銀河混沌冒険団

宗谷 圭

第1話

 その日は、深夜だというのに外にいた。

 夜間ではない学校に通う高校生で、特にバイトもしておらず、予備校にも通っておらず。特に悪い友達もいなくて、深夜の出歩きとは比較的無縁な生活を送っていたというのに、だ。

 理由は明白。

 親父と喧嘩をして、家を飛び出して。家に戻りたくなくてウロウロしてたら、深夜になった。何をやっているんだ、受験生なのに……。

 歩いていて頭は冷えたが、それでも家に戻りたくなくて。どうしたもんかと思わず空を仰いだ時、それは見えた。

 すぅっと、音も無く空に描かれた光の線。雷かと思う程に、強い光だった。飛行機や衛星では有り得ない。それに、高度がかなり低かったように思う。

 UFOだ。そんな事を考えてしまった俺を、責める事はできないと思う。後から否定要素を探すかどうかは人によるだろうが、UFOの可能性が全く頭を過ぎらない、なんて事があるだろうか。いや、無い。きっと無い。

 UFOだとしたら、一大事だ。マスコミや研究者が来る前に、ひと目拝んでおきたい。いや、どうせなら写真や動画に残しておきたい。SNSにアップすれば、それこそマスコミから使用させてほしいと依頼がくるかもしれないし、そうなれば小遣い稼ぎにもなる。

 さっきまで家に戻りたくないなどと悩んでいた事などすっかり忘れて、光の向かった先へと駆けだした。光の高度はどんどん下がっている。着地点は、きっとここからそれほど遠くない。

 走って、走って、夢中で走った。こんなに夢中になって走ったのは、いつ以来だろう? 中学時代、ライバルと競り合った体育祭のリレー? 欲しいゲームを買うために、お年玉を握っておもちゃ屋に向かった小学生の時の正月? それとも、渡り鳥が飛んでいくのを見送りのつもりで追い掛けた、もっと小さかった時の秋?

 こんな風に、楽しかった時の記憶が頭を過ぎったのは……この後、俺に起こる事態を、第六感か何かが予感していたからだろうか。

 走った先に辿り着いたのは、広々とした公園。グラウンドが併設されていて、休日にはよくどこかの学校の野球部が練習試合をしていたりする。

 そこに、それはいた。グラウンドにギリギリ収まるかどうかの大きさ。つるつるとした壁面。今は光っていないが、どうみてもUFOなそれ。

 俺は興味本位で、恐る恐るながらもそれに近付いた。その時だ。

 それは、まるで俺が来るのを待っていたかのように、強烈な光を発し始めた。強烈過ぎて、辺りが真っ白に染まって、何も見えない。

 辺りの景色も、俺の意識も、何もかもが真っ白になって……。

 そして、俺の意識はそこで途切れた。

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