第6話 同期会

12月26日 PM18:00



「お先に失礼します。」


今日の仕事を終える。


(今日も疲れたねー。)


「お前は何もしていない。」


(あんたこそ、何もしていない!)


確かにタナーの言う通り、俺もこれといった仕事はしていない気がする。


(今日は大島さんと飲み行くんでしょ?)


「ああ、そうだよ。まだちょっと時間あるけどな。」



大島由美子。


前職に入社した約9年前の当時、同期として入社した友人だ。


異性ではあるが、恋愛感情とは異なる、何となく一緒にいて安心できる人間だ。


異性の間に友情が成立するのであれば、彼女はまさにそれに該当する。


彼女は、俺より先に転職してしまったのだが、今でもこうやって飲む機会がある。


「あいつ、いい歳して、何処かのご当地アイドルグループのオーディションに応募したんだって。」


(大島さんって、歌が上手いんだよね?)


「そうそう。でもアイドルって年齢じゃないだろうに。」


(いくつなの?)


「確か6つ下だから、31歳じゃないかな?」


(全然若いじゃん!)


タナーの年齢感覚はよく分からないが、タナーからすると彼女は若いらしい。


「でも31歳でアイドルってのは、どうかと思う訳よ。」


(何も行動起こさないアンタよりはマシでしょ!)


「ごもっともです。」


確かに自分のやりたいこと、やるべきことを認識して行動している彼女は凄い。


「その後の進捗でも聞いてみよう。」


(微妙に上から目線なところに、若干イラっとした!)


「ウソ?そんな風に言ったつもりは無いけどな。」


職場の最寄りの駅前の、いつもの喫煙所でタナーとそんな会話をしていた。


「さて、そろそろ移動するか。」


(ここから何分かかるの?)


「徒歩5分。」


(近っ!!)


同期会の開幕である。

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中年(独身)と妖精が生活を共にするという日常 三久太郎 @mikmik

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