第183話 忘れ物処分

「桜雪さん、忘れ物でも処分しますか?」

「あっそうね…月初だしね」


 忘れ物の保管期間は3ヶ月。

 過ぎたものは処分される。


 忘れ物ノートを開く。

「なんか目ぼしい物ありますか?」

「ないね…僕、洗顔フォーム欲しいんだけどさ、最近無いの」

「アイコスとか欲しいな…あっ来月までダメだ」


 結構、処分品はバイトが持って行くことも多い。

 忘れ物のジュース、お菓子はその場で持って帰るし、賞味期限の切れた食料品も処分したヤツが持って帰る。

 なんとなく暗黙のルールがあるのだ。

 ちなみに現金は山分けが基本だ。


「コレ処分…要らない…欲しくない…触りたくない…」

 そんなんばっか…

「あっ!! コレ?」

「触るな、病菌になるぞ」


 ガラスの本格的な浣腸器セット

 ご丁寧に木箱に入っている。

「そういえば在りましたね…桜雪さん」

「そうだね…忘れてたね」

「取りに来ませんでしたね」

「高いだろうにね…見るからに…」

「来れないんでしょうね」

「そりゃさ…浣腸器忘れたんですけどって言いだせないぜ…なかなか…」

「高いんでしょうね」

「そりゃ、売る方も足元見てきそうだからね…10万とか言われても納得しちゃう説得力のある逸品だよね」

「どうします?」

「ん?危険物でお願い」

「了解です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る