{第百十四話} ルールが無いのがルール
爆破の衝撃を食らった昌は地面に倒れた。
「あれは痺れ効果がある魔法が含まれたスタングレネードの様な物ですね。基本的な大会なら状態異常攻撃は使用禁止、あくまで基本的な大会の話ですが」
「流石「ルールが無いのがルール」と言われるだけあるわね」
様子を見て話しをしているネラとネイの2人、一瞬驚く様子はあったがそこまでといったところだ。
「よくもやってくれたな!俺を怒らせたらどうなるか教えてやるぜ!」
動けなくなって床ペロしている昌を見て、ザコモブに相応しいセリフを吐き、背中に背負っていた大きな斧を構え、大きく降り下ろした。
痺れ効果と言うのはよく手術等で使われる麻酔と同じ様な効果で、体の感覚がなくなって動かせなくなるが次第に体が痺れている感覚が分かるようになり、痺れが消えればいつも通りに体を動かせるようになる。
今昌の体は一部痺れている感覚が分かりつつあるといった所で、動かせるのは盾を持っている右腕だけで攻撃を避けることはできないが、大きく振り下ろした斧の攻撃を受け止め、ダメージを幾分か減らす位は出来るだろうと、盾を構えた。
「クっ!」
昌が構えた盾に斧の刃先が触れた瞬間、爆発し、昌は後方に勢いよく飛んで行き、柵に背中を強く打ち付けた。
「どうやらあの斧には爆発魔法が込められているようですね。先ほどまで連射していた爆発する球体に使用している物と爆発規模から同じ物の可能性が高いですね。もちろん普通の大会なら武器等に個人で爆発や毒、麻痺等の追加効果を付与した物を使うのは禁止されているのはもちろん、無視して使用した場合は反則負けになり、時と場合によっては警察に身柄を抑えられる可能性もありますが」
「これは「BC」とは言っても限度があるわ」
流石のネラとネイも動揺を見せている。
アリスティドは柵に背中を強く打ち付け、動けない昌の体を踏みつけると斧で体中を叩き切り始めた。
アーマーに入ったヒビは次第に広がり、全体に的にヒビが入ったアーマーはいつ砕け散ってもおかしくない状況だ。
そんな昌から短剣を奪い取り、アリスティアがそれを高く掲げると会場内は観客達の大きな歓声が響き渡った。
「どうだ昌、これがブラックコンベンションだ」
会場内をすべて見まわせる高い位置に設置されたvip席の中でも中心の席に座ったリツカは歓声が響き渡る会場を見て静かに口を開いた。
「お前の武器でお前にトドメを刺してやるよ!」
アリスティアが奪った短剣を構え、昌を切りつけようとした瞬間、昌の体から自由を奪っていた麻痺の効果時間が終わったため、柵をけって即座に反対側に逃げる。
逃げた昌に対して、大きな斧を投げるが麻痺が消えた昌には当たらない。
アリスティアは最初に使った爆発魔法を再び昌へ向けて連射し始めた。
しばらく逃げた昌はアリスティアに向かって一直線に走り出した。
「自分から死を望むのか!バカが!」
昌はアリスティアが放つ爆発魔法が込められた球体を避けつつ、ほぼゼロ距離まで近づくと、昌は魔法を打ち出そうとしたアリスティアの手にシールドを当て、その場で爆発させ大きなダメージを与えた。
どうやらアリスティアは魔法をが使える手袋を付けていたらしく、近距離の爆発によって焼き切れた手袋が地面に落ちた。
手袋は使えなくなり、斧は柵に刺さっているのに加えて、昌から奪った短剣も昌に奪い解されてしまったアリスティアは素手で戦わなければならない状況に陥っている。
こうなれば昌の勝ちは確定したようなもので取り返した短剣をレイピアに変形させ、見様見真似で11連撃をアリスティアのアーマーを目掛けて繰り出し、アーマーを完全に破壊した。
ガラスが割れる様な音とともに粉々に砕け散ったアーマーが地面に落ちた瞬間、会場内に戦闘終了のアナウンスが流れた。
「アーマーの全壊を確認。バトル終了、勝者「菊田 昌」」
アナウンスを聞いた昌は全身の力がゆっくり抜けていくのを感じ、ネラとネイの元へ向かった。
2人は笑顔で昌を迎えた。
特にネイは昌に抱き着いてしばらく離れず、その様子をネラは無表情で見ていた。
また、観客達はアリスティアが勝利する事を信じて疑っていなかったため、それが崩された現在は空いた口がふさがらない様子だ。
ちなみに情報屋は昌達以外の試合展開と結果を細かく記録している。
ネイに抱きしめられ、それに身を任せている昌の様子をみてゆっくりと立ち上がったアリスティアは捨て台詞を吐いて去っていった。
「覚えてろよ!」
この試合結果から昌は第二回戦に進出するのだが、二回戦は不戦勝で三回戦に進出した。
昌が二回戦に相手にする予定だった者は同時にアーマーが壊れた事に加え、両者共に肉体的なダメージが大きく、両者共に二回戦進出を辞退したため、特に延長戦を行う事なく、結果、昌は二回戦不戦勝で三回戦に進出した事になったわけだ。
今回の試合はベックとその手下も見ており、囲まれ称賛された。
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「承知しましたアルキメデス先生。あとはお任せください」
男は報告を終え、部屋から出ていくと、入れ違いで別の男が入ってくる。
「アルキメデス先生よろしいですか。たった今報告がありました、お孫さんがブラックコンベンション第一回戦に勝ったようです」
「同然だろう。それよりヤツは?」
「ご心配なく。24時間体制で監視を付けています」
一方「ヤツ」であるおじさん「菊田 京一」は監禁された部屋のベットに座りメガネをまさぐっている。
監視室からはそんな特に不審な様子には見えないが、京一はメガネのレンズを画面にし、映し出した建築図面と思われるものを見ている。
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二回戦が不戦勝になった昌は三回戦が行われるまで時間がある為、ソファーに座り脱力感に襲われ、だらけた様子で軽い睡眠を取っている。
昌の戦闘を観戦している時や、昌が仮眠をとっている横で一緒にソファーに座ってしれっと普通に寝ていた昌の体を横にし膝枕をしているネイと、そのソファーの肘掛に座っているネラの2人をナンパする者は少なくなく、すべてがネイには優しく、ネラにはキッパリと断られている。
その結果、ネイとネラの2人をナンパし、断られた男達のヘイトが昌に集まっていたが、そんなことを昌自身は知る由もなかった。
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