第29話 私を魔界に連れてって

さて・・・村人脱出の相談をすべきか・・・後色々話を聞きたいのなら、村長を呼ぶべきか・・・エルクが悩む。


「村の話でしたら、私が承りますわ。村長の孫なので、かなりの事情は把握しております。とりあえずは立ち話もなんですし、宿屋の酒場を借りられるよう頼んでみますわ。行きましょう」


セリアが微笑み、歩き出す。

酒場では、セリアが頼むと、二つ返事で酒場をあけてくれる。

席に着くと、まず自己紹介する。


「アレクシア殿。私の名前はエルク、旅をしている者だ。この者は、我が妻達。セリア、パラス、アンリだ。セリアは、この村の村長の娘でもある」


「エルクさん、セリアさん、パラスさん、アンリさんですね。宜しく御願いします」


料理が運ばれてきた。


「有り難い。長旅で疲れていて、空腹でした」


アレクシアは水をくいっと飲み、食事を食べ・・・


「・・・美味しい?!」


驚きの声を上げる。


「ドラゴンを薬草と塩で味付けした物です。こちらのスープには怪鳥を使用しています。こういうのも、最果ての村ならではでしょう?」


セリアが微笑む。


「ええ・・・このような物は初めて見ました・・・ですが・・・どうやって倒したのですか?正規兵でもかなりの数が必要な筈ですが・・・新鮮な肉を調理した感じがするので、病死した物を拾ったわけでも無さそうです」


「そこは我が村の秘密となっております」


「・・・ふむ・・・秘密なら仕方が無いですね」


その後も、アレクシアはセリアに色々質問する。

魔物の料理の件はデタラメ混じりであったが、村の風習、歴史等は恐らく正しいのだろう。


一通り聞き、満足したようだ。

村に伝わる踊り等も後で見せる約束をし・・・


「それで、良ければ相談に乗りますが、何かお困りですか?」


素直に話して良い物か、エルクは迷う。

だが、魂の輝きを見る限り、悪い事にはならない気がする。


「実は・・・」


エルクは、ソロモンの悪行を伝えた。

ソロモンが人の道外れた法を振りかざしたこと。

ソロモンの兵士を撃退したこと。

調査部隊が来たり、追加の兵が来たり、アルケーで同じ事が起きたり・・・この村で生活し続けるのは困難である事。

レイアーへの避難を考えている事。


「・・・成る程、それは酷い話ですね。すぐさまレイアーに連絡をとって・・・もしくは、この山の向こうに村が2つあります。どちらも、進軍の最短ルートからは外れている。そちらに移住するのも手かとは思います」


アレクシアが応える。


「・・・確かにそうだな。囚われていた女性達を送るついでに」


エルクが応える。


「囚われていた女性、ですか?」


アレクシアがきょとん、と小首を傾げる。


エルクが、ゴブリン騒動の話をする。


「・・・知恵持ちのゴブリンですか・・・厄介ですね・・・聖戦が近いとは言え、きっちり駆除するのがソロモンやアルケーの役目・・・・この場合は位置的にはアルケーですね」


アレクシアが苦い顔をする。


「・・・ところで、貴方達は相当お強いですね?恐らく、ゴブリンの村の壊滅、先程の竜や怪鳥の殺害、そして今回の正規兵の撃退・・・全て貴方達が為された事、かと」


「・・・その通りだ。俺達は、それなりに力は持っている。政治力は皆無だがね。済まないが訳ありなので、詮索は無用で頼む」


「分かりました。私も、探られると痛い腹を持っております」


アレクシアはふと考え込むと、


「エルクさんは、旅の方ですよね。私は魔界の事も調べたいのですが・・・何か情報を持っておられますか?」


エルクは少し悩んだ後、


「俺達は人間ではない。魔族だ。魔界の事には詳しいが、人間に情報を渡す訳にはいかない」


アレクシアは大きくは驚かない。

半分は想像通り、といったところだろう。


「エルク様が魔界に戻られる際、私も付いて行っても宜しいでしょうか?」


アレクシアが尋ねる。

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