第27話 魔族に魂を売った村
翌日、兵士が村に入ってきた。
セリアと供に、村長の傍で兵士を出迎える。
アンリとパラスは、村人に紛れて警戒をしている。
「この村に何の用ですかな?」
村長が尋ねる。
「この度、我が国ソロモンは、魔界に偵察部隊を送る事にした。故に、この村にも、食糧供給の形で協力を求める」
「・・・その様な法は無かったと記憶しております」
「今回、議会で提出され、承認された法だ。知らないのも無理はない」
「・・・申し訳有りませんが、その様な法には従い兼ねます。聖神様の定める神律、弱者からの搾取、同意なき徴収、に抵触すると思われます」
村長は、他にも、今軍を動かしては魔族を刺激する事、近隣の山にてゴブリンが出たが、未だ救援がない事、他村に囚われていた女性を送る必要がある事、等を告げた。
「今は非常時だ。聖神様もきっとお許し下さる」
聖神は、一方的な搾取が起きないよう、様々な神律、神意、を出している。
神都アルカディアの聖教会は、それを元に様々な戒律を作り、それを法の基本とする様に定めている。
しかし、地方になる程、徹底されていないのが実情だ。
奴隷が存在する場合もある。
特に聖戦前後は、おかしな法が出回ることがある。
今回もその例のようだ。
「大人しく従わないのなら・・・」
兵士が一歩踏み出すと・・・
「何をしているのですか」
入り口から、村の神官とギルド職員が入ってくる。
神官は聖教会から派遣された者。
同じくギルド職員も、神都にあるギルドに所属する者だ。
その権力は大きい。
また、圧政や搾取の監視役でもある。
「何も、我々はただ我が国の法に基づいて行動しているだけです。内政干渉はやめて貰いましょうか」
兵士が言うと、
「この村は、ソロモンにもアルケーにも正式には所属しておりません。ソロモンの法は及びません」
神官が答える。
本来は独立した村なのだが、両方の国が所有権を主張。
結局両方の国に半分ずつ納税する形となっている。
「違いますよ。この村はソロモンの物です。ソロモンの法に従う義務がある」
兵士が主張する。
「立ち去りなさい!」
神官が叫ぶ。
ザクリ
神官が目を見開き・・・そのまま倒れる。
「な・・・」
ギルド職員が声を上げると、兵士がギルド職員に斬りかかる。
ギルド職員が剣で応戦する。
「何を考えている?!」
「なあに、この村は魔族の手が及んでいた、それに気付いた我が軍は、やむを得ず村を壊滅させた、そういう話だ。神官もギルド職員も・・・魔族の手で殺されていたよ」
村長の方を見て。
「村長はどちらがいい?魔族に魂を売って利益を得ていた立場か、魔族に逆らって殺されていた立場か・・・」
「・・・前者ですな。我々はこの地に住むことに誇りを持っておりましたが・・・それも難しくなっているようだ。一方で、我々は、我々を助けて下さる大きな存在を知ってしまった。我々は魔族に魂を売ろうと思う」
村長が、はっきりとした口調で答える。
「はっ、いい答えだな。なら我々の討伐対象、だぜ!」
ギルド職員を突き飛ばすと、村長に向かって剣を振るい・・・セリアの剣に貫かれる。
「な・・・」
兵士が倒れる。
セリアが深紅の目で蔑むように言う。
「魔族に魂を売った者を攻撃して・・・魔族が黙っている訳ないでしょう?」
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