がやったことだった。
俺が偶々その時に通り掛かって何とか助かったがその襲った輩は元空手をやってて俺はズタボロにされたのだ。
「そういえばそんな事もあったな」
「今回もどうせ自分を犠牲にして助けたんでしょうけど」
「俺だって傷つきたくて傷ついてるわけじゃないんだよ。今回だって仕方なくだ」
「仕方なく。それをいつまで使うのかしらね」
俺はその言葉が何故か心に浸透した。その言葉に反対出来ない自分もいる。
「けど。あの時助けてもらった私が何かを言える義理じゃないんだけどね」
清水はフォローなのかそんな事を言った。
だが俺はそれに答えることが出来ないまま一人下校するのだった。
俺が助ける理由か。それは何だろうな。
俺は帰る途中そんな事を思ってしまう。
何故助けたのか。それには分からない。だけど後悔はしていない。
今回も助けた事も後悔なんてしてない。
だけど俺は思う。
青春とは時間の無駄である。
今回だってそうだ。青春をしたからあんなにもつらい思いをする奴が現れる。悩む者が現れる。
青春とは時間の無駄であり、辛いだけなのだ。だから俺は青春をする事を止めてボッチになった。
これで辛い思いをしなくて済んだ。だけど何故だろう。辛くはないが幸せではなかった。
だけどここ最近は違った。
あいつらとの部活はまだ始まって三日しか経ってない。それでも少しだけ楽しい、幸せだと思ってる自分がいることに今自覚している。
それでも俺は思うんだ。
青春、恋愛なんてくだらなくて時間の無駄であると。
青春・恋愛なんていらないから平穏な日常が欲しかった俺は変わっていくのかもしれない 平涼 @tairryou
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