僕が好きな人は複数らしく、そして誰の姿も見た事がない~ミルフィーユ~

笹原いな

第1話 メッセージ


 スマホを操作し文字を打ち込んでは消し、また打ち込んでいる。


 今日は楽しかった。またケーキ食べに行こう。


 長い間考えた割には、何の捻りもない単純で短い文になった。


 それもいいか。と自分に言い聞かせる。その方が自分らしい気もする。念の為、もう一度読み返してから相手に送った。


 送ってから、これはデートの誘いになるのか。と疑問に思った。また行こうと言っている時点で確実に誘っている。もしデートになるとしても、一体誰とデートという事になるのだろう。


 そもそも俺が送った文は誰が読むんだろう。


 誰が読んだとしてもアヤに違いはない。分かっているけど気になる。


 思考をぐるぐる回しているうちに小気味の良い音が鳴り、返事が来た。

スマホを覗き、思わず笑みが溢れた。


 見上げる。


 月が丸く、見えない雨のように白い光が降り注いでいた。

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